1億円〝差玉バトル〟のその先 「朝倉戦線」が動かした福岡ホール新勢力図【前編】
2025.06.15 / ホール4月26日、「ワンダーランド1188大刀洗店」の目と鼻の先に、「MEGAFACE930朝倉」がグランドオープン。ワンダーランド本社のある小郡駅にも近いこの地に、両店が直接ぶつかる構図が誕生した。同日、ワンダーランドは「勝つまでやる!」のスローガンを掲げて大規模リニューアルで迎え撃ち。以降、GWを含む10日間で両店合わせて差枚500万枚(約1億円)超を叩き出す、前代未聞のバトルが繰り広げられた。
朝倉市周辺は福岡県の中央部に位置し、人口は少ないが久留米市や福岡市からのアクセスは良好。ブリヂストンやキリンの工場も抱えるエリア。この地元強豪2店の集客競争が、周辺中小ホールや車で30分圏の「Super D'STATION39筑紫野店」などにも波及し、福岡パチンコ勢力図はいま、大きく塗り替えられつつある。
初動稼働率90%超! その後も高水準で定着
「MEGA FACE930朝倉」の実力
2025年4月26日、福岡県朝倉郡筑前町にグランドオープンした「MEGAFACE930朝倉」が、業界内で大きな注目を集めている。商圏人口は決して多くない中での新規出店。その背景には、同グループがこれまで培ってきた地域戦略がある。現地視察と店舗責任者への取材を通じて、同店の出店意図と実績、今後の展望に迫った。
オープン初動は想定を上回る稼働率

福岡県を中心に全国24店舗を展開するフェイスグループ。
今春グランドオープンした「MEGA FACE930朝倉」は2022年末にオープンした「MEGA FACE1070菊陽」以来、約2年半ぶりの新店となる。
新規出店エリアである筑前町は、福岡市中心部から車で約40分。周辺は農村地帯が広がり、地域全体としての人口密度は決して高くない。しかし、店舗責任者は、「『地域出店でしか会社の成長はない』というオーナーの方針に則った決断だった」と語る。
また、朝倉郡筑前町は筑紫野市、久留米市、佐賀県鳥栖市といった周辺市町村からのアクセスが比較的良好であり、「広域商圏を見据えた立地選定だった」とも付け加えた。
グランドオープンの3日間は、パチンコ・パチスロ合算で90%超の稼働を記録。以降も平均75%と高水準を維持しており、「想定よりも高く安定化した印象」と店舗側は手応えを語る。実際、取材日(5月19日12時ごろ)の稼働率を聞くとパチスロ81%、パチンコ72%ということで、PSともに〝ここはホントに朝倉市なのか?(失礼)〟と思えるほどの熱気だ。「朝の並びは800〜900人。抽選順にパチスロが埋まり、朝の稼働は100%でした。パチンコは70〜80%。強い日はいつもそんな感じです」(同)
広域商圏への認知浸透を図る 積極的な広告宣伝戦略
こうした好調の背景には、県内における「FACE」ブランドの認知浸透がある。

それを支えているのが、同グループの積極的な広告宣伝・SNS戦略だ。グランドオープン前後にはXやLINE、YouTubeなどを通じて高頻度の情報発信を行い、新台導入や営業スケジュールだけでなく、店舗スタッフの紹介などを数多く投稿。「発信とコミュニケーションの両面での頻繁な更新でお店の気合を感じてもらえる」と話す。
それにより「FACEが出店するなら行ってみよう」と考える潜在層への訴求力がさらに高まり、広域からの来店を後押ししている。特に車移動が前提となる同地域では、オンラインでの接点が来店動機に直結するケースも少なくないという。
競合環境と商圏の変化 「筑紫野方面」への影響も
同店の一次商圏は半径5km圏内。そこには「ワンダーランド1188太刀洗店」「ブロス甘木店」「MEGA BEAM ASAKURA 999」などの競合店がある。二次商圏は最大10km以上を想定しており、そこには県内最大の設置台数を持つ筑紫野市の「SuperD'STATION39筑紫野店」がある。D'STATIONとは直線距離でかなりあるのだが、両店舗の中間商圏(筑前町、小郡市など)の集客を意識している。
中間の遊技人口が南東に行くか、北西に行くか。このところ筑紫野方面からMEGA FACE 930朝倉への流入が一定数確認されており、「従来は北西方向、筑紫野市方面に通っていたお客さまが、こちらにも足を運ぶようになっている」との感触もあるという。今後、広域商圏におけるシェア争いが活発化することが予想される。
広域圏ばかりではない。オープン時から近隣商圏(地域住民)対応として、通常貸しの抽選入場方式に加え、高齢層向けの低貸し先着優先入場ルートを設けた点も特徴的だ。「抽選に馴染みのない高齢者でも、安心して来店できるように配慮した」(店舗責任者)とのこと。

この取り組みが地域からの評価につながり、「FACE=親切で入りやすい店」というイメージ形成にもつながっている。
夜間稼働弱めも「想定内」 週末は広域商圏の集客がカギ
一方で、「夜の稼働が落ちるのが早い」という課題もある。通勤動線から外れた立地や、高齢化率の高さといった地域要因により、20時以降の稼働はやや鈍化傾向に。ただしこれは出店前から想定されていたものであり、営業戦略としては日中・夕方の集客強化に重点を置いている。
また、店舗責任者は「平日は地元、土日は遠方からの集客が必要」と語る。特に、久留米市、佐賀県鳥栖市、大分方面など、二次商圏・三次商圏からの広域来店を促すため、イベントや装飾、機種構成の工夫を進めている。

また、日常的に通う地元層に対しては、「無理のない距離感で来店できる準固定客化」を図るべく、接客やサービスの強化も同時に行っている。
同店の事例は、人口過密エリアではない地域においても、明確なブランド戦略と商圏設計があれば十分に勝負できることを示している。県内での信頼構築に加え、地元ニーズへの対応と、広域商圏への訴求のバランスが、同店の競争力を支えている。

FACEグループが朝倉郡という人口希薄エリアに出店した背景には、「地域出店でしか企業成長は見込めない」という一貫した戦略思想がある。
グランドオープンから約1カ月、稼働・集客ともに安定推移を見せるMEGA FACE930朝倉は、今後、地方出店成功モデルのひとつとして業界内で注目を集めそうだ。

<※中編/「ワンダーランド1188太刀洗店」へ続く>