【ピデアな男】DSG MEGA WORLD/店長 石井 宏昌

2025.12.24 / ホール

大袈裟なことをいえば業界を変えたいですよね。

自分が店長を目指していたのはイメージを変えたいというところからでした。

この誤った見られ方が遊技人口が減っている要因じゃないかと思っています。 

石川県野々市市に本社を構えるDSGグループ。全12店舗あるうちの旗艦店が、今回取材をした金沢市にあるDSG MEGA WORLDだ。今年7月に設置台数の増加など大々的なリニューアルを行い、業績面でもグループ内の最重要な店舗となった。その店を任されているのが、業界歴17年の石井宏昌店長だ。ある意味でデータ公開時代ともいうべき昨今の情勢の中で、グループ全体でデータ非公開店舗を貫く。それでも地域内では圧倒的ナンバーワンポジションを獲得できているその背景にはどんなカラクリがあるのか。詳しく話をうかがった。


 

いや、むしろアピールしません。

アピールもしないし、来て、打ってもらった人だけが気付くようにしています。

その積み重ねです。

PiDEA編集部(以下、編) 石井さんのこれまでのキャリアを教えてください。

石井宏昌店長(以下、石) 入社が平成20年で、今年で17年です。店長歴でいうと9年になりますね。今年7月にこのDSGMEGA WORLDがリニューアルをした際に赴任しました。

編 どのようなリニューアルだったのでしょうか。

 総設置台数が1027台だったところを増台して1363台に。主にパチスロを増やしました。これまで最大設置数だったDSGアリーナ野々市店よりも台数が上回り、県下最大級となりました。

編 このDSG MEGA WORLDはグランドオープンしてからは何年くらい経つ店舗なんでしょうか。

 2009年グランドオープンです。古い設備も残っていましたが、今回を機に増台だけではなく、島や絨毯など、お客さまの目につく部分はほとんど一新しました。せっかくいい設備でやらせてもらっているので、なるべく店内はごちゃごちゃせず、シンプルに仕上げています。

編 DSGグループの中で、DSG MEGA WORLDという店舗はどのように位置づけされていますか。

 台数規模だけではなく、業績的に見ても間違いなくDSGを代表する旗艦店は当店という自覚はあります。よく上司からも言われるのですが、「DSG MEGA WORLDの印象で会社の印象も変わるから、そういう自覚をもって臨んでほしい」と。絶対にここはこけられないという気持ちでやっています。

編 今まで店長として経験してきたのは大型店ばかりですか。

 1つ前は野々市のDSGアリーナでしたが、パチスロ専門店や中規模店も経験してきました。

編 やはりグループ内の旗艦店を任されるということは、グループ内でもエース格の店長ということですよね。

 店長に上がる前、自分は割と早く役職に昇進させていただいたりしてきましたが、今自分が飛び抜けて能力があるわけではなく、将来が見込めるならチャンスを与えてくれる会社なんですよね。店長に上がったばかりの頃を思い出してみると、自分的にも能力不十分かなという感覚があったのですが、それでも店舗を任せてもらえます。DSGという会社は、新人店長だとしても、旗艦店を早めに経験させてくれる会社なんです。 

 編 ただ、店長になりたてで大型店というのは結構大変ではないでしょうか。

 そうですね。振り返ってみると、最初は大変だったと思います。店長になったら仕事も全然変わりますから、最初はそれにものすごく戸惑いました。ホールの主役って、店長ではなくホールスタッフやプレイヤーの皆さまです。だとすると、店長がするべきことは部下のマネジメントが一番大事だと思っています。なんでもかんでも店長がやるんじゃなくて、周りにやってもらう、人を動かす。もちろん「自分だったらすぐできるのにな」と感じることもたくさんありました。当然、店長自身もやることがたくさんあります。自分のことに集中しすぎて、気付いたら部下と距離ができたりとか、うまくいかない時期もありました。

編 そうなんですか。お客さまはもちろんそうなのですが、ホール内部の話に限れば主役は店長じゃないかと思い込んでいました。

 それがまったく店長が主役ではないんですよ。自分だけできていてもお店は良くなりません。先輩店長のお手伝いで系列店の事務所に行った時、店長と役職者で明日の営業に対して意見を言い合ったりしているのを見ました。その時に、店長は店長でしっかりその助言を受け入れていて、風通しの良い職場だなと思ったんです。同時に、「自分の店じゃこんなのないな」とも。誰も意見も言わない。みんなイエスマン。部下が使えないんじゃなくて、自分が正確に指示を出せていないことに気付いたんです。自分がやるんじゃなくて、周りにいかに伸びてもらうかが店長として一番重要なんだと思わされました。それが最初は難しかったのですが、今は意識して部下とコミュニケーション取る時間をつくったり、良い意味でなるべく暇にするようにしています。何もないから、ホールに出て様子を見たり。何かエラーがあったとしても、ある程度暇だったら気付けるものなんですよね。 

編 その時間の作り方もぜひ聞かせてください。石井さんのようなやり方は理想的ですが、店長ってそんなに仕事がないわけじゃないですよね。

 それでいうと、営業をしてない時間帯に自分の仕事に集中するようにします。営業中はなんでも気軽に話を聞けるよう、あんまり詰め込みすぎずに余裕を作っておくこと。

編 たしかにその方が意見を言いやすかったり話しかけやすいですね。ところで、DSG MEGA WORLDでは出玉データを公開していませんよね。この方針を、現場としてどう受け止めていますか。

 出玉データ公開は今の時代非常に便利なツールだと思っていますが、すべての年代のユーザーが利用するわけではなく、若者中心のツールだと思っています。データを公開するかどうかは、当然そのホールが置かれている環境にもよると思いますが、当社は地方の企業で、お店も郊外店ばかりです。そうした中で、会社としてどういう方に常連になってもらいたいかを考えると、基本的には年配の方なんですよね。その方々にとって、そこまでデータ公開は必要とされていません。だからメリットを感じていないので、データ公開をしないということです。 

編 そのようなお考えだと、むしろデータ公開をすることのデメリットがありそうですね。

 パチンコ店も商売ですから、あんまり良くないデータになる日もあります。それだけを見られて、悪い印象を持たれ、来店動機にならないこともあると思います。出張に行った時は、新宿やら大阪のなんばやらに行くと、ものすごい客層が若いですよね。そのような、店長のSNSの言葉1つだけですごい反応があるような、ライバル店まで歩いて行けるような市場であれば、データ公開はした方がいいと思います。個人的な考えですが、情報戦略を積極的にやらないと負けるエリアならデータ公開は賛成というスタンスです。ただ誤解のないように付け加えると、会社から言われたから「はい」と従っているわけではありません。意見は言おうと思えば言える会社ですので。

編 情報戦が昨今の主流の中で、どうやって「伝わる店づくり」をやっているのでしょうか。データ公開なしで集客できる理由が知りたいです。

 当たり前ですが、地域一番店に配属されるか二番店に配属されるかで営業のやり方は変わります。「海大事です」「ジャグ大事です」という王道のやり方を二番店でやると体力勝負で勝てなくなります。二番店、三番店でやるなら差別化しかありません。幸いなことにDSG MEGA WORLDは地域一番店なので、取るべき戦略は差別化の逆、つまりミート戦略です。競合店が強化したいことが見えれば、なるべく当店も合わせていきます。スタミナがある分こちらが真似していく感じです。地域一番店だったら真似すれば勝てます。近隣で、「これをやりたい」と思っていることをしっかり見定めて、台数も出玉の力も合わせていく。当店になくて、競合店にあるものをすべて打ち消していく。これらの地味な積み重ねを配属になったタイミングでしているところです。 

編 改めて言語化していただくと、一番店が取るべきオーソドックスな戦略ですね。

 お客さまの期待されている日や、お客さま同士でさまざまなホールの情報交換をしている方は多いと思いますが、その中でもどこにも期待できないという時はどうしてもあります。こうした時に「週末どこ行っても一緒じゃん。ならDSGMEGA WORLDでいっか」と言ってくださる方の数を結構重視しています。消去法だとしても選ばれるのはすごく大事なことです。

編 新台がかなりそろっているようにうかがえますが、消去法でも選ばれるコツの1つなのでしょうか。

 何も注目されてない日にこっそり設定が入っているような体験は意識してつくるようにしています。「土日どこも出んやろ」と思われているとしたとしても、最終的に選ばれる店づくりをする。これを続けていくと週末とかそういうタイミングで差が出てきます。

編 それはアピールするんですか。

 いや、むしろしません。アピールもしないし地味に、来て打ってもらった人だけが気付くようにしています。その積み重ねです。 

編 最終的に選ばれるってことは、それが伝わっているということですよね。騒がずに伝え届けるのが、まさに極意。

 出し方も馬鹿正直になる時と駆け引きする時と両方ありますよね。あんまりインパクトとして伝わらないかもしれないけど、プロに狙われ放題という日もありますし。駆け引きするけど全体的に出ていたねという日もありますし。ある意味で専業の方々とうまく付き合っていかないといけません。

編 DSGさんのプロ対策って結構厳しく対応されていると思っていましたが、石井さんの言葉では「うまく付き合っていかないといけない」とあります。実際のところどうなんでしょうか。

 プロの方だけに還元するつもりはありませんので、出禁などもそこまで激しくはやりません。ただ、今って情報に鋭い一定数の若い方にだけ狙われるみたいな店が稼働が飛んでいると思うんです。狙われて、出して、常連の方がありつけなくて、平日が痩せ細って強い日が弱くなっていく。一番やばいのが「今から出しまっせ」とアピールしても反応されない状態です。そうなってしまったら末期で、立て直すにも限界があります。だから、情報に鋭い方が反応できるようにしておかないといけない。でも、その方々だけに還元するのではなく、うまく読まれないような日をつくる。馬鹿正直にやるのはよっぽどの時だけ。それはネットでも拡散されるので、いい宣伝日だと捉えておけばいいんです。 

編 実際、DSG MEGA WORLDでは、出る時はどれくらい出るんですか。

 グランドやリニューアルオープン以外だと、パチスロでマイナス500万円はちょこちょこありますよ。

編 まさに放出ですね。すごい。

 例えばの話ですが、1機種だけ出すとかの日があったとして、そういう日はデータ公開もしないお店なので、誰から見ても「出てるな」という感じにしないといけません。店全体ではそれなりの出玉だったとしても、お店側の用意があれば、その台にありつけなかったとしてもお客さまは納得していただけると思うんですよね。どれだけ出したかというより、その日、納得感があったかどうかということの方が大切なのかなと思っています。1日ドーンと出す店って石川県内でもたくさんあるんですよ。でも一生は続きません。どんな企業であっても、体力には限りがあるのが実情ですから。

編 稼働の山をつくるというのはセオリーですが、山の時に競合店にお客さまが流れても、次の日には戻ってくる店づくりというのは強いですね。

 特日以外のベースがどれだけあるかが勝負だと思っています。

編 昔から強かったのですか。

 リニューアル前は稼働自体は野々市の方が高かったですよ。もっと前、16年前にオープンした時なんかは全然でした。今でこそ平日でも600人ちょっとは入りますが、300人いかないくらいなのが普通でしたから。

編 その形勢がいつ頃から変わり始めたのでしょうか。

 ブログなどの全盛期の頃だと思います。今の常務が店舗の管理者だった頃に、企画とブログを使って仕切り直しました。それこそ勝つにはとにかくむちゃくちゃなインパクトが大事でしたから。

編 元々は大将軍という系列でしたよね。今はDSGで統一されていますが。

 今から24年前、片町店がグランドオープンした時からDSGという屋号で展開されました。そこから既存店舗を徐々にDSGとしてリブランドしていったんです。

編 石井さん今おいくつですか。

 41歳です。

編 何か夢とかってありますか。

 大袈裟なことをいえば業界を変えたいですよね。自分が店長を目指していたのはイメージを変えたいというところからでした。私が入社した17年前は、業界のイメージは正直いって悪かったです。かくいう自分も「大学出てまでパチンコ屋に就職!?」とよく言われました。でも中に入って働いてみたら、全然普通にクリーンな会社でした。この誤った見られ方が遊技人口が減っている要因じゃないかと思っています。地方の店長にできることなんて微力かもしれません。それでもこういう取材とかCMとか依頼をいただいた時には、必ず素顔と本名で出るようにしています。だって、顔も名前も分からない人が店長だったら、それってクリーンじゃないですよね。 

 

ピデアな男, DSG MEGA WORLD, 石井 宏昌