多様化する働き方を救う 「フリーランス保護新法」は何をもたらす②ー経営者にこそ読んでほしい企業コンプライアンス

2022.10.25 / 連載

「炎上」「漏洩」が蔓延る
パチンコ業界にとっての新法

フリーランスの適正取引を守るための新法だが、パチンコ業界では他業種とは大きく風向きが異なると見る向きは強い。フリーの演者や晒し屋が「炎上」や「情報漏洩」ということをしでかすだけでなく、それらを盾に脅迫じみたツイートをする輩もいるからだ。

前号でお伝えしたような「サクラ使っているホールを知っているけど、自分を呼ばないと晒しちゃうぞ」というツイートなどは、その最たる例といえるのではないだろうか。

発注するホール側とフリーの演者や晒し屋を比較して簡単に強弱をつけることはできないかもしれないが、(フリー演者や晒し屋が)しばしば牙を剥くことがあるのは周知の事実だ。

最近でも本気か冗談か判断はつかないが「ハンドル固定して良いか。と聞いたらダメと言われた」とか「○○を打てと言われた」などのツイートをする女性演者も現れた。あくまでネタだから炎上というほどのことではなく、話題作りとしては注目を集めることができるだろう。しかし、法や条例ではない部分にルールやモラルが存在する。そういう発言が気安くなると、「みんなこういうことを言っていいんだ」という空気は確実に醸成されていく。そうなってしまった時がモラル崩壊の危機なのである。

フリー演者による危うい発言は後を立たない

某女性演者が代理店とのやりとりで「ハンドル固定しても良いか」聞いたら怒られたとツイート。注目を集めるという点では成功かもしれないが、本当に(固定を)しないかどうかリスクは残る。

 フリーランス全員がそうだとは限らない。しかし、もしこの新法が成立したら、これすらも武器にしてくる可能性もある。例えばフリーランス側が期待するほど店が玉を出さなかった場合、「ユーザーのため」という詭弁を用いて発注した店を批判するだろう。そうなった時に、店はネガキャンをされたわけだから、契約不履行ということで支払いもしたくないところだが、新法を盾にして報酬を要求。さらには、「こんなこと言われてる!」とSNSでやりとりを晒される可能性もある。

これを防ぐには、やはりしっかり信用した相手とやりとりをすることが一番だ。ただ、それも難しいということであれば、契約や条件を事前に明示することが義務付けられるため、「炎上」「情報漏洩」など、店舗の不利益になるような発言や行動をした場合のペナルティーなどをしっかりと明示するべきだ。

電話一本の口約束やツイッターのDMで簡単に発注という、手軽さはたしかに魅力的ではある。ただ、これがなくなるのならば、フリー演者や晒し屋を起用するメリットと、そのほかに発生する業務とリスク、両者を天秤にかけて検討することが求められる。

新たな制度や新法でホール側の負担は増加

「気軽に頼める」「安価で依頼できる」などフリー演者や晒し屋を起用するメリットはあったのかもしれないが、法整備が進むと、気軽に発注することもままならない。負担が増えてまで利用する価値はあるのだろうか。

 

新制度や法整備が進む中で
改めて健全化を目指す時

適格請求書のやりとりが必須となる「インボイス制度」やフリーランスとの取引を適正化する「保護新法」と、企業間のあらゆるやりとりは厳格化し記録されるようになっていく。「税金をきっちり納めさせたい」という国の思惑も見え隠れするところではあるが、知り合いに軽く仕事を頼んで取っ払いで現金を渡すという、過去にはよく見られた光景も今後は失われていくことになるだろう。

繰り返しになるが、ホール関係者からしても「インボイス制度」や「フリーランス保護新法」は少なからず影響が出るだろうし、負担が増える可能性も高い。そこには多少の息苦しさも感じるが、ここで考えなければならないのは、これをきっかけに透明性のある商取引となり業界の健全化が進んでいくことだ。そう考えれば悪いことばかりでもない。

これまでパチンコ業界は暴力団の排除、適切な広告宣伝、遊技機の正しい取り扱いなど、グレーな部分を払拭しようと先人たちも含め多くの人が努力を続けてきた。それでもアンチはいなくならないし、いまだにグレーな部分があることは否定できない。そんな中で一部のフリーランスが我欲で「炎上」「情報漏洩」といった事例を起こすのは、これまで積み重ねてきた業界の努力が簡単に壊されているとは思わないだろうか。

だからこそ、「インボイス制度」や「フリーランス保護新法」の意図を理解した上で、改めて適正な取引を行える土壌づくりをしていくのが正しい道筋といえよう。業界内にもフリーランスという立場で働く人がいるだろうし、そのすべてを排除すべきだとは言わない。しかし、悲しいかな目先の金に目がくらんで業界の和を乱し、自店や業界全体に悪影響を及ぼす輩はいる。

聡明な経営者や管理者のみなさまには、健全な商取引をするに信用できる相手かどうかをまずは見極めていただきたい。話題性や安価だからという理由だけで飛びつけば、問題が発生する可能性は高い。安いものには訳がある。高いものには物語がある。いつだって責任はホールなのだから。

 

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