広告なのに広告じゃない!? ステマ規制が間近に迫る

2023.06.16 / その他情報

誤解を与える広告宣伝はNG景表法の中身を見直そう
消費者に誤解を与える広告表示は常に規制の対象となり景表法は都度改正されてきた。今回の「ステマ規制」もその1つだが、どんな事例が問題となり、どんな罰則があるのだろうか?


優良誤認と過度な景品を抑制
消費者を守る景表法

昭和20年代後半から盛んになっていった過度な景品付販売が問題化している中において、景表法は「一匹のハエによって生まれた法律」と言われている。
昭和35年に販売されていた牛缶に、ハエが混入していたという情報が保健所に寄せられたことに端を発し、その情報を元に東京都衛生局が牛缶を調べたところ、牛ではなく、鯨の肉を使っていることが判明。複数の同様商品を調べたところ、実際に牛を原料としている製品は2社しか販売しておらず、ほとんどが鯨肉や馬肉を使ったものだったことから優良誤認と過度な景品付販売を抑制しようと施行された。
事業者(メーカーや販売・サービス業者)は売上・利益の増大のために、自らの商品・サービスの表示(商品名、キャッチコピー、説明文、写真・イラストなど)を消費者にとって魅力的なものに映るようにとさまざまな広告宣伝を行う。また販売にあたって景品類(賞金や賞品など)をつけるケースもある。
それら広告宣伝の内容や手法が不当(虚偽・誇大)だったり、景品類が過大だったりすると、公正な競争が阻害され、消費者が商品・サービスの選択に悪影響を及ぼす。そんな不当な表示や過大な景品類を規制し、公正な競争を確保することにより、消費者が適正に商品・サービスを選択できる環境を守ることを目的として不当景品類及び不当表示防止法(景表法)が昭和37年に施行された。 

事実と異なる宣伝文句で製品を売りさばくことも優良誤認、有利誤認と認定されてしまうと莫大な課徴金を支払うように命令を受ける。金額もさることながら、製品や企業のイメージも著しく損なう。

時代に合わせて変化する
景表法の改正

パチンコ業界関係者にとってもなじみ深い景表法だが、時代とともに規制の追加や強化、緩和などを繰り返してきた。元々は公正取引委員会の管轄であったが、2009年に消費者庁が創設されたことにより、景表法は消費者庁に全面移管された。
その後、2012年に世の中を騒がせた「コンプガチャ」問題など、景表法にあった「絵合わせ」に該当すると判断し、ゲーム会社に注意喚起を行なったことは記憶に新しいだろう。また、2016年からは不当な表示をした事業者に対し、課徴金を課すことができる改正景表法が施行された。
これにより、「優良誤認」や「有利誤認」に違反した企業に対して、「課徴金対象期間」における課徴金対象行為の対象となった商品・サービスの「売上額」の3%相当額を支払うこととなった。
「たかが3%の課徴金」と思われるかもしれないが、「期間」と「売上」を考慮しての3%ということで、過去には莫大な課徴金を命じられることになった企業もある。1つが加熱式タバコのフィリップモリスジャパン。2016年1月~18年3月に、コンビニ3社の各店舗の店頭に設置されたアイコスの2製品の立体広告などに、期限を定めた上で「今なら会員登録すれば3000円OFF」などと宣伝していた。
フィリップモリスジャパンは、最初に記載してあった期限を過ぎた後も複数回広告を作り替え、「大好評につき期間延長」と記載するなどして、1~5カ月間の期間限定キャンペーンを繰り返していた。これが、取引を急がせ、あおるような表示をしたと判断。19年6月、再発防止命令を出されている。そして、2020年の6月に課徴金として5億5274万円の納付命令が出されている。
もう1つは「空間を除菌する」とうたい「クレベリン」という製品を販売していた大幸薬品。こちらは「二酸化塩素の作用で空間除菌ができるとうたった商品の表示には効果を裏付ける合理的な根拠がなく、景品表示法違反(優良誤認)にあたる」とされて、じつに6億円以上の課徴金納付を命じられている。 

社会問題となったコンプガチャ。デバイスの中でしか表示されないゲームアイテム=デジタルデータを実際の景品と認定するべきか議論もあったが、最終的には景表法の範疇で禁止という扱いになった。

SNSの流行によって
生まれたステマ規制とは?

時代に合わせて、消費者を守るために法改正を続けてきた景表法。消費者庁は新たに今年の10月からインターネット上などで広告と明らかにせず口コミや感想を装って宣伝する「ステルスマーケティング(ステマ)」の規制をするとし、政府は今年の3月28日、景品表示法が禁じる不当表示に追加した。
ステマ規制が実現した背景にはTwitterやインスタグラムなど、インターネット、特にSNSの流行があげられる。化粧品や健康食品、理美容機器などを使用してみての感想などを投稿して、フォロワーに宣伝する。いわゆるインフルエンサーと呼ばれる面々が台頭してきたことが最大の理由といえるだろう。
当連載においてインフルエンサーたちの脱税があったという事例を以前に紹介しているが、一流のインフルエンサーになると、年間で数千万円から数億円を稼ぐこともあり、人気の職業としてももてはやされている。そんなインフルエンサーがとある商品を自身のSNSで紹介すること自体は問題ではないが、企業から謝礼を受け取って宣伝しているにも関わらず、まるで自分が愛用している商品かのように紹介することは不当表示にあたると判断が下されたわけだ。
違反した場合は再発防止を求める措置命令の対象とする。悪質な場合は懲役刑や300万円以下の罰金などの刑事罰が科される可能性もあるという。また、高額になる可能性もある課徴金に関しては、優良誤認表示及び有利誤認表示違反のみが対象であり、ステマ規制違反については課されることはないということだ。 

消費者に誤解を与えるような投稿に規制が入る

10月1日以降はインフルエンサーたちの商品紹介投稿に「#PR」や『#広告」が明示されていなければ規制対象となる可能性が高くなるが、行政処分を受けるのは依頼した広告主のみというのが今回のルールだ。

 

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