複雑化する商取引で望まない企業と関係ができる危険性ー経営者にこそ読んでほしい企業コンプライアンス

2022.09.26 / 連載
この記事はPiDEA192号(8月15日発行)の転載記事です。

気付かぬうちに関係構築で
トラブルに発展する可能性
安倍晋三元総理大臣が参院選挙の応援演説中に凶弾に倒れた。事件発生当初は安倍元首相を悼む声が大勢だったが、犯人が「家庭を崩壊させた宗教団体と安倍晋三氏が関係があると思って狙った」と動機を語ると徐々に風向きは代わり、与党と宗教団体の関係性を問いたださんと、日夜ニュースやワイドショーで取りあげられることとなった。
安倍元首相とこの宗教団体がどのような関係性だったか、それに対する詮索は控えるが、宗教団体が主催する集まりにお祝いメッセージを送った事実はたしかにあったと報じられている。
一般人とは比較にならないほど多数の団体、企業、個人との付き合いが求められるのが政治家であり、ましてや元総理大臣ともなれば、自らが把握できていない「付き合い」が党内にあった可能性も高い。本人の預かり知らぬうちに関係が生まれ、トラブルに巻き込まれる。今回の安倍氏の事件は最悪の結末を迎えたが、このような事例は、一般の企業においても十分に起こりうる問題だ。
売上、利益を伸ばしていく企業活動の中では、事業の規模を拡大していく動きもあるだろう。もちろん、そのスピードは企業ごとに異なるが、新規の取引先は否応なしに増えていく。社内業務を効率化させようと、新規サービスの導入や業務の一部をアウトソーシングすれば、さらに取引社数は増え、管理は複雑化していく。
完全に新規取引だった場合は入念な企業チェックを行い、関連会社まで調査をするかもしれない。しかし、すでに取引のある会社からの紹介で取引が始まった場合はチェックが緩んだりしていないだろうか。気付ぬうちに怪しい会社と取引がはじまり、いつの間にかトラブルに発展してしまう。会社同士の「付き合い」が増えてくるほど、リスクも高まっていく。
選挙の応援演説中に倒れた安倍元首相。個人的恨みではなく宗教団体との「付き合い」から命を落とすことになるとは思ってもいなかったのではないだろうか。
 
著名な企業を隠れ蓑に!?
代理店の代理店が登場
ところで最近、某ホール関係者から聞いた話で気になるものがあったので1つ紹介しよう。
「先日、業界では名の通った大手イベント企業が持ってきた取材企画がありました。詳しく聞いてみると、どうやらそれが聞いたこともない会社が立案したものだったんです。ただ、取引業者に指定があるウチのような企業には入り込めない。そこで大手企業が代理で案内かけているということらしいんです。もちろんウチは断ったのですが、結構多くのホールさんが『あの会社が絡んでいるなら大丈夫か』と安易にそれを利用しているみたいですが、これって名義貸しみたいな話ですよね。大丈夫なのかな〜と冷静に見ています」
このケースでは、元々店長と付き合いがあったのは、大手イベント企業Aの方だ。Aが企画を売り込んできたが、実際は聞いたこともない弱小代理店のBが主導で立ち上げたもの。
弱小代理店Bが大手イベント企業Aを動かすほどの、革命的なアイデアを持ち込んだのか。はたまた、大手イベント企業Aが弱小代理店Bに“隠れ蓑”を与えたのか。その主従関係は定かではないが、この企画は複数の代理店が裏で協力体制を敷いており、大手イベント企業Aと弱小代理店Bだけでなく、各地方で営業している別の弱小代理店が、同一企画を販売するようになっているという。
このように、名の通った企業が案内をかけてくるが、実際は出処不明な企業が立案した企画であり、企画が実施となった場合はホールは大手イベント企業のAに料金を支払い、弱小代理店のBにマージンが流れるという仕組みのようである。
名も知らぬ会社が考案した企画を別の大手イベント会社が販売。いつの間にか今まで取引のなかった企業と間接的にホールがつながってしまうという状況になっている。

 

弱小代理店からすれば、大手イベント企業が持っているパイプが利用できるし、大手の看板を隠れ蓑のようにしてホールと取引できる。一方で大手もその代理店しか持っていない営業パイプを利用できる。ウィンウィンの関係となっているため、今後も同様の類似案件が出てくる可能性は高い。
年々経営環境が厳しくなっているパチンコ業界においてホールの件数は減少の一途をたどっている。並行するように、中小のメーカーや販売会社なども倒産している。生き残りをかけて、集客の可能性を持つ取材企画や来店、動画収録などを利用することは当然の戦略であるし否定するものではない。しかし、それら集客ツールを利用することに注力していると、見知らぬ企業が「寄ってくる」可能性も十分にあるので注意が必要だ。
 
気づかぬうちに反社と仕事をしている可能性も 
新規の取引先が増えれば増えるほど、反社会勢力との「付き合い」が生まれてしまう危険性は高まる。年々手口が巧妙化して、所属社員ですら「フロント」かどうか知らないケースもあるようだ。
 
 
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