国内の物価上昇が止まらない中、大企業では初任給アップなど賃上げの兆しも見えてきている。それに加え、政府は経団連に前年を超える賃上げを要請するなど日本全体として賃上げムードが高まっている。
一方、全国的に店舗数が減り続けており、斜陽産業と言われて久しいパチンコ業界の実情はどうなのか。
パチンコ転職NAVIから出された「パチンコ店スタッフ賞与(年間合計)アンケート結果」によると、回答者全体(216名)のうち17%の人が賞与をもらえていない。一定の役職につくと年俸制が採用されていることもあるためで、あくまで今回の調査は賞与の有無についてのみの結果とされている。
そして、同アンケートの結果によればボーナスを貰えている83%の人たちの、全世代平均値は1年間で67万4138円となった。
一方、厚生労働省の「毎月勤労統計調査」令和4年9月分と令和5年2月分の結果速報によれば、2022年の夏季平均賞与額は38万9331円、冬季平均賞与額は39万2975円となり1年間で換算すると78万2306円となった。
日本の全産業と比べるとパチンコホールはやや平均値を下回る△10万8168円という結果になった。パチンコ業界の実情としては芳しくない結果となったといえるだろう。
業界全体としてスマスロの普及やラッキートリガーなどプラス要素もあるが、それ以上に改刷による新たな設備投資や依然として見えない業界全体の先行きの不安感などが賃上げを阻害している要因と考えられる。
詳しく分類したデータを見てみよう。
上記産業のデータを見て分かるように副店長・マネージャー以上になると平均賞与額パチンコ業界の平均を超え初め、店長以上でようやく全国平均を超えるという結果になった。その一方で、店長以上は役職が昇進しても賞与がほぼ横ばいとなっている。また、副店長・マネージャー、店長・ストアマネージャーでは最高額が平均額の2倍ほどの人もいるため、同じ役職でも法人によって賞与には大きな差がありそうだ。
年齢別賞与においては、30代以上になると一気に賞与が上昇し、30~34歳の平均から35~39歳への平均が最も上昇率が高くなっている。金額でいうと36万4000円。つまり、35~39歳にパチンコ業界の昇進・昇給が行われていることが多いと分かる。
また、役職同様に35歳以降の賞与は50代までほぼ横ばいとなっている。50代以降は減少傾向であるが、これは日本の全体的な傾向と言えるだろう。
パチンコ業界では、賞与を平均以上もらうためには狭い門である出世レースに勝ち抜き店舗の店長以上になる必要があること、店長以上になっても賞与的な上昇は望みが薄いことがうかがえる。さらにパチンコ業界ではホール減少に歯止めがかからない状況となっているため、業界的に役職自体が減少傾向にあることも付記したい。
このままでは将来的にパチンコ業界と日本全体の平均賞与額との間にさらなる乖離のおそれがある。そんなことになればパチンコホールで働きたいという有能な人材を逃してしまう可能性もある。パチンコ業界としてこれからを担う若者という人的資源を確保・育成していくことは、ホールを未来につなぐことと同義であることを理解しなければならない。
パチンコ業界が日本全体の賃上げムードに乗り賞与を含め、待遇が改善されることを期待したい。