【ピデアな男】ABC浜松天竜川駅前店/店長 西尾 拓馬

2025.11.16 / ホール

自己評価的には今すぐにでもエリアマネージャーくらいやりたいところですが、まずは選ばれるよう、このお店のランキングを上げること。

あとは大型店の経験も積むこと。 

今、浜松市場は1000台を超える大型店がひしめき合っている。自社競合もしている苛烈な環境で、総設置台数560台のABC浜松天竜川駅前店は昨対比の売上伸び率がABC33店舗中1位となった。その店を任されているのが、マンガン店長というアカウント名で知られている西尾拓馬店長だ。ABC内でただ一人店長を名乗ってSNSを運用し、流動層の獲得に狙いを定めた。何が正解かは分からない一寸先は闇なホール運営で、自分なりに仮説を立て、小さいながらも奮闘して店を成長させていく。ABC最年少店長として、難しいミッションをこなしている西尾さんの考えを聞いた。


リプのやりとりをする中で、私のことを「育てている」みたいに感じてくれたらいいなと考えてやっています。 

PiDEA編集部(以下、編) まずは西尾さんの業界歴を教えてください。

西尾拓馬店長(以下、西) 2010年3月入社なので業界歴は15年です。現在38歳です。新卒で入社しました。工学部出身です。

編 工学部ではどのような学問を専攻されていたのですか。

西 簡単に言うと光触媒の勉強です。光合成によって反応することで室内の空気を清潔に維持できる素材の研究をしていました。

編 そんな方がパチンコホールへ就職というのも珍しい。

西 元々ABCの顧客だったんです。大学生の時に学業とは別で、遊びとしてパチンコや麻雀と出会いました。研究も頑張りましたが、自分の職にするのは楽しめることにしたいなと思ったんです。なのでABCだけではなくメーカーも就職活動をしたりしていました。大学4年の後半にはABCでアルバイトもしていたので、その当時の店長から「ABCならメーカーと関係のある仕事もできるよ」とアドバイスをいただき、最終的にホールの営業で数値を追っていくことを目指すことに決めました。 

編 西尾さんといえば、マンガン店長というXアカウントを運用されていますが、いわゆる○○店長というアカウントはABCでは西尾さんだけですよね。

西 そうなんです。今から2年半くらい前に、ABC韮崎竜岡店という店で初めて店長になりました。その店長になったタイミングでマンガン店長としてデビューしたんです。

編 当時、山梨あたりでは珍しかったですよね。

西 静岡も山梨もあまりなくて、それこそ都心でマルハンさんがやり始めているくらいでした。当初は希少性もあり、自分の人間力を外部に発信できるチャンスだと感じていたんです。

編 営業ツールとしてではなく、人間力を発信するツールですか。

西 営業用途としてはありきたりだなと思っていましたし、店舗アカウントは山ほどあったので、営業案内より店長の人間力とか自分個人の考え方を発信できるツールと思って始めたんです。 

編 当時35歳ですかね。店長になりたてでXの運用も初。先駆者として新しいことを始めてきたんですね。ちなみに最近行っている新しいことはなんですか。

西 最近取り組んでいるのは地域交流です。浜松市ってお祭りが盛んで5月の「浜松まつり」や「秋祭り」など力を注いでいる文化がたくさんあり、そこに寄付をしながら自分自身も積極的に参加するようにしています。

編 普通そういう寄付活動って会社マターな感じがしますが、西尾さん発信でやっているんですか。

西 はい。私からの発信で「やりたい」と会社に伝えました。ABCって三方良しの文化が根付いていて、世間良しのところが地域のお客さまです。Xだけをやっていると若年層や流動層の方ばかりが反応してくださいます。それは悪いことではないのですが、出玉や営業内容しか見られないことも多い。そういうことだけではなく、近いからとか何でもいいのですが、この店長がいるからということを集客の要素としてやっていきたいんです。それを体現するためのアクションとして地域交流に力を入れています。

編 Xでもお祭りに参加してスピーチをする後ろ姿を公開していましたね。あの時は顔出しをしていなかった。

西 顔出しは今回の取材が初になりますね。それなりの覚悟をもってインタビューに臨んでいます(笑)。 

 編 ご自身の優れているところってどんな部分だと思いますか。

西 最初私の武器だったのは分析力でした。そこを評価されて副店長に抜擢してもらえたのは自分の強みと認識しています。店長になってからはXの発信力、企画力、提案力、実行力の4つです。特にコロナ明けで、人と人のつながりが疎遠になって、人間らしい関わり合いがなくなってしまいました。そういう時期を経たからこそ、改めて人と人のつながりは大事だなと痛感するようになったんです。痛感したなら、じゃあこれを自分の武器にしていこうと。

編 結構マンガン店長の人柄は正直でお客さま思いで、仕事熱心という印象ですが、昔からこのスタイルですか。

西 韮崎竜岡店の頃は、新米店長とうたっていたので、フォロワーの方がアドバイスをくれたりしていました。中には「パチンコホールの店長って『怖い』とか『怪しい』ってイメージだったけど、こんなに人間性を出してくれる人もいるんだ」という反応もいただきましたし、そういうリプが一番ありがたいです。ここを大切にしていて、他の店長にはないマンガン店長の強みがリプとかで、手応えを感じている部分です。リプのやりとりをする中で、私のことを育てているみたいに感じてくれたらいいなと考えてやっています。

編 そうしたおかげもあって、ABCの中では昨対比で業績の伸び率が1位になったとお聞きしました。

西 ありがたいことにABCにおける店舗のランクもかなり上げることができました。今、浜松市の市場は大型化がとても進んでいて、コンコルドさん、楽園さん、マルハンさんなど、ものすごい店がひしめき合っている市場です。この中で生き残っていくには、大型店から少しずつお客さまをいただくしかないと、若年層を集める取り組みを2024年12月くらいから始めていました。それが「取材」だったんです。 

 編 いわゆる商材としての「取材」ですか。

西 はい。今まで一切やってなかったのですが、社内の店舗ランクが上がったこともあり、4月にパチスロを増台してリニューアルもあったのでようやくできるようになりました。

編 成果のほどは。

西 私が着任する前は、並びが最大で100人くらいでしたが、「12月に初めて取材をやります」とXで配信して、200人の集客力。8月10日の周年日では立体駐車場が初めて満車になって、8時には500人打ち切りとすることができました。お店として集客力が上がったのは成果の1つでものすごい嬉しいですね。ただ、そこに至るまでにいろんなトラブルがあったんです。

編 取材を喜ばない層もいたのではないかと予想します。

西 その通りです。普段ガラガラだった店に上手い若いお客さまがあふれて、ジャグラーに年配のお客さまが座れないみたいな声もありました。常連さまの生の声を聞いてみると、取材を乱発するのはいけないなと思わされました。なので、常連さまを大切にする行動や姿勢をちゃんと見ていただいて、プロに食われないような配分にもしますし、入場ルールに関してもそれまでは人力だったところをカメラ付きの抽選機に切り替えて、打ち子ひき子対策もしたり、繁盛店をいろいろ勉強してノウハウを取り込んでいきました。1年で大きくお店は変わりましたが、スタッフたちも死にものぐるいでついてきてくれました。

編 西尾さんが武器とする人間力は、スタッフさんたちを巻き込む力にも表れていそうですね。

西 自分1人の力には限界があります。私は店長としての役割を全うするから、みんなも個性を出して1つのチームで頑張っていこうと常に話しています。

編 「取材」の話に戻りますが、お店の見られ方も変わったのではないですか。

西 天竜川駅前店を知らない人たちにも興味を持たせられるようになったかなと思いますね。初めての来店の際にも、紆余曲折がありました。

編 プロの雀士の方を呼んだ時ですよね。

西 はい。9月に初来店があったのですが、そもそもマンガン店長を始めたのがパチンコと麻雀の親和性が絶対にあるということに着目したからです。初来店の際に絶対に地域密着型の方か、麻雀関連の方がいいなと心に決めていました。 

 編 その理由は?

西 来店が当たり前になっている状況で初来店となっても目立ちません。だからお店として表現する必要があったんです。そうしたらたまたま本社から「こういう案件があるよ」と話をいただき、麻雀プロの方にお越しいただくことになりました。ABCの他の店舗では実施されていたのを見ていて、いいなと思っていたのですが、「お店的にまだできないでしょ」と言われたりしていたんですよ。

編 それは悔しいですね。

西 ずっと言われ続けてきました。「普段の営業がガラガラじゃん。点の営業じゃん」と今でも言われます。たしかにそれは店長としても改善していかなければならないので、なんとかして見返していきたいなと(笑)。

編 今は中型店ですが、いずれは大型店で大きな業績を動かしていくこともビジョンとしてはあるのでしょうか。

西 もちろんです。今やっていることが大型店なら、さらなる上昇曲線を描けると信じてやっています。たとえ点の集客だったとしても、それ自体は武器の1つになります。もし、社内でそういう話があれば、積極的に手を上げたいなとは思っています。

編 今稼働はどれくらいなんですか。

西 具体的には言えないのですが、私が着任する以前は33店舗ある中でも下位の稼働率でした。それが一時期は真ん中くらいにまで上げることができました。昨対比で上昇率は1位です。

編 この競合が激しいエリアでよく流動層を引っ張れましたね。

西 そこはユーザーが反応するようにずーっと仕掛けをやっていました。もちろん空振りもたくさんしてきました。それでも「自分はこういう考えでやっているよ」という無言のメッセージをずっとやり続けてきたんです。それをデータを見てXで拾ってくださる方もいたりして、口コミプロモーションが活発になっていきました。

編 取材や来店って、やるお店とやらないお店で評価が180度違うじゃないですか。今まではやってこなかったわけですが、考えは変わりましたか。

西 そうですね、私はやるべきだと思うようになりました。ただ、乱発したりやって当たり前のようになってしまうと日常と変わらないので、特別感は大事にしたいと思っています。初来店時から地道な活動もしていたんです。

編 地道な活動と言いますと?

西 店内に貼るポスターを近隣の雀荘などを巡って貼ってもらったりしたんです。近くの麻雀系のインフルエンサー店員さんで、ホール来店などもされている藤田みささんという方にもご協力いただいたりしました。麻雀関連で次の目標は、Mリーグに進出することです。

編 個人的に出場するということですか?

西 それもいいですね(笑)。できればABCでチームを持ちたいです。少なくとも協賛はできるので、なんとか5年以内には実現したいなと勝手に思っています。

編 今、このお店に着任してからはどれくらい経ちますか。

西 1年半くらいです。

編 もうやりきったなという思いなのか、まだまだやりたいことがたくさんあるのか。どうでしょうか。

西 まだまだやりたいことはあるけど、どんどん次のことにチャレンジしたい気持ちもあります。大きなお店とか。

編 そのためには何が必要ですか。

西 結果や実績ですね。自己評価的には今すぐにでもエリアマネージャーくらいやりたいところですが、まずは選ばれるよう、このお店のランキングを上げること。あとは大型店の経験も積むこと。店長の力はお店が大きければ発揮されるってわけでもないですが、それこそ影響力とか集客力がより求められるようになるし、設定もいっぱい入れられるようになります。

編 ABCでいえばどの店舗を経験したいですか。

西 大型店や、もし新店ができるのであれば絶対やりたいです。挙手制で決まるならいいですが、選ばれないといけません。 

 編 自分に足りないことは何だと思いますか。

西 アクセルを踏みすぎちゃうことがあるので、利益コントロールの部分です。もちろん、そのおかげでお客さまが増えているところもあるのですが、パチンコホールはそれだけじゃ成り立ちません。出せば集客できて当然。抜けば会社が潤うのは当然。その相反することの両立。顧客と会社が双方喜ぶようなものは追求したいです。ABCで唯一無二の存在でいたいなと思いますが、まだ会社から求められていることは成し遂げていないのも事実。そこはしっかり受け止めています。

編 西尾さんって、自己肯定感が強くていいですね。

西 もっとできると思っています。足りてないところはあるし、不安なこともあるけど、やっぱり応援してくれる人がいるとか、守るべき部下がいるのが大きいです。その人たちのためにも自信にあふれた店長でいたいですよね。正直、集客力の分野では社内イチだろうと思っていますので、早く大型店でチャレンジさせてほしいです(笑)。 

 

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