【経営者にこそ読んでほしい企業コンプライアンス】コンプラ重視なのは仕方ない、それでも必要不可欠なのが広告宣伝

2022.08.24 / 連載

コンプライアンスを重視する世の中になってきているのは、大手メディアだけの話ではない。
テレビ放送見送りとなった某格闘技イベントの判断は、ある意味では英断だったのかもしれない。


芸人が困惑する
コンプラ重視のテレビ業界

「頭に落ちてくるタライが年々低くなってきている。リアクションが取りづらい」
人気お笑い芸人コンビ霜降り明星のせいやは、あるテレビ番組でそう発言した。また、同番組内では中川家の2人が漫才を披露する際に、「運転中の携帯電話の使用は禁止されています」というテロップを足されたと憤っていた。
お笑い芸人にとって現在のコンプライアンス重視のTV業界は非常にやりにくいと感じているようで、確かにその対応は行き過ぎと感じる時もある。例えば、「いじり」と「いじめ」はそれぞれまったく異なる性質を持つが、その捉え方はあいまいで不快に思う視聴者もいる。「容姿いじり」などを番組制作サイドが「面白い」と思っても、視聴者が不快に感じるのであれば放送すべきではない。というのが現状の地上波のスタンスのようだ。彼ら芸人たちはあくまで「ネタ」としてやっているだけにも関わらず、炎上してスポンサーが離れてしまうことを危惧するTV局は「コンプライアンス」に縛られてしまっている。

年々厳しくなっているTV業界のコンプライアンス。行き過ぎて視聴者が離れているという指摘も出ているが……。

 

疑惑でも放送中止にした
フジテレビの英断

そんなコンプライアンス重視が「いき過ぎでは?」と話題になり、議論を巻き起こした直近の事例がある。5月31日、那須川天心vs武尊が対決する格闘技イベント「THE MATCH 2022」を放送予定だったフジテレビが放送を見送ると発表したのである。
イベント運営側は、「いくつもの要因が重なった上での決断のようだが、残念だ」と放送見送りに対してコメントした。しかし、実際は、イベント主催者側と反社のつながりを指摘した週刊誌の記事が原因なのではという見方が多い。真偽は定かではないが反社会勢力とのつながりを危惧したTV局が下した決断は大きな波紋を呼んだ。武尊選手は「この試合の意味を分かって欲しい。まだ諦めません」とツイートしていたし、一方の那須川天心選手も、「お金の為じゃねえんだよ 未来の為にやってんだよ 子供達はどうすんだよ」と放送見送りを非難するツイートをしたものの決断は覆らず、同格闘技イベントは有料のネット放送のみで開催されたのは記憶に新しいところだろう。
世の中の風潮はフジテレビの決断に対して否定的な意見が多いように見受けられたが、もし週刊誌の記事が事実だったとしら、脊髄反射でこれを否定することはできないのではないだろうか。

6月19日に行われた「THE MATCH2022」は選手の懇願、批判も受け入れられず、ABEMA PPVのみで放送された。天心選手や武尊選手が危惧していたように格闘技ファンや格闘家を目指す子供たちの多くは試合を生で観戦することは叶わなかった。

 

コンプラに過敏になった
要因はSNSの発展?


TV局が「コンプラ重視」にシフトしていった要因の1つとして挙げられるのが、インターネットやSNSの発展であると言われている。芸人の身体を張った罰ゲームや容姿いじりなど、これまでは通常通り放送されていたのに、いつのまにか厳しくなったのはSNSの書き込みなどを通じて「否定的意見が露見」「拡散」するからである。今までも否定的な意見は電話や手紙などで番組宛に寄せられてきたかもしれないが、クローズドな情報として処理されてきた。それが今では全世界に個人が発信できるのが当たり前の世の中になったことで、ネガティブな意見が出ないような番組作りにシフトしていった結果が「コンプラ重視」の状況を生んでいるのである。簡単にいえば「問題が発覚しやすい世の中だから気をつけよう」という考え方でコンプラ重視の番組作りになっているのである。
しかし、コンプラ重視で自らの番組作りをがんじがらめにした結果が視聴者離れにつながっていることも忘れてはならないだろう。「地上波はつまらない」「YouTubeのが面白い」そんな意見が出てくるのも「コンプラ重視」の弊害なのかもしれない。

自らが起用を決めた来店者がトラブルを起こさないかどうか。その判断力も店長は求められている。

 

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