【特集】会社を辞めた。有名アカウントを持って。【佐々木さんインタビュー】
2026.03.31 / ホール店舗に紐づいたインフルエンサーが持つSNSアカウントは一体誰のものなのだろう。パチンコ業界においてしばしば議論となるこの問題について、ひとつの参考になる事例があった。
弊誌でも以前インタビューをしたことがあるインフルエンサー「佐々木」氏のケースがそれだ。
2021年に開設された都内老舗ホールのYouTubeチャンネルに、社員インフルエンサーとして出演していた佐々木氏はそこに初期からキャストのひとりとして登場。登録者数は12万人を超え、総再生回数3億4千万オーバーの巨大チャンネルに成長するまで関わり続けた。
コロナ禍の時期にいっせいに立ち上がった数多くの「店舗公式チャンネル」の中でも、特に成功した部類である当該チャンネルの立役者といっても過言ではない有名出演者だったが、そんな佐々木氏も2026年に運営法人を退社。
この4月からはフリーランスとして来店ビジネスを始めるという。独立に至る経緯、そしてそれまで運営していたアカウントの顛末を実際に聞いた。
「動画制作」に関わったきっかけと人気のヒケツ
PiDEA編集部(以下、編) まずは店舗公式YouTubeに関わることになったきっかけを教えてください。
佐々木(以下、佐) ある時上司からいきなり「今日はYouTube撮るよ」と言われて出演したのがきっかけでした。わたしが関わった時にはすでにチャンネル自体は動いていて、そこには同僚が出演しており、登録者も千人規模になっていました。
なのでまったくの立ち上げからというわけではありません。最初の頃は「確率は収束するのか」みたいなことを実験するような動画だったのですが、「書いてあるとおりに喋ればいいから」みたいな感じでカメラの前に立たされましたね。それで気付いたらYouTubeの運営スタッフの一員になってました。
編 他の業務はいいからYouTubeをメインでやってください」といったような感じで専任として働いていたのでしょうか。
佐 いえいえ。わたしは店舗のスタッフだったので、普段は店舗業務がメインでした。その中で当時は月に二度夜勤があって、その時にまとめて動画を撮影して……みたいな感じでした。店舗業務にプラスしてあたらしく別の業務が追加された感じですね。
編:チャンネルの成長を間近で見ていて、佐々木さんが「これは成功したな」と思った瞬間などはありますか。また成功の要因は何だと思いますか。
佐 わたしが関わるようになった時点で、すでに数万再生の動画などがありましたし、チャンネル自体が成長傾向というか、ずっと登録者数は増え続けていたので、あんまり「爆発的に増えた」みたいな手応えを感じる瞬間はなかったように思います。
当時はコロナ禍で、非常に多くの法人がYouTubeチャンネルを立ち上げていたのですが、その中でもわたしが関わっていたチャンネルが成功した要因は、やっぱり制作チーム(編集・企画・撮影の担当を含め)みんながパチンコ・パチスロ大好き人間の集まりだったことだと思います。みんな打つし、みんな知ってるので、盛り上がれるツボをしっかりおさえてみんなで楽しく「来た! ヨッシャー!」みたいな感じで撮影してたのが評価されたのかなと。もちろんわたしもパチンコ・パチスロを打つために生きているくらい大好きです。
編:佐々木さん自身の人気についてはどう分析されていますか。
佐 本当に人気なんですかねわたし……と思っているのが正直なところです。
人気があると仮定して考えてみると、たぶんパチスロ愛みたいなのがウケてるんだと思います。本人はただ打ちたいだけなんですけどね。
例えば演者さんとかでも「パチスロをまったく知らないけど打ってみました」みたいな人ってたくさんおられるじゃないですか。でも言葉は悪いですが、真の「パチンカス」の女性演者ってあんまりいないような気がするんですね。
「好きです」って言ってるけど、よく見たらあんまり詳しくなさそうとか、「そもそもイヤイヤ打ってない?」みたいな。その中だと、もしかしたらわたしは珍しいタイプだったのかもしれないなと思います。
今はちょくちょくいますけど、少なくとも2021年当時のアイドル店員さんブームとか、店舗チャンネルの立ち上げブームの頃には、こういう病的にパチンコが好きな女性演者ってあんまりいなかったと思います。
独立の流れと来店演者に決めた理由。
編 佐々木さんは2026年の2月末で会社を退職されましたね。その理由についてお聞きしてもいいですか。
佐 これも説明するのが難しいのですが、「パチンコ・パチスロをもっと打ちたいから」です。
わたしはとにかくパチンコをずっと打っていたいタイプなんですが、ご存じの通り、普通に働いていたらそれはほぼ無理なんですよ。例えば一般企業で月に30万給料が貰えるとして、一回パチンコにいって3万円負けたら、もう収入の10%がパチンコで消えちゃう。
これみんな感覚が麻痺してるから普通って思っちゃいますけど、よく考えるとヤバいことで、2回負けたら月収の20%、次また負けたら30%と加速していきます。
恐らくわたしは若干依存症気味なので、収入の3分の1どころかもっと負けることなんか頻繁にあるわけなんですが、パチンコを大好きな趣味として続けていくには、「打ちながらお金が貰える仕事をするしかない!」って思ったんです。
年齢もちょうど30歳の節目が目前で、チャレンジするタイミングとしてもおそらくこれが最後。なのでお世話になった会社を辞めて、独立して来店演者、それとYouTuberになる決意をしました。
編 パチンコやパチスロに関わりながら生活するという意味では、例えばメーカー勤務であったり攻略ライターであったり、単純に法人に勤務しながらキャリアアップを目指して収入を上げて好きな機種に入れ込んだりとか、いろいろな道はあると思うのですが、特にフリーランスの演者やYouTuberとして独立しようと思った理由はありますか。
佐 いくつかあるのですが、まずは今いるファンの方とのつながりをなくしたくないのと、そしてファンとの交流に広がりを持たせたいということですね。
YouTubeに特化するか、来店もやるかどうかでちょっと悩んだんですが、来店をやれば今まで会うことができなかった方々にもお会いすることができるなと思いました。
遠方の方とかは、今まで物理的にお会いできるタイミングがありませんでしたが、今後は呼んでいただけるホール様によってはお会いできるかもしれない。
折角今まで積み上げたものを失くすのはもったいないので、これは来店をやることに決めた大きな理由になっています。
次に、わたし自身打ちたいけど、ホールに行けない苦しい時期に実戦動画で救われたことが何度もあるので、それは絶対に提供していきたいと思っています。
ただ、ご存知のようにYouTubeはチャンネルを育てて収入になるまでに時間がかかるので、その間の時期を来店で何とかしのぎたい、というのがあります。なので来店演者とYouTuberをセットで考えています。
編 今後、来店の告知などは主にXを使う予定ですか。
佐 はい。その通りです。ご存知のように、TikTokやInstagramはギャンブル関連の規制が厳しくて、パチンコ・パチスロ界隈ではあまり浸透していません。
パチンコに関係のないネタであればTikTokもありですが、それはわたしのやりたいこととは離れているので、わたしの進む道にXのアカウントは必要不可欠です。
「アカウント」の扱いはどうなる?
編 それでは本題になりますが、今まで使っていた「佐々木」のXアカウントなどは今後どうされる予定ですか。
佐 非常にありがたいことに、会社からも許諾をいただけたので引き続きわたしが運用します。実は、わたしは自分のXアカウントを作るのがかなり遅くて、作ったのはわりと最近……2025年の3月くらいなんですよ。
YouTubeチャンネルが有名になったあと、社長から直々に「もしやめたとしても役に立つだろうから、Xのアカウントを作っておけばいいんじゃないか?」という風に言っていただいたことがあって、辞めるときにもその話をさせていただいた上で協議の結果、アカウントをいただけるということになりました。
編 アカウントを持っての退職、というのに対して、会社から苦言のようなものはありましたか。
佐 わたしの場合はまったくありませんでした。なんのトラブルもなく穏便に、むしろ「頑張って!」という応援の言葉もあったくらいです。
もちろん給与をもらいながら運用していたアカウントですし、そういう意味では会社の資産として考えることもできるとは思います。でも、「中の人」が変わったアカウントって、今まで通りいくかというとそれは難しいと思うんですよね。当然フォロワーも減りますし、ネガティブな反応もあります。
だから周りをみても、結局そのアカウントって使われずに放っておかれちゃうんですね。会社もそれは分かっているので「アカウントは会社の資産」という考えもあるから、心境は別にして「アカウントはあげません」という判断にならざるを得ない場合もあると思います。
わたしもアカウントは「半分会社、半分自分のもの」と思っていたので、もし「あげません」という判断が出たとしても納得して返上していたと思います。
そうならなかったのは本当に会社の理解もあったおかげです。わたしと会社、双方にとって一番良い形にするにはどうすればよいのか、上層部の方もいろいろ確認してくださったそうで、改めていい会社に勤めていたなぁと実感しました。
編 独立の発表について、SNS上ではどんな反応がありましたか。
佐 当初はネガティブな意見も多くて落ち込みました。何日かで立ち直りましたけど。
編 アカウントを引き継ぐということは、そういう「ネガティブなコメントをする人」も一緒に引き継ぐことになりますが、それについてはどう思いますか。
佐 Xって変なリプがついてもそれを消せないんで、実はあまりコミュニケーションに向いたツールじゃないと思っています。それを踏まえて、ネガティブな意見を言う人はまとめサイトなどを見て、それにリプを付けている人が多く、本来交流したい、自分のフォロワーさんとかファンの方ではないんですね。なので努めてあまり意識しないようにしています。
「セルフブランディング」のためのアカウント運用の心構え
編 佐々木さんのように、会社のYouTubeチャンネルやSNSアカウントで「ブランドの顔」として活躍しているスタッフはたくさんいます。敢えて法人側の立場から、その人たちに「独立」よりも「会社に居続ける」ことを選んでもらうためには、どのような手が有効だと思いますか?
佐 どうモチベーションを保つか考えながら、報酬体系を含めて見直すといいかもしれません。
わたしの場合は、店舗のSNSでレスを付けたり動画のチェックをしたり、業務終了後や休みの日の時間もある程度使っていました。
これについては、例えばインプレッションごとにいくらか成果報酬を出すなり、また「SNS担当」として正式に何かの肩書を与えたり、何か本人のやる気につながるものを用意してあげると良いですね。
あと、さっきも言いましたがSNS担当やYouTube出演はメンタルが削れる業務でもあります。わたしの場合は、やりたくてやっていた部分があるので別にいいのですが、そうじゃない担当者もいます。そういう人の場合は、コメントやリプライで罵詈雑言が飛んでくるとかなりキツイので、そのへんのケアもしてあげてほしいなと思います。
編 逆に、店舗SNS担当者に抜擢されたばかりの新人さんや、あるいはそろそろ独立を考え始めている担当者さんに、なにか一言ありますか。
佐 うぬぼれないことです。店舗のSNS担当者って、思っているより「店の名前」という下駄を履いています。老舗や有名店になればなるほど、です。
たくさん再生数やインプレッションがついてちやほやされても、それはお店の人気が大部分であって、自分の人気がすべてじゃない。
「井の中の蛙大海を知らず」とはよく言ったもので、うぬぼれていると外の世界に出た時にかなり大きな壁に直面することになります。
ほかにも、何か問題があったときの対応を含めて「会社」に守られている部分はかなり大きいですし、それありきで活動できていることを忘れてはいけません。逆に、それを忘れずに感謝の気持ちをもちながら業務をやっていれば、多分会社も悪いようにはしないと思います。
以上が佐々木氏へのインタビューだ。
氏のケースが独特なのが、そのSNSアカウントの立ち上げの段階から社長より「(ホール運営法人を)辞めたあとにも役に立つ」と後押しされる形で開設している点だろう。
これもあって、退職の際にはアカウントをそのまま持っていくことができ、しかもその話し合いは特に揉めることもなくスムーズに進んだという。
「会社のブランディングのために体を張ったインフルエンサー」と、そして「それを認めて快く送り出す会社」の良好な関係がここにあった。
コロナの渦中に立ち上がり、そしていま成熟期を向かえつつあるホール公式YouTubeチャンネル。次々と独立を申し出る社員たちへどう向き合うべきか、ひとつの理想像がここにあった。
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