「スマートパチンコ」は来年4月登場へ/日工組・榎本善紀理事長

2021.07.16 / 組合・行政

今年6月2日の総会で日工組の新理事長に就任した榎本善紀氏。
コロナ禍により業界全体がかつてない厳しい経営環境に陥る中で、いかにして現状を打破し、ビジネスの回復・発展へとつなげようとしているのか。

日工組が推し進める遊技機のゲーム性拡大と業界活性化へ向けた取り組みについて榎本理事長に話を聞いた。
(7月6日/日工組大会議室)


ビジネスの立て直しには、ホールとの協力関係が必要


Q:まず理事長に就任された心境と抱負をお願いします。

榎本理事長(以下、榎本) 筒井理事長が続投する予定でしたが体調不良で急きょ、就任の1カ月半前に話をいただきました。経営環境も最悪の中で(就任には)戸惑いもありましたが、引き受けることにしました。

私自身、前理事長の時代からゲーム性の拡大をテーマに動いていたので、今後はそれを前面に推し進めていき、どん底といえる今のビジネスを立て直すことが自身に課せられた使命だと認識しています。それは組合員にもマニフェストとして提示しました。
新体制になり業界団体でおそらく一番若い執行部になりましたが、私を含めリアルに現場に関わっている人が増えたので、現実に即した形で機械作りなどの改革につなげていける布陣になったのではないかと思います。

 

Q:榎本理事長が掲げるマニフェストについて具体的に教えてくだい。

榎本 6月2日の総会時に現状のビジネスを立て直し、時代に合わせた新しいビジネスモデルに進化させたいということを申し上げました。
具体的にまずは遊技機のゲーム性を拡大させていくこと。次に、今まさしく旧規則遊技機を撤去している最中ですが、そうしたことを二度と繰り返さない。高射幸だとの指摘をされないようにしていきたい。
公営ギャンブルと一線を画すそうした施策は、この業界を安定したビジネスとして発展させるには不可欠だと考えています。

さらに日遊協は西村拓郎会長が横断的組織として再構築すると言明されています。私も副会長として参加しているのですが、ホール団体とメーカー団体が協力するからこそできることがあります。
例えばメーカーは機械のゲーム性を高める努力をするし、ホールの集客力を上げるために、広告やイベントの規制緩和に取り組む、さらに一緒に組むからこそ出来る集客力をアップさせる取り組みもできたらいいなと、そして機械を良くすることとそれをアピールして集客力を上げること、それらを一緒になってメーカーとホールが取り組むことでビジネスを立て直していこうという話を進めています。

 

Q:来年1月末、旧規則機の完全撤去に向けた現在の新規則機の比率と今後の供給の予定は。

榎本 6月末で新規則機の設置比率で72%。改定した21世紀会決議の新しい目標値は6月末で70%だったのでパチンコはそれをクリアした状況です。パチンコは認定機も多いのでこの先ギリギリまで使おうという話もあるかと思いますが、機械のゲーム性の拡大も進んでいるので、撤去だから仕方なくというよりは集客と利益のアップにつながる前向きな入替と思っていただけるのではないかと考えています。
現状のコロナ禍で軽はずみなことは言えませんが、今後はホールさまの収益につながるような機械をどんどん出していける環境になっています。

 

Q:旧規則機の撤去にともなう、廃棄台の処理の現状はいかがでしょう。

榎本 日工組は2012年から回収システムを始めており、それが定着しています。今回の入替に当たって処理会社と緊密に相談していますし、ホール様にもっと知っていただく活動も行なっています。
正直、思ったほどの廃棄処理台数の数字が上がっていないというのは事実ですが、ホールさまがきちんと日工組の回収システムに乗せてくれれば、野積みなどにはならないように製造者責任は果たせるものとしています。
また、業界全体としてはリサイクル推進委員会があり、そこの選定業者を利用してもらえれば日工組の回収システム以外でもフォローできる体制を整えてもらっています。そうしたシステムにきちんと乗せていただければ問題は起きないという認識です。

 

Q:管理遊技機(以下、スマートパチンコ)についての進捗状況とそれがもたらすメリットを教えてください。

榎本 今のP機のゲーム性の拡大はもとより、将来のビジネスを立て直し、時代に合わせて進化するという意味で、スマートパチンコ、スマートパチスロ(メダルレス)をリリースできように計画を進めています。
現状においてもゲーム性の拡大に取り組んでいるのでその辺の状況次第というのがパチンコの場合はあります。パチンコはパチスロと違い、甘デジ仕様にしたり、1円パチンコで使ったり2次、3次使用のビジネスモデルもあります。
逆に現行のP機をどんどん良くしていくという責任もあります。それをムダにしないようにP機を盛り上げつつ、機械の種類を増やす形でスマートパチンコにプラスアルファしていきたい。スマートパチンコには当然、ユニットが付いて回りますから、この時期に新たな投資負担というデメリット面を抱えているのは十分に承知しているつもりです。そのマイナス要因を背負ってもなおプラスになるようなところまで仕上げていきたいと思っています。

7月2日の組合員会議では、日電協さんも4月を目標にスマートパチスロを進められているとお聞きしていますが、日工組としても4月を目標に順次進めていくことを決めております。
いい形でスマートパチンコ、スマートパチスロが来年4月に船出ができたらなと考えています。

2024年には新紙幣が登場するので、嫌応なしにユニットを替えるタイミングがきます。その時に紙幣が変わるからだけの投資ではなく、ホールさまには集客、売上・利益につながるメリットがある形にしておきたいと思っています。
スマートパチンコ、スマートパチスロが将来的に広く普及すれば機械代の削減につながるのは間違いありません。

 

 

集客・ファン増の決め手は、売れ筋の偏りをいかになくすか


Q:スマートパチンコの開発の方向性を含めてもう少し具体的にお願いします。

榎本 現在、P機のゲーム性は拡がってきていますが、今後さらに拡大していきます。
パチンコは売れ筋が偏る傾向があるのでいかにその種類を増やしていくか。それこそが集客力をアップし、ファンを増やしていく決め手だと思います。
パチンコはパチスロに比べ歴史が旧い分、ルールが多く金太郎飴になりやすい。画一化した機械ばかりでユーザーが減っていったというのが右肩下がりの大きな原因です。ですからメーカーがいろんな種類の機械を作り、ホールも選択肢が増える。そのような方向性のイメージです。
また将来的には、その機能を生かした新たな使い方、キャッシュレス化など新しい時代に伴う変化にもついていけるようなアイテムにしていきたいなと考えています。

 

Q:現行の遊タイムのような新しいゲーム性が搭載される可能性はあるのですか。

榎本 今、P機でもいろんなことができます。これまでは同じ機種の中でちょっと確率を変える、ちょっと継続率を変えるというように「機械を設計する」というよりも「仕様を選ぶだけ」という状況が続いていました。
しかし、現在いろんなゲーム性を設計できるようになってきています。最近でも出ましたがこれで当たれば3回または5回続くといったセット物やストックものなど、いろんなゲーム性が設計できるようになってきています。そのうちの一部が新たにスマートパチンコだとできるようになるとか、プラスアルファのゲーム性がつくれるようにもなるでしょう。
現段階では詳しくは言えませんが、この夏にはみなさんにある程度お話ができるようにしたいと思います。

 

Q:パチンコ参加人口は右肩下がりに減少しているが、今後ファンを増やしていくような方策はありますか。

榎本 コロナを退けたあとに、日本を挙げて経済復興という時期は必ずくるでしょうから、そのタイミングに乗り遅れないようにして、少なくとも離れていったファンを取り戻したいと思います。
先ほど話したゲーム性が設計できるというのは、パチスロAT機がモデルになっていてあの仕組みをうまく応用していきたい。時短の解釈基準の変更による遊タイムが象徴的ですが、今まで時短があるかないかだったのが時短の状態がa,b,cと少なくとも3状態あって、その状態を用いることで機械の設計が家系図のように複雑にできるので、ある意味若者にアピールできるチャンスでもあると思います。
TVCMだけでなく、SNSなどにも力を入れて、パチンコとパチスロを渡り歩いてもらうような人を増やしつつ、機械づくりではゲーム性を拡げていって、ホール団体さまとも協力しながら集客アップのための広報宣伝にも力をいれてやっていこうと考えています。

日工組, 21世紀会決議, 設置比率