【経営者にこそ読んでほしい企業コンプライアンス】複雑化する商取引で望まない企業と関係ができる危険性_2

多大な損失もありえる
反社との商取引
身に覚えがない会社との取引が発生してしまうリスクがある中で、企業が一番気をつけなくてはならないのが、反社会勢力との付き合い(取引)である。国内では、1991年に反社会勢力取締強化のために「暴力団員による不当な行為の防止などに関する法律」(暴対法)が成立し、その後、反社会勢力の手口が巧妙化したことを受けて、2007年には「犯罪収益移転防止法」が成立。反社会勢力が不当に儲けようとする行為は取り締まりが強化され厳しくなっているものの、法の目を掻い潜るように手口が巧妙化しており、初見では反社かどうか、気付かないこともありえるだろう。所属している社員ですら気付かないケースもあるという。しかし、万が一企業が反社企業と取引してしまうと、想像以上の被害を受けることになる。直接的な損害だけでなく、SNSなどが普及したことによる「レピュテーションリスク」(企業やブランドに対するネガティブな評判が広まるリスク)にはじまり、「新規取引拒否」「既存取引の中止」「従業員定着率の低下」「新規採用困難」など、一歩間違えれば倒産リスクも十分にあり、実際にそうなったケースもある。
 
反社との取引が露見して大問題となった事例でいうと、2013年に発生した「みずほ銀行暴力団融資事件」が有名だ。この事件はオリエントコーポレーション(オリコ)の商品である販売提携ローン(キャプティブローン)を通じて、融資金融機関であるみずほ銀行が反社会的勢力である暴力団に対して融資を行っていた不祥事である。本件は処罰する法律が存在しないため立件されていないが、その後の調査で行内での怠慢や金融庁に対して件数を過少報告するなど、隠蔽工作を図ったことが発覚し、金融庁から業務改善命令が出され、当時のみずほ銀行首脳陣は退陣に追い込まれている。
また、企業ではないが、2011年にタレントの島田紳助が反社会勢力との関係が露見したことで引退をしたことも覚えている人は多いだろう。天才的な話術を生かして多数のテレビ局で司会者として活躍し成功を収めていたが、それらをすべて投げ出して芸能界から足を洗うことになったのは、衝撃的であり、当時のワイドショーなどでは大きなニュースとして連日報道された。いまだに「芸能界に戻ってくるのではないか」という憶測ニュースが流れると、嫌悪感を表す書き込みが多数ある状況。引退してから10年以上が経過しているにも関わらず、否定的な意見が目立つのは本件の影響力の大きさがうかがい知れる。
企業の場合は多数の社員を抱えており、取引先も多数あればその損害は個人の比ではないだろう。
反社会勢力との付き合いが露見した時の社会的な信用失墜、ダメージは大きい。企業となればそれはさらに大きくなる。
 
反社排除に積極的な
遊技業界の現状
パチンコ業界は古くから反社排除に力を入れてきた。しかし、ホール企業は「遊技機メーカー」「周辺機器メーカー」「中古機業者」「景品業者」「広告代理店」「メディア」など、多数の企業と商取引を行う。BtoC向けの商売ではあるものの取引先が非常に多い。気付かぬうちに反社会勢力と付き合っているということにはならないまでも、日々の業務に忙殺されて、取引先のチェックがおろそかになってはいないだろうか。
これまで、当連載において、どのような企業に所属しているかも不明瞭な「フリー演者」や「晒し屋」などを起用することは大きなリスクを伴うという話をしてきた。安易に個人と付き合うのは十分な注意が必要なのは、気付かぬ内に代理店の代理店なる形でホールに食い込む企業もあるからだ。
多岐にわたる商取引も含めて、前号でもお伝えしたように、東京商工リサーチや帝国データバンクのようなシンクタンクを利用して、改めて取引先の精査を行い、取引のある企業をチェックして信頼できる企業を見つけるべきではないだろうか。
多くの企業と取引が発生しているパチンコホール。新たな取引が発生するケースも多いので、企業チェックはしっかりと行うべきだ。