メディアのミスリードに業界はどう対抗すべきか? 21世紀会が「めざまし8」へ要望書

2022.09.16 / 組合・行政

静岡県の認定こども園に通う3歳の幼児が通園バス内に取り残され、熱中症により亡くなった痛ましい事件。多くのメディアもセンセーショナルに報道する中、パチンコ店駐車場における過去の子どもの車内放置事案が引き合いに出され、それに対しパチンコ・パチスロ産業21世紀会がテレビ局に「抗議」を行った。

21世紀会がフジテレビの「誤報」に対し配慮を要請

パチンコ・パチスロ産業21世紀会(以下、21世紀会)は9月8日、株式会社フジテレビジョンに対し、9月7日のフジテレビの「めざまし8」内で報じられた、静岡県牧之原市の幼児死亡事故についてのMC谷原章介氏のコメントに対し、放送内容を強く否定する要望書を送付した。

これはMCの谷原章介氏が事故に対するコメント内において、「パチンコ屋だったりとか、大規模な商業施設なんかで子供を車内に親が残したまま起きる事故ってのも後を絶えませんけれども……」と発言したものを受けたもので、21世紀会要望書では「パチンコ・パチスロホール駐車場において2017年7月以降死亡事故は発生しておりません」とその内容を強く否定。全国のパチンコ店における事故防止に向けた取り組みと、事故の未然阻止についての資料も併せて送っている。

夏場になれば必ずと言っていいほど起こってしまう子どもの熱中症関連のニュース。実はメディアの不理解による「パチンコ店における子どもの車内放置」報道は、今回の「めざまし8」に限ったものではない。

本件と同様に、21世紀会がテレビ局に要望を出した事案は他にもある。

日本テレビが8月17日に放送した、朝の情報番組「ZIP!」内で、千葉県・八千代市で1歳の幼児が社内に放置され熱中症とみられる症状で死亡したことを受け、千葉県警による子どもの社内放置に関する注意喚起を内容とするニュースが放送されたのだが、その中でパチンコ店での注意喚起活動の映像が放映された。

これは報道の内容と「パチンコ店」はまったく関わりがないのだが、視聴者にあたかも同事故がパチンコ店の駐車場で発生したかのような誤解を与えかねないものだ。

21世紀会の要望書では、フジテレビ・日本テレビの双方に対し「視聴者に対し、正確な報道をするようご配慮いただくとともに、パチンコ・パチスロホール業界の子ども事故防止についても十分ご理解いただくようお願いする」との要望を送付している。

なぜ「抗議」ではなく「要望」なのか?

21世紀会がフジテレビに送付した要望書の件が、SNSなどでアップされると、日々駐車場の点検をはじめとした子どもの車内放置事故撲滅に向け必死の対策を講じている現場の関係者たちからは、メディアの裏付けのない安易な報道やミスリードに対する怒りや、それに対してすぐに要望書を提出した業界団体への賛意が示され、またそれと同時に、過去に救出した具体的な事例や数字を挙げ、業界関係者らの対策徹底についての情報拡散も行われた。

そのような中、一部の業界関係者からは、なぜ「抗議」ではなく生ぬるい「要望」なのかという声も上がっている。これについては、本誌の主観も交えて簡潔に述べたい。

要は「メディアは敵ではない」ということである。

この20年のパチンコ業界の苦境については業界関係者であれば誰もが知るところであるが、業界の未来を展望する時、メディアの持つ力を最大限利用する必要がある。

そのような中で、MCの発言や、差し込まれた映像一つで鬼の首を取ったかのように明らかな抗議姿勢を示すのは、業界にとって絶対に得策ではない。あくまでメディアには「正確に報道してもら」ったうえで、パチンコ業界に対するプラスのイメージを発信してもらう必要があるからだ。

もちろん、今回要望書を送付したテレビ局で、改善の兆しが見られず、誤報やミスリードが度重なるのであれば、厳重な抗議の必要性も出てくるであろうが、まずは要望書を提出することにより、今回はメディアに対して「パチンコ業界団体はちゃんと見ている」ということを印象付けた。

21世紀会がメディアに対し、しっかりと要望書を提出できるのは、5年以上、パチンコ店において子どもの車内放置事故を発生させていない現場の関係者の頑張りのおかげである。そのすべての関係者を激励したい。

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