1億円〝差玉バトル〟のその先 「朝倉戦線」が動かした福岡ホール新勢力図【後編】

2025.06.15 / ホール

〝二強〟が牽引する市場

周辺競合店の影響と新しい勢力図

 

福岡県朝倉・筑紫野エリアのパチンコ市場が、新たな勢力図へと移行しつつある。グランドオープン、リニューアルオープンで急速に集客力を拡大しているMEGA FACEとワンダーランド。その〝二強〟が市場を牽引する一方で、地域最大規模を誇るSuperD'STATION39筑紫野店も独自の存在感を発揮。その他、「迎撃」を打ち出す地元店舗など福岡の商圏は大きく様変わりしつつある。

 

地域最大のスケールで魅せる Super D'STATION39筑紫野店  

MEGA FACE朝倉とワンダーランド大刀洗店から直線距離で約10km。

筑紫野市に位置する「SuperD'STATION39筑紫野店(以下.筑紫野店)」は、1739台という福岡県内最多の設置台数を武器に、圧倒的スケール感を誇る。D'STATIONブランドの中でも全国最大であり、九州全体でも「Nikko大分中央店」に次ぐ規模を有している。その物理的スケールそのものが、他店との差別化要素となっている。 水尾和久店長は「福岡最大1739台、それが一番の武器です」と語る。

実際、台数の多さは多様な遊技スタイルに対応できる柔軟性を生み、初心者からヘビーユーザーまで幅広い層に「ここなら打ちたい台が見つかる」と感じさせる空間設計につながっている。  

加えて、開放感ある高天井構造と空調設備の工夫により、加熱式タバコの臭いも抑えられ、居心地の良さが際立つ。無料のマッサージチェアや広々とした休憩スペースの導入も、長時間の滞在を快適にし、遊技外の体験価値を高めている。

店内の各所にはSuperD'STATION39筑紫野店最大のウリである「福岡最大1739」の表示がある。

看板機種戦略と「守り」の強さ 二強の影響で浮上する課題  

遊技台構成面でも、筑紫野店は独自路線を追求する。「P北斗の拳 暴凶星」は同店の看板機種であり、一撃性を重視するユーザーのニーズに応える重要な柱だ。競合他店ではあまり重視されないこの機種を、大きな島で展開する姿勢は、単なるラインナップの豊富さではなく「選ばれる理由」を明確にした構成と言える。  

同時に、ジャグラーや海物語といったベーシック機種にも高い安定感を持たせており、「出玉勝負」よりも長期的信頼を軸とした営業姿勢が強調されている。水尾店長は「今いるお客さまにとって、常に居心地の良い空間であることが大事」と語り、瞬間的な集客よりも継続性を重視した「守りの営業」に力を注いでいる。  

とはいえ、周辺環境の変化は無視できない。特に、FACEとワンダーランドの2店舗は、グランドオープン以降の積極的なイベント展開と出玉演出によって、遠方からも多くのユーザーを吸収している.

水尾店長も「近隣の強い日は正直厳しい」と率直に語る。特に4円パチンコ層でのユーザー移動が顕著で、イベント目的で来店した客層がすぐ離脱してしまう構造も課題だ。さらに、新台需要の変化により暴凶星の人気もやや鈍化しつつあり、「からくりサーカス」や「東京喰種」など他機種への関心分散も無視できない。また、店舗周辺は住宅密集地ではなく、徒歩来店者が少ない。アクセス自体は高速道路経由で良好だが、広域集客を前提とするため、地元密着型に比べ不安定な面もある。

「攻め」の集客と再成長戦略 中堅ホールの立ち位置と再編の兆し  

そうした中で、Super D'STATION39筑紫野店の戦い方は、スケールに裏打ちされた「普遍的価値」の提供にある。

快適で安心して遊技できる空間。信頼できる機種構成。そして、短期ではなく長期の関係構築を重視する姿勢だ。さらに同店では「守り」と「攻め」のバランスを図る方針に転換しつつある。従来からの常連に向けた快適性維持と安心感の提供は継続しつつ、新規層に向けては「台数の多さ」と「幅広い機種構成」による訴求を強化している。

広告戦略でも、スマホ広告だけでなく紙のチラシも検討中で、年齢層に合わせたタッチポイントの最適化が進んでいる。また、「設備のさらなる拡張による話題性創出」も視野に入れており、将来的な設置台数増加も含めた成長構想も浮上している。 

近隣店のグランドオープンに「迎撃」を打ち出す「MEGA BEAM ASAKURA999」のノボリ。

この三極構造の狭間に位置するのが、「MEGA BEAM ASAKURA999」「ブロス甘木店」「ダイナム福岡甘木店」といった中堅ホールだ。いずれも地域密着を強みに、常連顧客との関係性を維持しており、決して埋没しているわけではない。

小郡ICより5分、筑紫野ICより10分の場所にあるMEGA BEAM ASAKURA999はFACEやワンダーランド、D'STATIONと商圏がかぶる。

特にMEGA BEAMは、総台数780台のうちパチスロ600台と大きくパチスロに振った営業が特徴。朝倉のプライドをかけて「迎撃」の姿勢を全面に打ち出している。また、「ブロス甘木店」は地元コミュニティーとの関係を生かしたアットホームな店舗運営が特徴で、「ダイナム甘木店」は低貸営業や安定運営でシニア層から厚い支持を得ている。このように周辺店舗は、個々の特性を生かしたポジション確立が進んでいる。

ブロス甘木店は地域密着の経営で安定した顧客を持つ。
ダイナム福岡甘木店は周辺の大型店と一線を画した営業をしている。

MEGA FACEとワンダーランドの二強の出現で大きく変貌する朝倉周辺エリア。この新たな激戦区が九州・福岡の勢力図をどのように塗り替えるのか。業界関係者もファンも注目だ。

 

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