【ピデアな男】ワンダーランド1188大刀洗店/店長 村木智美
2025.07.20 / ホール朝倉市というエリアは、福岡市と久留米市の狭間にある独特な商圏だ。ワンダーランド1188大刀洗店があるのは、そんな朝倉の中でもさらに“地元密着”色の強い大刀洗町。店のすぐ先には田畑が広がり、決して人通りの多い立地とはいえない。にもかかわらず、同店は隣接するMEGA FACE930朝倉と真っ向からぶつかり、1億円規模の“撃ち合い”を演じた。その中心にいたのが、村木智美店長。確かなロジックと感性で結果を出すその手腕に迫る。
「勝つまでやる」とは相手でなく、昨日の自分に勝ち続けることです。

PiDEA編集部(以下、編) 村木店長は今おいくつなんですか。
村木智美店長(以下、村) 44だったと思います。歳を数えることを忘れるくらい仕事に打ち込んできた自負があるということです(笑)。
編 店長になるまでは早かったですか。
村 入社してから6、7年くらいで店長になり、そこまでは早かったです。タイラベストビートって社内研修がたくさんあって、営業管理だけではなく、マネジメント研修とかいろいろありました。自分を磨くことが好きで、そういうものに積極的に参加していたんです。根の性格が負けず嫌いなので、たくさん勉強をして、持っている知識に自信を持てるように研さんしてきました。
編 昔からそのメンタルだったんですか。それとも会社に入ってから磨かれた感性だったのですか。
村 負けず嫌いは生まれつきですが、どちらかというと研修をたくさん受けることで磨かれていった感性かなと思います。教育制度も自己申告制で、自分が受けたいと思ったものは片っ端から受けました。負けず嫌いな性格が功を奏して、自分の人間性を高めていくきっかけになりました。
編 なるほど。それがキャッチコピーとして掲げている「勝つまでやる」につながるんですね。
村 あれはそもそもが、相手に勝つというよりも自分自身に勝つまでやるという意味です。毎日が新たな刺激を受けて成長することで、前の日の自分に勝ち続ける。どこかのお店という意味ではないことだけは触れておきたいです(笑)。
編 奇しくもこちらがリニューアルオープンされた日が、MEGA FACE930朝倉のグランドオープンと同日でしたね。リニューアルの際に増台されたようですが。
村 このエリアはタイラグループのお膝元であり、譲れない場所でもあります。MEGA FACE930朝倉さんと対峙するにはすべてを上回っていくことは重要でした。PSの比率を変え、パチスロを増台する戦略にしました。
編 やはり同エリア内で目立つ2店舗なので対立構造のように取り上げられることが多いと思いますが、実際のところどうなのでしょうか。
村 この戦いって特定2店舗の対立というより、地域の商店とか近郊の他のホールも巻き込んだものになっていて、このエリアに足を運ぶきっかけになっていると思っています。稼働率でいうと、あちらの方が上ですが、集客数では規模で勝るこちらです。

編 ではまだ決着は着いてないと。
村 今の数字をどうみるかですよね。本当はもっと引き離しているのが一番いいけど、今の状態でこれくらいなら十分。相手は福岡でいうところの優良法人さんなので、第一弾目としては良い流れできていると思っています。
編 ゴールデンウィーク期間中はすさまじい“撃ち合い”でしたね。大刀洗店としては、演者戦略が目立った形かなと思いますが、お考えを聞かせてください。
村 お客さまが天秤にかけたときに、やっぱりグランドオープンとリニューアルでは響きが全然違います。天秤をこちら側に傾けるには、やはりある程度の重りが必要です。そこで、地域のお客さまで、なおかつ普段パチンコ・パチスロ以外のYouTubeに触れる機会が多いユーザーをターゲットに来店系の企画を活発化させました。
編 どのような方々を招致しましたか。
村 バン仲村さんとかノッコン寺田さん、希島あいりさん、義英真さんとか、パチンコ界隈でいうと阿波みなみさんとかいそまるさんとか。各ジャンルで名を馳せている方をローテーションで来店してもらいました。幅広くターゲティングした状態なら、一回はあちらに行ったとしても当店にも行ってみようかなと思うはずです。

編 その結果、弊社記事でもタイトルにつけましたが、1億円の戦いになったと。
村 多分この業界の中でも、こんな合戦はなかなか体験することはないんじゃないかなと思いますし、自分でもこんなのは業界人人生で2度とないと思います。今も続いてるんですけどね(笑)。
編 この戦いから一旦離れて考えてみたいのですが、元々村木さんのつくりたいお店ってどんな店なのでしょうか。
村 毎日何かしらの発見があるお店が面白い店だと思っています。「こんなところに」「こんな日に」といった驚きが毎日の営業にあるからこそ、お客さまは飽きずに「今日はこういうことしてくるんじゃないか」と想像して楽しんでくださるのだろうなと。
編 ということは、今も毎日こだわりがあるんですね。
村 毎日に必ずコンセプトがあります。コンセプトがない日が逆にないです。営業というのは点じゃなくて線でつながっているので、「今、店長の方向性ってこういう傾向なのかな?」というのは通っていたら分かるかもしれません。ポップとかなにかしらの法則性をもって時期を見て戦略を変えていて、お客さまが求めていることを突き詰めていくと、毎日コンセプトがあるということになるんですよね。

編 村木さん自身はよく打ちますか。
村 自分ではたまに打つだけなので、むしろよく打っている人の話を聞くようにしています。ホールに出るのは管理の面もあるけど、お客さまが何を求めているかを肌で知ること。早い番号の方が着座していった順番、次に座る機種、データだけじゃ見えない情報がホールにはたくさんあります。そういう話もできるだけ詳しくコミュニケーションの中から摂取するようにしています。僕自身の人間性っていうのはそんなになくて、自分はいろんな方の人格の集合体という感覚です。
編 珍しい表現をしますね。意識が高いというか。
村 「負けないためならなんでもやる」とか「自分が勝利できるような戦いしか挑まない」というのがどちらかというと近いかもしれません。だから、たまにキングダムの桓騎(かんき)将軍に似ているねと言われます。
編 自分のどのあたりが桓騎将軍っぽいなと思いますか。
村 なんだろう。例えば、データ公開もあえてやっていないのですが、当店にとっての最終的なエンドユーザーはどなたなのか。ちゃんとそういう方に届けたいと思ってやっているので、すべての手札を見せないようにしています(笑)。
編 ちゃんと勝算を立てて、勝てる勝負しかないように仕向けていくところが桓騎っぽさなんでしょうね。そういえば、SNSもやっていらっしゃいますが、顔出しはしないのですか。
村 元々Xは三潴店でもやっていたけど、今回1188という屋号をつけて宮崎の次の事業としてワンダーの二大事業となりました。僕も自分の色を前面に押し出すべきなのか考えて、今回は自分色を強くしないということで出さないことを選択しました。
編 自分色を出さない理由は?
村 SNSって基本的には知ってもらうためのツールだと思っています。この店が培ってきた力って地域住民の皆さまとのコミュニティーであり、そこにブーストをかけていくのがXです。僕個人の求心力を載せるための事業ではなくて、大刀洗店が何をしたということにフォーカスされるべきだと思っています。

編 スマイスの曲も話題になっていましたよね。
村 あれは「スマイスいるか?」といった批判が一部ありましたので、そのアンサーとして科学の力(AI)を使ってつくりました。僕らの思いを乗せていますし、僕が何を考えているかは、聴いてもらえれば分かってもらえると思います。
編 AIも使いこなして常に進化、バージョンアップしていますね。
村 これも研修の成果かなと思います。例えば、Z世代の方々と接していくのは僕らの世代からすると変化が必要です。自分を変えることができるようになったのは研修のおかげです。今まで営業では玉やコインがあるのが当たり前だったのにそれがなくなってきています。過去の自分では考えられなかったような変化が今、実際に目の前で起きていて、この変化をどういう風に自分の持っていた知識と融合させるのかは今の時代の必須のスキルだと思っています。
編 そういう意識の高い村木さんだからこそ聞いてみたいのですが、お店の目標はどこに設定していますか。
村 一番大切にしなくちゃいけないのは、この地域にいろんな方々が足を運んでもらえるきっかけづくりになるお店にしたいということです。その中で、なんでもまずはやってみる。流用できそうなものは流用する。AIが主流ならそれも活用します。でも、そういうことをやってないお店がほとんどです。新しいことにチャレンジして、どう自分に落とし込めるかを常に考え続けています。
編 村木さんに、この素晴らしいマインドを植え付けた方がいるんでしょうか。
村 齋田部長という上司に言われて心に残って今でも大切にしていることがあります。「成長するかどうかなんて、誰と出会ったかだからね」と。巡り合わせが悪くて、常に自分と同じような価値観の人といるのは心地良いです。でも、違う価値観に出会うのは自分にプラスでしかないと思うんです。過去の自分だったら心地良いところにいたかったけど、自分で進んで心地悪いところにわざわざいくようになりました。それで傷つくんですけど、そこで負けず嫌いが発動して自分の知識にしていく。僕はすごい学歴があるわけではないからこそ、常に学びを続けていかないとと思います。

編 村木さん、店長やっていて楽しいですか。
村 めちゃくちゃ楽しいです。明日どうするか考えている時も、結果が出た時も。ただ、一方で使える手札が多すぎると逆に面白くないんだなとも思っちゃいました(笑)。限られた資源の中でどう楽しませようかなと考えている時の方が好きですね。
編 贅沢な悩みです(笑)。
村 本当に(笑)。でも他の店舗にいる時は「資源の多い店舗は羨ましいな」と思っていたんですよ。不思議ですよね。
