【通報・確認システム】21世紀会の覚悟と権限 ①自主規制は「法律」と「悪しき慣習」を乗り越えられるか?

2020.11.11 / 組合・行政

「凱旋」撤去は期日内に完遂できるか?

通報・確認システム
21世紀会の覚悟と権限

10月19日、21世紀会の決議違反(高射幸性遊技機をはじめとする旧規則機の撤去期限を定めた自主規制を守っていないホール)の通報システムを整備し、情報を一元化する仕組みがスタートした。
初日から数十件の通報が集まり、その違反内容も多岐にわたっているという。

情報精査後、違反ホールに是正を促すことができるのか、さらには顧客でもあるホールに対し不都合なペナルティーを課すことができるのか。
旧規則機の撤去をめぐる喫緊の課題を整理した。

  1. 試される業界団体の本気度
    自主規制は「法律」と「悪しき慣習」を乗り越えられるか?
  2. 【インタビュー/池田毅弁護士】
    決議に基づくルールは適法 問題は組合の権限とプロセス
  3. 不法投棄は業界の未来を阻む
    330万台強の撤去に向け、早期排出と保管場所の確保を

試される業界団体の本気度
自主規制は「法律」と「悪しき慣習」を乗り越えられるか?

2020年5月20日、警察庁が改正規則を交付、即日施行されたことでコロナ禍における旧規則機の入替期限が実質1年間先送りされた。

同日、パチンコ・パチスロ産業21世紀会は旧規則機の取扱いに関する決議を行い、高射幸性遊技機を含む旧規則機の撤去について独自の期限を設定。
全国のホールに同決議の履行に関する誓約を求め、99.5%のパチンコホールが誓約書を提出したが……。

 


誓約確認機関の発足と通報・確認システムの運用

パチンコ・パチスロ産業21世紀会(以下、21世紀会)は10月5日、21世紀会決議に関する全国のパチンコホールの誓約履行状況を確認するため、ホール関連5団体(=当時。編集部注/10月19日、日本遊技産業経営者同友会とパチンコ・チェーンストア協会が合併しMIRAIぱちんこ産業連盟が発足した以降はホール関連4団体となる)事務局で構成される「21世紀会誓約確認機関」の発足を発表し、2週間の周知期間を経て、10月19日から同機関における「通報・確認システム」の運用を開始した。

誓約確認機関による通報・確認システムは文字通り、通報システムと確認システムの2種類に分かれており、通報システムは業界関係者を主とした任意の人が、21世紀会決議内容に反して旧規則機を設置し続けているホールを通報できるシステムである。
一方、確認システムはその通報内容を当該ホールおよび誓約確認機関から委託を受けた個人・団体が直接確認するシステムである。

仮に当該ホールの誓約違反が確認された場合、違反内容は21世紀会を構成する業界14団体、また遊技産業健全化推進機構に速やかに情報共有されることになる。

誓約確認機関はあくまで違反情報の真偽を見極めるための機関であり、違反に対する「ペナルティー」は業界団体それぞれの規約や判断に委ねられる。組合員や会員資格停止が当該ホールの経営に与える直接的なデメリットは薄弱であるが、業界内における信頼度の低下と悪名の高まりが与える影響は決して小さくはない。

一方でホール経営に直接的な影響をもたらすのは中古機流通協議会によるペナルティーである。

同協議会では21世紀会決議に関する誓約違反ホールばかりではなく、そもそも誓約書を提出していないホールに対しても強権的なペナルティーを発動させる。
その内容は、当該ホールの誓約書未提出を含む違反状況に合わせ90日~120日の間、中古機流通に関わる確認証紙発給の留保を講ずる可能性があることを示唆している。この確認証紙発給がなされなければ、ホールは中古遊技機の購入設置のみならず、チェーン店間の遊技機の移動設置もできなくなる。

業界団体が公式で通達しているペナルティーは以上の二点であるが、その他にも多くの遊技機メーカーが、21世紀会決議に反するホールに対し新台販売や部品供給などの取引において、何らかの不都合が生じる可能性があることを発表している。
また、外見上は判別しにくい認定未取得遊技機の設置に関しては、遊技産業健全化推進機構による立入検査が一定の効力を発揮することが見込まれている。
 

通報されたホールに厳しい2つのルール

この通報・確認システムにおける違反の「線引き」において留意すべき点がいくつかある。

1つ目は、違反となる「基準日」についてである。

仮に21世紀会決議に反するホールの通報があった場合、その通報日時点での状況が違反か否かの判断の基準日となるのだ。通報後の誓約確認機関による確認システムの段において是正したとしても違反である。

通報のあった当該ホールでは、直近の変更承認申請書の写しや撤去遊技機明細書をもって通報日時点での遊技機設置状況を疎明しなくてはならない。
ちなみに、誓約確認機関では通報があった場合、速やかに当該ホールに対し「事実確認書」を送付する。事実確認書を送られたホールは3日以内にそれに返送しなくてはならない。

留意点の2つ目は、「撤去」に対する概念である。

誓約確認機関による通報・確認システムにおける「撤去」とは、「客室からの排出」と定められている。
一部地域では次回入替時までは、遊技機の電源を落とし、稼働させていなければ撤去と同義とみなすというローカルルールが適用されている場合もあるが、本システムにおいては、法解釈の原則通り一律「客室からの排出」を求めている。

6号機と比べ稼働や粗利を創出しやすい高射幸性遊技機を1日でも長く稼働させたい営業現場の思惑を強く牽制する同ルールに対しては、所轄署や組合で調整されている入替日程と合致せず、隣接地域との不平が生じるなどの不満の声も聞こえる。

しかし、高射幸性遊技機に関しては電源を落としたまま設置し続け、土日祝日だけ稼働させるという悪例も把握されており、業界団体側としては撤去期限厳守の徹底を図るための当然の判断とも言えなくもない。

 

21世紀会の自主規制と規則が定める期限のギャップ

21世紀会による旧規則機に関わる決議=旧規則機の撤去期限は、国家公安委員会が定める規則(法律)のそれよりも厳しい。
法律が許しているものをなぜ業界団体は自ら禁ずるのか。

この点については本誌およびWebサイトにおいても再三再四解説を繰り返してきたので要点だけを説明したい。

サイトに10月13日掲載した「規則改正及び21世紀会決議の流れについて」(図表2参照)は、10月12日に全日遊連が都道府県方面遊協に発出したものだが、時系列を追っていくとコロナ禍においてパチンコ店が嵐のようなバッシングを受け続けていた時期と合致する。
特に注目すべきは、全日遊連の阿部恭久理事長と太田裕之専務理事が何度も警察庁を訪問し、旧規則機の入替プラン案について相談しているところである。

本誌の取材によれば、当初全日遊連が警察庁に提案した入替プランは、旧規則機の撤去期限を1年間先送りするものであった。しかし、警察庁は1年間の延長に難色を示した(4月21日)。このプラン案策定は、パチンコ業界に対する政府系融資とセーフティネットの議論と平行して進んでおり、政府と行政の両方に対する業界の交渉が、予断を許さない状況で行われていたことが読み取れる。

結果的に「政府系融資とセーフティネット」と「旧規則機の入替延長」の両協議の落としどころとして、警察庁が難色を示した入替最終プラン案を修正提出したのが5月1日。
この最終プラン案こそが現21世紀会決議と同様の内容であり、この内容を了承した警察庁は、5月14日の規則改正へと踏み切ったのだ。

改正された規則の撤去期限が、業界団体が提出した最終プラン案よりも長く設定されているのは、コロナ第2波などの混乱の可能性を勘案した保険的な期間を上乗せしたものであり、21世紀会が定める撤去期限は、監督官庁である警察庁が認めた撤去期限と実質的にイコールなのである。

このことは、6月23日の21世紀会における警察庁・小堀龍一郎課長の「今回の改正は、いわば業界による旧規則機撤去の取組に対する信頼をベースに行ったものであること」という発言にすべて集約されている。 

 

21世紀会による罰則と通報・確認システムの実効性

こうした流れを経て21世紀会が開始した誓約確認機関による通報・確認システムは果たしてその有効性を発揮することができるのか。その成否はシステムを主導する業界団体の側と、システムの対象となるホールの側の両側面からの努力が必要不可欠となる。

まずは業界団体側の立場から。

本システムの効果的な運用を実施するためには、一にも二にも「業界団体は違反ホールを本当に罰することができるのか」の一点に掛かっている。業界団体幹部が口をそろえて言うように、本システムの目的はホールを罰することではなく、遅滞なく21世紀会決議を履行してもらうこと、また是正してもらうことにある。
しかし21世紀会決議に対する誓約に違反しているホールに対し仮に何のペナルティーも課せられないのであれば、「結局、正直者がバカを見ただけ」と他のホールも違反を辞さないであろう。そもそも誓約違反は違法ではない。
ましてコロナ禍によりホールは厳しい経営状況に陥っている。ホール現場には「撤去する不満」もあるが、それ以上に「撤去しないホールが罰せられない不満」の方がはるかに大きいのだ。
一罰百戒。少なくとも本システムの有効性を証明するためには、21世紀会が、どのホールをどう罰するのかを、それが本望でなかったとしても、業界関係者に見せつけなくてはならない。

一方でシステムを適用される側のホールの立場から。

本システムに限らず、集団の統制を図るためのシステムにおいては、運営側と同等に、システムの適用を受ける大多数の善意の人たちの協力が必要不可欠だ。

今から8年前のことではあるが、警察庁保安課の玉川達也課長補佐(=当時)が業界団体の社員総会で行った行政講話が思い出される。玉川課長補佐は、「パチンコ業界の悪しき4つの慣習」と銘打ち、以下の4つを指摘しパチンコホールの意識改革を強く促している。

  • 違法な営業形態でも、たまたま摘発されなかったことをもって「既得権」と考える慣習
  • それが法に抵触しかねないものであれ、「他のぱちんこ店と同じことをしないと損をするかもしれない」と考える慣習
  • 法律で禁止されていても、牽強付会(※強引に理屈をこじつけること)の解釈により、本来存在しないグレーゾーンを追求しようとする慣習
  • 営業の基本となる法律や通達をきちんと確認しない慣習

正鵠を射るとはまさにこのことで、あれから8年が経ってもパチンコホールの悪しき慣習は完全に消え去ってはいない。

21世紀会誓約確認機関による通報・確認システムがその有効性を発揮するのか、それともなし崩し的に瓦解するのか。それは業界に関わるすべての人たちの物事を見測る視野、事の真相に対する理解、そして苦しい時だからこそ襟を正す姿勢にかかっている。


【インタビュー/池田毅弁護士】
決議に基づくルールは適法 問題は組合の権限とプロセス


不法投棄は業界の未来を阻む
330万台強の撤去に向け、早期排出と保管場所の確保を

 

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