1億円〝差玉バトル〟のその先 「朝倉戦線」が動かした福岡ホール新勢力図【中編】

2025.06.15 / ホール

「ワンダーランド 1188大刀洗店」の挑戦

広域集客×話題性×現場主義で勝つ

 

大規模なグランドリニューアルを経て再始動した大刀洗店。タイラグループ本社の地元という〝特別な使命〟を担い、「地域一番店」の実現に向けた挑戦が始まった。983台体制という店舗規模の拡張に加え、地域特性に根ざした営業戦略、トレンドを捉えた話題性創出、そして現場主義に基づく顧客体験の追求など、その取り組みは多角的かつ本格的だ。

甘木駅の近くの道路に設置された野立て看板。

地域性と向き合いながら挑む 「983台体制」  

福岡県大刀洗町に位置するワンダーランド1188大刀洗店。このたびのグランドリニューアルで834台から983台へと大幅に増台し、遊技スペースを拡張した。単なる台数の拡充ではなく、本社から与えられた「地域一番店を目指す」というミッションのもと、店づくりの構想そのものが再構築された。

店内の要所でリニューアルオープンとスケールアップを打ち出す。

スローガンとして掲げられた「勝つまでやる」には、単にエリア競合店舗に打ち勝つだけではなく、村木智美店長自身の限界を超えるという強い意志が込められている。実際の現場では、看板機種としてパチンコ・パチスロ両カテゴリーに「からくりサーカス」を大量導入し、同シリーズにおいて地域最大級の設置シェアを確保。あわせて、「海物語」「エヴァンゲリオン」など地域密着型の定番機種も重視し、地元ユーザーとの信頼関係を守る姿勢も打ち出している。

増台にあわせ、椅子やデータランプ、空調システムなど設備全般も見直しが図られた。長時間でも快適に遊技できる環境づくりを意識し、「設備面でも選ばれる店」への転換を狙っている。

地元ファンらで高稼働の海シリーズ。

広域集客と情報発信の進化で 「地元以外のファン」をつかむ  

人口約1万5000人という大刀洗町の地理的特性から、同店では久留米、佐賀、鳥栖、朝倉、福岡市内など、最大で半径20km圏内・車で30分以内の広域集客を視野に入れた営業戦略を展開している。村木店長自身が過去に担当した三潴店、南ヶ丘店での地域性分析を生かし、周辺市町の顧客動線を把握した上で集客施策を組み立てている点も特徴的だ。  

話題性創出においては、元KAT-TUNの田口淳之介氏、ブレイキングダウンのバン中村氏、セクシー女優の希島あいり氏など人気演者の招致を積極的に行い、新たなファン開拓を図っている。イベント開催日はもちろん、事前の告知・事後の発信に至るまで、情報拡散の導線を丁寧に設計している。  

加えてSNS(X)では、店長自らが「中の人」として発信するアカウントを運用。競合する「MEGAFACE930朝倉」との情報戦も含め、タイムリーな情報提供と店の個性演出の両立に成功している。この〝顔出し〟しないスタイルは、情報の鮮度を保ちつつ、スタッフ個人に依存しないブランド構築にも役立っているという。最近では動画による紹介も始まり、視覚的訴求力の強化にも着手している。  

さらに、こうした広域集客戦略の根幹を支えるのが「チャレンジ精神」だ。BT機(ニューパルサーBTなど)をはじめとする新機種の積極導入を通じて、新たな市場の開拓にも注力。単なる既存ファンの囲い込みにとどまらず、今後の成長市場となり得る若年層やライトユーザー層の取り込みも狙う。これは、「リスクを恐れず新たな可能性を追求する」という同店の姿勢を象徴しているのだ。

取材当日、最新台で10台設置された「花笠」はもちろんフル稼働。

現場主義と課題解決力で 〝地域の顔〟へと成長  

同店の運営には、現場重視の姿勢が貫かれている。店長は日々ホールを巡回し、顧客の表情・動線・行動を観察。データ分析と照らし合わせて機敏に施策へ落とし込む柔軟性がある。  

抽選オペレーションも、web抽選ではなく紙抽選券方式を採用。「ワンダーランド1188宮崎芳士店」での成功体験を踏まえ、時間効率と高揚感を両立させる設計となっている。店頭抽選のワクワク感とその後のスムーズな入場で顧客のストレスを減らすことはもちろん、「また来たい」と思わせる体験価値の提供を重視しているという。  

一方で課題もある。駐車台数は983台の遊技台数に対して約710台と不足気味で、今後も強い日には混雑が顕在化する恐れもある。また、現在パチスロの稼働が堅調な一方で、パチンコ部門はやや課題を残しており、機種構成や販促面での再検討が必要という。今後は高齢層ユーザーの支持獲得に向けた専用コーナーや、ホスピタリティーの強化策も検討されている。

5月中旬の一週間の4円パチンコ、20円パチスロランキング。

さらに、グランドオープン時の話題性をいかに継続させるかも重要なテーマだ。SNSや演者招致による瞬間的な盛り上がりだけでなく、「日常の中にある特別感」を演出し続ける工夫が求められている。サプライズ施策や、顧客同士の交流を生むイベントの実施なども含め、中長期的な集客安定化に向けた取り組みが進められている。  

「今はまだ赤ちゃんのような店。手を引きながら一歩ずつ育てていく」。店長歴10年、周辺エリアに詳しい村木店長はそう語る。  

話題性と現場主義を軸に、地元顧客の支持を獲得しながら成長を続けるワンダーランド1188大刀洗店。激しい地域競争のなかで、確かな存在感を放つ地域一番店への歩みが、今まさに始まっている。

 

※上記の数字は民間企業による差玉調査データによるものです。

<※後編/SuperD'STATION39筑紫野店、その他へ続く>

ワンダーランド1188大刀洗店, からくりサーカス, 福岡県大刀洗町, MEGAFACE930朝倉