【ピデアな男】GINSEI/統括店長 神津 斎史
2025.08.15 / ホール長野駅前にある設置台数152台の小さなパチスロ専門店「銀星」。この店で、6月6日に稼働率100%を狙いにいき、見事実現させたのが、神津斎史統括店長だ。Xでは、コスプレ店長として、虎のマスクを被って活動をしている。神津さんの活動は、SNSの仕掛けなどに目がいきがちだが、実は非常に常連のお客さまとの「会話」を大切にするタイプの店長だ。人を見て、何をなすべきかを決める。その見極める力こそが、中小店でも大手に対抗できている理由だ。
「駅前だけは譲らないよ」と思って頑張っています。

PiDEA編集部(以下、編) 銀星さんは今、長野県内でパチンコホール3店舗を運営されているんですよね。
神津斎史統括店長(以下、神) 銀星は1968年創業。長野市で一番はじめにオープンしたパチンコ店です。パチンコ店以外だと、小麦の卸とか中華料理店とか映画館も経営しています。パチンコホールでは、長野駅前にパチスロ専門店の「銀星」(152台)とパチンコ専門店の「銀星NEO」(220台)、少し離れた三輪というところで併設店の「ニュー銀星」(281台)を運営しています。僕はその2店舗を統括する店長として頑張っています。
編 神津さんはもうずっとこの会社一本なんでしょうか。
神 僕は17年目です。中途入社なので歴史は浅いんです。諸先輩方に聞いた話によると、駅前はサラリーマンだけじゃなくて、地域の飲食店の方、県庁など公務員関係の方、 八十二銀行本店関係の方など、オフィスワークの方々がたくさんいて、かつては駅前だけで5店舗のパチンコホールがそれを奪い合っていたようです。
編 それが今となっては銀星さんだけですね。
神 「銀星」で若いパチスロのお客さまをターゲットとして、地域のお客さまでパチンコがお好きな方は「銀星NEO」で楽しんでいただいています。それぞれの役割があるということです。

編 銀星では6月6日に稼働率100%を達成したとのことですが、普段はどれくらいの稼働率なのでしょうか。
神 6月でいうと、23.4%ですね。今、「少ないな」って思ったかもしれないですが、これが長野市内だとパチスロだけなら17店舗中5位の稼働率なんです。長野県の中でも長野市が一番遊技人口は多いのですが、店の多さの割には少ない。そんな中で、マルハンメガシティ長野さんがずっと不動の県内1位です。
編 駅前と郊外とはいえ、距離は5kmもないので稼働の相関性はありますよね。
神 もちろんです。2023年4月に、グランドオープンされる時に、近隣の食堂さんから何からに「グランドオープンしますから遊びに来てください」と呼びかけをされてて、中小がやらないといけないことを大手がやっていたんです。僕はそれに感銘を受けました。僕たちも当たり前のようにそういうことをやらないといけないんだなと。ただし、「駅前だけは譲らないよ」ということで頑張ってきました。
編 規模は違えど、駅前独占というのは美味しい状況と言えるのではないでしょうか。
神 そうなのですが、反面、車ユーザーはちょっと来づらい状況なんですよね。提携駐車場探しが今の課題です。

編 神津さんはいつから店長業務を担当するようになったのでしょうか。
神 店長になって7年くらいです。
編 2018年、コロナ前ですね。その時の状況はどんなだったのでしょうか。
神 正直、かなり厳しい状態で試行錯誤していた時期ですね。ただ、うちの会社の良いところは店長権限が強いところです。社内では「部門経営者」という言い方をするのですが、店長は社長の代わりにお店を経営する役職者ということで、導入する遊技機を決定するのも、それを売ったりするのも店長の権限で決められます。多くのパチンコホールが基本的に粗利額を営業指標としていると思いますが、うちの会社は経常利益です。店長は、どうやって会社に1円でも多くのお金を残すのか、またそれが持続可能なものなのかに頭を使います。
編 なるほど。その状況で神津さんが考えた戦略はなんだったのでしょうか。
神 最初がスロ専の銀星だったので、とにかく稼働率を上げにいきました。インパクトを残すことが得意なので、店長を任されてから1年で経常利益520%を達成しました。
編 えぇっ? 売上ではなく経常利益でですよね。一体、昨対520%ってどういう状況ですか。
神 売上はほぼ100%でした。その中で経常利益を増やすということは、経費の改善を徹底的にやったんですね。粗利はもちろん多少はいただきましたけど、とにかく無駄が多かったんです。これを死ぬほど排除しました。
編 ちょっと教えていただきたいのですが、パチンコホールってそんなに無駄経費があるのでしょうか。
神 店内の清掃業務も外部委託していて、それ自体は特に悪いことではないのですが、誰も使ってないモップ1本で週に2000円くらい支払いがあったりして、調べてみたらこういうことが無数にありました。要するに売上と比べたら大した金額じゃないということで軽く判断されるものが多かったんです。
編 中小ホールにとって経費削減って効果てき面なんですね。
神 はい。ただ、経費削減というのはコロナとか外部環境が変わった時には通用しない方法です。僕はそこで挫折を経験しました。経費を削減しても、営業は今まで通りということは、お客さまを集めるための手法として機械頼りということです。それに気が付いたんです。それだと離反された時に戻す力はありません。「機械が弱いから営業が回復しない」を理由にすると、いつまで経っても地力は養えない。お店としてはどんな状況でも頑張っているので、まずはそれを知って、楽しんでもらわないといけない。それを伝える方法を考えた結果、僕はSNSにたどり着きました。WEB広告では、お金をかけるほど表示される大手には絶対勝てません。勝てるやり方を探すうちにXとか口コミなら戦いやすいんじゃないかなと。

編 それが身を結んで、今年の6月6日は稼働率100%を達成でき、自分にバンジージャンプという縛りを設けて、それもまた広告宣伝に使っていく。よく上手くいきましたね。
神 2024年の6月6日はYouTube広告、LINE広告、Ad広告なども調べて結構な販促費用をかけて実施した結果、全国19位の平均稼働率でした。ちなみに長野県で1位です。それを今年はさらに上を目指すべく、広告宣伝をX1本に絞って、その販促費を出玉に回してみたんです。稼働率100%を目指す→これに成功したら僕がバンジージャンプ飛ぶ。SNSでストーリーをつくったところがうまく刺さりました。100%を取るためにはどうしたらいいか綿密にシミュレーションをして、自分なりに方程式を組んで臨みました。
編 稼働率を上げるためにはストーリーも必要というのは、新しい説かもしれませんね。
神 もちろん大前提として、お客さまはパチンコ・パチスロが主体なので、僕がやっているコスプレやバンジージャンプだけでは来てくれません。僕に限らず、全国のパチンコホールの店長って、大なり小なり本当にいろんな仕掛けをしていると思うんです。でも、その仕掛けをしても見られなかったり、見られても面白いと思ってもらえなければダメだと思っています。「ここの店長ってなんかおもしろいことをするんだろうな」って常に思ってもらえないと、まずもってお店の選択肢に入りません。その楽しさを分かりやすく伝える方法がストーリーだと思うんですよね。
編 どんなことを伝えようとしてSNSを運用されていますか。
神 SNSのストーリーと、ホール内でのストーリーは微妙に違うのですが、特にホールでは、「この店なんか勝てそう」というのを意識していますね。僕のXを見ていないお客さまでも、なんとなく気付いてもらえるような。これが僕が狙っている駅前サラリーマン層に刺さっていると思っています。サラリーマンのお客さまが来店する時間に合わせてプロや専業に狙われづらい仕掛けをあえてつくっているのは、お店に来ていただければ感じ取ってもらえるかと思っています。あと、個人の見られ方でいえば「イカれてる」って思われたいですね(笑)。

編 今の所、編集記者の視点では、神津さんは全然イカれていなくて、むしろど真面目ですよ(笑)。
神 でも常にサラリーマンの方々をビビらせたいと思っています。「こんなちっさい店なのに〜」「なんにもない日にいきなり〜」とか、そういうのは突発的にやっています。また、僕はめっちゃお客さまと話をするんです。アルバイト時代からとにかく話していた。名前も全部覚えていて、この店でも1000人くらいは覚えています。この方はミルクティーが好きとか、なんの機種が好きとか、週に何回くるとか。お客さまの情報をデータベース化しています。また、それは自分一人で抱え込んでいても意味がないので、スタッフ全員と共有しています。
編 まだ真面目を振り切れていないです(笑)。
神 最近来てない人が他の店にいると聞いたら探しに行きますよ。
編 「またウチにも来てよ」みたいなことを言うんですか。
神 いや、声かけて連れて帰ります。
編 あー、それはイカれてるかも(笑)。
神 毎日は来れないけど、好きな機種があるお客さまがいたとして、その人が来そうな日にピンポイントで逆に狙いにいったりします。そういう方を戦略的に増やすには、ストーカーというと聞こえは悪いんですが、それくらいお客さまへの興味が尽きないということです(笑)。編 そういう狙いもあったんですね。
神 しつこいくらいお客さまとは会話をしますからね。その人の人生の背景を探って、これだったら喜んでもらえるかなとか、こういう人たちのためにこういう仕掛けをしたいなって。お客さまの中には、銀星のロゴが入った誕生日ケーキとかをつくって食べるご家庭もあるみたいで、そういうお話は嬉しいですよね。

編 ある意味、やりすぎエピソードだったかもしれませんが、上司から止められたりはしないのでしょうか。
神 上司から怒られるなんてなんとも思っていないですよ。逆に食ってかかります。「なんで止めるんですか。絶対にうまくいくはずなのに」って。役職が上がるにつれて根回しが重要だというのは分かりますけど、その分スピードは遅れるし、その日生まれたエピソードが拾えなかったりしてしまいます。お客さまを喜ばすためだったら、僕が怒られるなんて大したことではないです。結局、説得力があるのは数字なんですが、最終的に人を動かすのは熱意です。知識は勉強すれば学べますが、熱意だけは学べない。そう思っています。
