年3万5000時間の深夜業務は「1分」単位の改善で削減できる

2021.03.04 / ホール

「スタッフを24時までに帰宅させること」を目標として、閉店作業を主とした業務の見直しで年間3万5000時間の働き方改革を達成した東和産業。細かい業務を洗い出し削減を積み重ねるのがコツのようだ。


首都圏を中心にパチンコ店30店舗を運営する東和産業(屋号UNO、DUO、FRESCO、ZORON、アサヒ)は働き方改革によって深夜業務時間を削減させることに成功した。現状、見込みではあるものの月間で約3000時間。年にして3万5000時間削減という壮大な成果となる。

昨年12月に「シンデレラプロジェクト」という名前でチームを立ち上げ、閉店作業を主とした業務の見直しを図り、全社で取り組んできた。この背景には、「深夜時間の削減」が同社での経営課題として明確に認定されるようになったことがある。

営業部の上條結香さんは、プロジェクトリーダーとなって本部(経営者)の想いを仕組み化し現場に伝えてきた人物であり、いわば同社の働き方改革伝道師だ。 

営業本部・プロジェクトリーダーの上條結香さんと経営企画室の湯本匠さん

「世の中の人手不足に重なり、コロナウイルスによるワークライフバランスの変化も相まって、かねてより課題であった深夜作業時間の削減が社内で課題になっていました」

また、JRなど鉄道各社が終電を繰り上げる発表をしたことも、プロジェクトを本格化させる追い風になったという。

業務をすべて〝棚卸し〟見直し項目は70以上にもおよぶ

働き方改革という言葉は従業員にとっては耳当たりの良い響きだが、言うは易く行うは難し。実現化させることこそ、最大の労力を伴うことになる。同社が働き方改革を成功させた最大の要因は、意識改革によるものが大きい。

上條さんをはじめとするプロジェクトチームは、ホール現場にヒアリングを行い、1分以上時間をかけている業務をまずはすべて〝棚卸し〟した。その項目数は、70項目以上にもおよぶ。それまで閉店後に行うことが当たり前と思い込んできた業務を翌朝に回したり、営業中に行うことで深夜帯の時間を圧縮したのである。

例えば、当日の売上金を計算して専用の金庫に保管する業務などは、回収のみ当日中に行い、それ以外は翌朝に対応するようにする。これだけでこの業務に関わる人物は30分ほど深夜業務を削減することができる。それ以外にも、翌日の営業を左右する設定変更なども、閉店後ではなく開店前に行うようにする。また、閉店後のゴミ回収も店内複数箇所にゴミ箱を設置していたため、時間がかかっていたところを、ゴミ箱自体の数を減らし、ゴミ回収自体は営業中に行うなどの改革を行った。

「どうしても店舗経験が長くなると、考えが凝り固まってしまいがちなので、あえて入社3年目などの若手社員もチームに組み込みました。すると、『この業務って当日やる必要ありますか』といったような、新しい視点での意見が出て、それらも積極的に採用するようにしました」(上條さん)

朝の出勤時刻を早めた店舗もあるようだが、それ以上に、70項目にわたる業務の棚卸しにより、業務時間効率を高めたことで、プロジェクトを成し遂げられた部分も大きいという。

不要だった業務をなくし、必要な業務を効率化し、深夜に行う必要のない業務を早朝に移すことで深夜残業は大きく削減された

コスト削減より福利厚生の観点、社員の意識変化が一番大きい

3万5000時間で端的に時給1000円で考えても、3500万円。さらに、22時以降は1.25倍増しの人件費がかかるため、年間約4000万円を超える削減金額となる。その分、翌朝に業務が回っているとはいえ、この深夜分1.25倍増しの人件費だけでもコスト削減としての効果は高いが、同社では福利厚生の観点でプロジェクトを推進。ただのコスト減という一過性の取り組みにしないためだという。

「早く帰るにこしたことはないので皆喜んでいます。『まだ店にいてもいいや』という意識から帰るという意識に変わったので、『次何が残っている? じゃあ自分がやるよ』と自発的に仕事を探し早く終わらせるようになりました。社員も自分の時間が持てるようになり、働く上で活力になると思います」(上條さん)

世の中の働き方やワークライフバランスに対する価値観は、常に変化している。「この業界はこういうものだから」と思考停止せず、進化を続ける企業に人は集まりやすくなるだろう。 

 

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