多様化する働き方を救う 「フリーランス保護新法」は何をもたらすー経営者にこそ読んでほしい企業コンプライアンス

2022.10.25 / 連載

フリーランスの取引適正化
新法が目指す目的

個人事業主に大きな影響を与えるであろう法案「フリーランス保護新法」が秋の臨時国会で提出される見込みだ。

企業がフリーランス事業者へ業務をアウトソーシングする際に、立場の差が発生してしまうのが世の常であった。本来は企業がお金を払ってサービスを購入する立場であり、フリーランスはそのサービスの売り手であるため、両者は対等な関係であるべきだが、実際にはそのような関係になるのはレアなケースだ。フリーランス側には落ち度がないにも関わらず、一方的に企業側が報酬を減額したり、納めた商品の受け取りを拒否して支払いをしなかったり、立場の差を利用した不公正な取引や不利な契約変更が行われてきた。

今回俎上に上がっている新法は、依頼主である企業などに対して、案件の報酬額や仕事の内容、納期などを明示し、契約書面や電子データ交付の義務づけ。また、一定期間以上継続的に業務委託を行う場合は、業務委託に係る契約の期間、契約の終了事由、契約の中途解除の際の費用なども明示しなくてはならないとされている。このほかにも「契約を終了させる場合は30日前に事前告知すること」や「発注物が納品を受けた日から60日以内に報酬を支払わなかればならない」といった事項が義務化されることになる。

日本にはコロナ以前で460万人以上のフリーランスで仕事をしている人がいたという統計データもあり、この数値はコロナ禍を経てさらに増加していると見られている。特にIT系のエンジニアなど、技術職はフリーランスが多く、専門の派遣サービスも複数存在する。年々増加しているフリーランスという働き方を選択する人が増加している中で新法ができるのは自然な流れなのかもしれない。

立場の弱いフリーランスが適正な商取引を行うための保護新法。パチンコ業界にとってこの保護新法はどのような影響を与えるだろうか。

 

フリーランス保護新法
企業側に与える影響

フリーランスという立場での取引適正化を目的とした新法だが、企業側からするとどのような影響があるだろうか。

「インボイス制度」の場合はフリーランスからすると、これまで益税として免除されてきた消費税の納税しなくてはならなくなる(インボイス制度を使わなければ納税しなくても良いが、取引が停止になるリスクがある)というデメリットを感じさせるもの。一方で企業側からすると、適格請求書のやりとりをしないと、消費税免除が受けられず、税負担が増える。両者にとってデメリットがあるため、「インボイス制度」は個人事業主との商取引を見直す必要があるものという認識だった。

今回のフリーランス保護新法に関していうと、間違いなくフリーランスの立場からすれば歓迎すべきものであるが、逆に企業側からすると、「インボイス」同様にやらなければならないことが増える法案といえるだろう。口約束で成立させていた仕事や急遽対応に迫られた時だけ利用する仕事など、気軽に発注していた仕事に制約が付与されることになるのだ。報酬や契約期間を書面や電子データで明示・交付が必須となれば、新たな業務が増加してそれも負担となるだろう。

コストの抑制、業務の効率化などを目的としてフリーランスを活用してきた企業からすると、業務負担が増えることに加えて、健全な商取引をしていく=企業コンプライアンスを遵守していくことになっていく。

インボイスや新法はフリーランスにとってアメとムチ

先月お伝えした「インボイス制度」は消費税免除がなくなるリスクもある、フリーランスにとってはムチのようなもの。一方で今回お伝えする「保護新法」はアメのような法案といえるかもしれない。

  

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