「カバネリ」に学ぶ旧作残し戦略

2026.05.09 / ホール

主役は新台、それでも旧作が残り続ける理由

 2026年3月2日に導入された「スマスロ甲鉄城のカバネリ 海門(うなと)決戦(以下、Lカバネリ)」が、3月末時点で平均アウト20,000を超えるという高稼働を記録した。今でこそ「スマスロ ミリオンゴッド-神々の軌跡-」に話題が持って行かれている印象はあるが、依然として稼働は高水準をキープしている。この先しばらくは「Lカバネリ」がホールの主役として君臨することが想像できる。

 その一方で、興味深い動きも見られる。最新機種が登場したにもかかわらず、前作にあたる「パチスロ甲鉄城のカバネリ(以下、Sカバネリ)」をあえて残し続けるホールが少なくないのだ。しかもホールデータを確認する限り、Sカバネリにも一定の稼働がついており、Lカバネリと共存している状況が見られるホールが複数存在する。

 

©カバネリ製作委員会 ©Sammy

 同様の傾向は「炎炎ノ消防隊」シリーズ、「新鬼武者」シリーズなどでも確認されており、「新作が出れば旧作は撤去される」という従来の常識に変化の兆しが見える。この動きはある一部の地域にとどまった話ではなく、全国各地で見られる動きだ。

 では、なぜ今、旧作を残すのか。そこには単なる撤去コストやリスクヘッジにとどまらない、明確な「役割設計」があるのではないか。新台の登場という環境変化が、役目を終えたはずの旧作に新たな価値を与えている可能性がある。

 本稿では、この「旧作残し戦略」という仮説をもとに、実際に旧作を活用しているホール店長へ取材を実施。新旧機種の棲み分けや運用意図を掘り下げることで、旧作がいかにして「ただの残存台」から「戦略的資産」へと変わるのか、その実態に迫る。

 

※本稿における〝旧作〟の定義付け

 本稿における「旧作」とは、ただ台のナンバリングで見るというわけではない。シリーズ機であること、かつ最新台がナンバリングを継承していることを前提としつつ、最新台が前作と近しいゲーム性を有している台のことを指す。具体的には、カバネリ・新鬼武者・炎炎シリーズは最新台の1つ前を「旧作」という扱いとできるようなイメージだ。銭形5と銭形4、真打吉宗と吉宗などは、シリーズタイトルを踏襲しているものの、基本的なゲーム性が大きく乖離していることから、本稿では旧作のくくりには含まないと判断する。

 

【ホール店長に聞く旧作戦略①】

旧作を生かすという選択 相乗効果で稼働を伸ばすホール戦略

 はじめに話を伺ったのは、関東地方の某ホール店長。周辺ホールよりもオープンしてから比較的日が浅いが、地域のユーザーの支持を得ることに成功し、現在では安定して一定の稼働を記録しているような店舗だ。

 店長いわく、「新作が出たタイミングこそ、旧作が動くチャンス」だと語る。新台目当てで来店したユーザーが、関連性のある旧作や過去の人気機種にも興味を示し、相乗効果によって一定の稼働が生まれるという考え方だ。これは実際にデータでも示されたようで、L炎炎2の導入直前の7日間と導入直後の7日間のL炎炎のデータをそれぞれ比較すると、導入直後の方が導入直前よりも1台平均で稼働が約460回転ほど伸びていた。当然ホールの調整状況にもよるが、データサイト上で確認する限りは、導入直前の7日間の方が頻繁に高設定が投入されたようなデータが確認できた。設定状況をやや控えめにしたとしても、新作の影響力によって旧作が稼働する一例と言えるだろう。

 同店が新台入替のタイミングで、旧作を活用しようと意識し始めたのには明確な理由がある。

 同店は一時期、「これだ!」と言えるような看板機種が存在しないという課題を抱えていた。テコ入れ当初は新台を大量導入し、それ自体をウリにして集客を図っていたが、結果として他店との差別化が難しく、決め手に欠けていたという。そこで視点を変え、エリア特性に合わせた機種選定へと舵を切った。

 立地は若年層のユーザーが多い地域。そこで、市場導入から約1年が経過しているものの、若い世代から支持を集めているとされる機種をあえてテスト導入した。結果は上々で、継続的な稼動を獲得。さらにこの成功を踏まえ、導入から時間が経過した他の機種も再設置したところ、同様に一定の稼働へとつながった。

 「もちろん、単に設置するだけではなく、集客施策として設定配分にも配慮している」と同店長は語る。「打てる環境がある」とユーザーに認識してもらうことで、「またあの台の高設定を打てるかもしれない」と思ってもらい、リピートにつなげる狙いだ。こうした取り組みを通じて、同店は単なる機種の寄せ集めではなく、「特別感のあるコーナーづくり」を意識しているという。新台でも旧台でもない、独自の価値を持った島の形成だ。

 また、中古機の活用という点も見逃せない。稼働が見込める機種を中古で導入することで、初期投資を抑えながら利益に結びつけることができる。新台一辺倒ではなく、コストと稼働のバランスを見極めた柔軟な判断が求められる戦略だが、同ホールでは積極的に中古機の活用を行っているという。

 

【ホール店長に聞く旧作戦略②】

仮説と検証の繰り返し 一台の稼働にこだわる徹底した営業

 続いて話を伺ったのも関東地方の某ホール店長。このホールは地域の2番店として長年営業しており、若年層から高齢者層まで幅広いユーザーから支持を得ているホールだ。

 同ホールの店長は、Lカバネリの導入にあたり、「稼動は極端に振れる」と予想していたという。すなわち、超高稼動が一定期間保たれるか、導入直後から低稼働を記録してしまうか、いずれかになると見ていたとのこと。もし前者であれば、Lカバネリ目当ての来店ユーザーが増え、結果としてSカバネリへの流動も生まれるはず。特にSカバネリは完成度・評価ともに高く、導入から3年半以上経った今でも一定の支持層が存在する機種なので、ホールに設置を続けても「見向きもされない」ような状況は避けられるだろうと読んでいた。その読みは結果的に的中したが、「仮に動かなければ撤去すればいい」程度に軽く考えていたと振り返る。

 同ホールは直近のカバネリシリーズや炎炎シリーズに限らず、以前から新作と旧作を併用して営業することが多かった。

 新台で集客を図るのは業界の常套手段。しかし同店長は、旧作を残すことで「打てる機種の選択肢が増える」というシンプルな価値に着目した。大まかなゲーム性は非常に似通っている台だとしても、全ての要素を横並びで比べていったときに、全ての要素が変わっているわけではない。そう考えれば、シリーズ機だとしても、新作・旧作の2機種として併用できるという考えだ。

 さらに地域単位で見たとき、特定の旧台が競合店に設置がなく、自店にしかない状況を作れれば、それ自体が来店動機になりうると考えているとのこと。いわば来店動機を増やす施策だ。

 過去の事例として、導入から数年が経過した機種を1台だけ残していたところ、固定のファンが継続して遊技していた様子が見られた。「もしかしたら他にもファンがいるかも」と仮説を立てて試しに1台増やしてみたところ、別のファン層も反応し、2台とも安定して動くようになったという。「需要は顕在化していないだけで、確実に存在している。目に見えない需要を、日々の営業の中で見極めて仮説を立て、検証することこそが我々のすべきことだ」と同店長は語る。

 店舗全体で見れば1台の影響はわずかに思えるかもしれない。しかし「たかが一台、されど一台」。その1台が確実に利益を生み、固定客をつなぎ止めるのであれば、徹底して向き合う価値がある。新台偏重ではなく、旧台に役割を与えることで、ホール全体の魅力は底上げされる。旧作は〝残り物〟ではなく、戦略次第で〝選ばれる理由〟へと変わるのだ。

 

共通して見える旧作起点の戦略

 先の両名の店長の話に共通するのは、新台(新作)の集客力に依存しすぎず、「旧作(シリーズ機や過去の名機)を戦略的な資産として再定義している」という点だ。そのアプローチには、大きく分けて3つの共通した思考が見て取れる。

 第一に、「新作と旧作の相乗効果」を狙っている点だ。両者とも、新台導入を単なる入れ替えで終わらせるのではなく、新台目当てで来店したユーザーを関連性のある旧作へ誘導するチャンスと捉えている。L炎炎2やLカバネリの事例にある通り、シリーズ機をあえて併設することで、ユーザーにとって「打てる機種の選択肢」を増やし、結果としてホール全体の稼働の底上げにつなげるという視点は全く同じである。

 第二に「データや現場の状況から仮説を立て、独自の価値を創造している」点だ。他店と同じ新台を大量導入するだけの営業では差別化が難しいという課題に対し、両者とも自店舗の客層(若年層や特定の固定ファン)を冷静に分析している。市場導入から時間が経った機種であっても、あえてテスト導入や1台単位の増台を行い、設定配分にも配慮することで、「その店独自の強み(コーナー)」や「特別感」を構築することに成功している。顕在化していない需要を日々の営業から見極めるという、泥臭くもロジカルな検証プロセスが共通している。

 第三に「旧作を〝残り物〟ではなく〝選ばれる理由〟にする姿勢」である。新台一辺倒では初期投資が膨らむため、稼動が見込める旧作を中古で導入してコストと稼動のバランスを取る考え方や、他店に設置がない旧台をあえて残すことで「自店だけの来店動機」を創出している。これらは、旧作に明確な役割を与えることでホールの魅力を底上げする、極めて戦略的な取り組みだと言える。

 

【データから見える実例】

長年のイメージの刷り込みは、新台が出ても揺るがない

 象徴的な事例として、あるホール(以下、A店)のカバネリシリーズの運用が挙げられる。

 A店では元々、看板機種の一つとしてSカバネリを約10台設置し、長らく営業の核に据えてきた。その後、Sカバネリの導入から数年の時を経て、Lカバネリが新台として登場。A店はLカバネリをメイン機種の一つとして設置することを決め、10台強導入した。しかしA店は、新台導入後も旧作であるSカバネリを一切減台することなく、並行して設置・営業を継続したのである。

 Sカバネリを残すという選択をした背景には、A店が以前からSカバネリに対して高設定を投入する機会が極めて多かったという事実がある。頻繁にA店を訪れるユーザーの間で、Sカバネリの扱いについて浸透しているとA店が判断したからであろう。

 その結果、Lカバネリ導入後の1ヶ月間のデータにおいても、Sカバネリは平均3,000回転という安定した稼働を記録した。単に設定を入れるだけでなく、高設定を投入し続ける期間が非常に長かったことで、「この店のカバネリには打てる根拠がある」という傾向がユーザーの間で確固たる信頼として認知されていたのだ。まさに、長期間にわたりSカバネリを主力機種として実直に運用し、ファンを育成してきた努力が、新台導入という転換期においても「新旧共倒れ」にならず、相乗効果を生んだ理想的な成功例と言えるだろう。

 

リスクヘッジも兼ねた、攻めの戦略

 カバネリ・炎炎・新鬼武者などのシリーズ機種は、正統後継機が登場するほど多くのホールで支持を集め、メイン機種として運用してきた店舗も少なくないという事実がある。こうした機種を長期にわたって扱ってきたホールには、自然と「旧作運用のノウハウ」が蓄積されている。設置台数のうち何割に高設定を投入すれば最終的なデータがどう着地するか、経験則として予測が立てやすいのだ。

 加えて、旧作への高設定投入、特にSカバネリはユーザーへの効果的なアピールにもつながる。遊技データを日常的に確認しているユーザーであれば、主にRBの回数から高設定が投入されているかどうかを判断できる。特に全台系の仕掛けであればその傾向はより明確で、ホールにいれば早い時間帯から「今日は機種単位で強い」を察するユーザーも少なくないだろう。データサイト上にも高設定濃厚の履歴が残ることで「この店は旧台にもきちんと設定を使う」という信頼感の醸成につながる。

 先述の2店舗の店長も、「旧作は設定を入れやすく、それがアピールにもなる」と口を揃えて語っていた。高設定のデータを知っているからこそ、利益の目処も立てやすい。ノウハウがある機種だからこそ思い切った設定投入ができ、その実績がデータとして可視化され、さらなる集客へと循環していく。旧作活用は、こうした好循環を生み出す有効な戦略なのだ。

 

【総括】

 新台偏重から脱却し、旧作を戦略的に活用することはホール価値を最大化する手段となり得る。従来は新台導入が集客の中心とされてきたが、カバネリや炎炎といったシリーズ機の事例からも分かる通り、新作と旧作を併用することで相乗効果を生み、ホール全体の稼働を底上げすることが可能だ。

 特に重要なのは、旧作を「残存台」ではなく「役割を持った資産」として再定義する点である。各ホールはエリア特性や顧客層を踏まえ、旧作に対しても明確なポジションを与え、設定配分や設置構成を工夫することで独自の価値を創出している。また、他店にないラインナップや打てる環境を整えることで、来店動機の創出やリピート促進にもつなげている。ラインナップ面でも、設定状況的にも、ユーザーに「このホールなら打てる」と思わせた時点で戦略がハマっている証拠なのだ。

 こうした取り組みの本質は、データと現場感覚をもとに仮説検証を繰り返し、潜在需要を掘り起こす点にある。旧作を活かすことでコストと稼働のバランスを取りながら、ホール独自の強みを形成する。すなわち旧作は〝過去の遺産〟ではなく、選ばれる理由へと変換できる存在であり、新旧を組み合わせた柔軟な運用こそが、これからのホール経営における重要な鍵となる。

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