演者界隈ファッションリーダーとして虹キラ隊長に「パチンコ×ファッション」という新しい視点を聞く
2025.04.16 / その他ジャグラーアーティスト虹キラ隊長
ファッションを入り口に、パチンコ・パチスロを新たなカルチャーとして再定義する——そんな視点で進めている今回の特集の中で、虹キラ隊長は外せなかった。彼は来店演者という肩書きを持ちながら、同時にアーティストとしての態度を貫き、ジャグラーというコンテンツを通してこの業界に新たな視点を持ち込んでいる。その視点とは、ジャグラーをもっとポップにしていくことだ。

虹キラ隊長は、もともとアート活動をしていた人物。20代の頃「Chim↑Pom」というアーティスト集団の弟子筋にあたる「天才ハイスクール」の一員として、映像作品やパフォーマンス的な活動を行っていた。
演者になる前のアーティスト見習いだった頃から、思い描いていたことは本企画の趣旨と同じだった。
「パチンコ・パチスロって楽しいんだけど、なんかイケてない感じがあって、もうちょっとパチスロとかジャグラーはかっけえ感じにならないかなとずっと思っていたんです」

ビジュアルに対する強いこだわりは人一倍強く、色が好きで色彩検定も取得。Xの投稿でも、「自分の納得のいかないものは世に出したくない」と話す。来店活動の中でSNSに投稿する台データのスランプグラフ1つを撮るのにも、背景の色や光の反射を何度も調整し、画角内の色味を調整する。
ある時、プライベートで友人とマイジャグラーを打っていた際に、それまで出現させたことがなかった「おもちゃの兵隊」というプレミアム演出を発生させることができた。レインボーに光るゴーゴーランプをスマホで写真に収めようと思ったが白いTシャツを着ていたため反射してしまうのが気に食わなかった。自宅まではタクシーで20分の距離。急いで休憩を取りタクシーで帰宅し、白Tシャツから黒Tシャツに着替え、反射を抑えて撮影し直したこともあるほどだという。
そんな虹キラ隊長が信じて疑わないのは、「ジャグラーはポップで、世界に通用するカルチャーになれる」という可能性だ。彼にとって、ジャグラーは単なる遊技機ではなく、色味・形・キャラクターを含めた優れたビジュアルコンテンツであるという。
「くまのプーさんやポムポムプリンなんかと並んでも遜色ないと思っていて、ディズニーとかサンリオとかパチスロとか、一切の概念がない状態でどのキャラが可愛いかアンケートを取ったとしたら、僕は1:1:1に分かれると思います。ジャグラーにはそれくらい完成度の高いビジュアルがあります」と言い切る。
その美的感覚は、来店活動にも現れている。初めての来店時、彼が最初に行ったのは「ゴミ拾い」だった。
街中のゴミは全て俺のもん。
— 虹キラ隊長🌈✨a.k.a.Nijikila (@aira3haahoo) April 14, 2025
おはよう。お前ら。挨拶返せよ。#PR #ビックマーチ栃木本店 pic.twitter.com/wKT4VDTHOx
「来店演者としてデビューする時に、1発目のポストは絶対に注目されると思っていました。『今日はなになにが満台です!』とか言ってるのが気持ち悪くてやりたくなくて、だったら最初は好感度狙いで、まずゴミ拾いしてみようと始めてみたらこれが結構面白くて、ずっと続いています」
最初は打算的な考えだったが、続けていくことで注目を集められる。自分に注目が集まれば、自分が思い描いていたジャグラーがポップになる世界につながっていくと考えたのである。そこには、パチンコホールや演者という存在の“当たり前”を疑い、壊していくという彼の美術家としての思想が通底している。
「概念を壊す」
虹キラ隊長は取材の際に、この言葉を何度も繰り返し話した。現代アートを生み出したと言われているフランスの画家、マルセル・デュシャンの便器のエピソードを例に出しながら、「既存のルールや常識を壊すことでしか、新しい価値は生まれない」と語る彼は、X(旧Twitter)での発信もまた概念を壊すための行為だと位置付ける。
単に数字を伸ばすためではない、思想やアティチュード(※)を伝える場としてのSNSを認識している。
(※)attitude…態度、心構え、気持ち、考え、意見、姿勢、身構え
そのためのファッションも、虹キラ隊長の哲学の一部だ。配色のバランス、着心地、サイズ感へのこだわりは、日々の服選びに現れる。ホール景品で取ったツノっちキーホルダーをリュックにつけたところ、行きつけの美容師に「このサイかわいい!」と褒められた話を誇らしげに語る。

「これなんですよ。ジャグラーじゃなくて『このサイかわいい!』なんですよ」これがジャグラーがポップであるということを確信する出来事だった。

そんなオシャレに気を使っている虹キラ隊長にとって、現在のパチンコホールはどう映っているだろうか。
「僕はパチンコ屋はビジュアルの話だけでいうと十分イケてると思います。元々パチンコパチスロってちょっとイケてる時代があったと思うんです。でもそのかっこよさってポップ感ではなくアングラ感だった。でもこれからはそういう雰囲気ではないので、よりクリーンなポップな方に向かっていくと思います。もう少しカルチャー寄りになったりするには、発信する人も大事。ポップであるべきだけど、まだちょっとオタクというかコアすぎる感じ。演者界隈全体がそのようになる必要はないのですが、今話しているようなことを考える人が増えればいいなと思います」
すでにポップであるジャグラーが、さらに一般化された世界線にはどんなものが待ち受けているか。
「原宿にジャグラーショップができたり、おしゃれの最先端である渋谷PARCOとかにいるような人たちが、僕と同じようにジャグラーのグッズを身につけているような世界線です。今X使っているのはスピード感とか即時性とか利点があるからですが、やっぱりポップとかの領域ではInstagramが一番強いSNSだと思います。ジャグラーならそういう世界線でも活躍していけると思います」
彼の活動の根幹には、「好きなものを恥ずかしがらずに表現できる社会にしたい」という強い願いがある。

「自分の好きなものを主張すること。それを恥ずかしいと思う社会って、窮屈じゃないですか?」という彼の言葉には、肩身の狭さを感じながら遊技を楽しんでいる多くのユーザーへのメッセージが込められている。「僕が代表して、それを堂々とやっていく。それが市民権を得る一歩になると思うんです」
虹キラ隊長が目指すのは、演者という枠を超え、アートの姿勢でジャグラーを、そしてパチスロを、文化として昇華させること。静かに、熱く、彼は自らの存在で業界の〝概念〟を変えようとしている。

(PROFILE)
虹キラ隊長◎来店演者として活動する一方で、アーティストとしての視点から、パチスロ、ひいてはジャグラーを〝世界に通用するポップカルチャー〟として再定義しようとしている表現者。20代はアーティストとして映像作品制作に没頭し、SNSでは写真の光の反射や色味にまでこだわる徹底ぶりを見せる。「概念を壊す」ことを信条とし、ジャグラーの可能性をファッションやカルチャーとして広げていく挑戦を続けている。アーティストとして尊敬する人物は日直島田氏。自らの信念と直感に従って生きる姿勢に共鳴。SNSのフォロワー数3万人を目指すチャレンジを完遂し、さらに信頼関係を強めた。