第21回 ツイッター上にいるプチ有名人たちに聞く
雑誌や動画などの媒体に所属していないただのアルバイトスタッフに、数千人のフォロワーがつく時代になってきた。ツイッター上でわざわざ本人が語らなそうなことを、第三者であるPiDEAが根掘り葉ほりする。(聞き手:PiDEA編集部コガワ @pideanaotoko1)
今回の言えない話
PiDEA編集部(以下略編)|今回はツイートの内容から察するにアニメ、ゲームオタクの稲タイさんです。稲タイさんってTwitterをかなり楽しんでいますよね。
稲タイさん(以下略稲 )|はい。やり始めて1年経ってないのですが、仕事って感じではなくまったく苦ではありません。
編|どうやってこの変なアカウントが始まったんですか。
稲|変な(笑)。去年の5月1日に、イメージキャラクター(稲沢アイキ)を押し出していこうとなったのです。もともと若いお客さまが多い店ですし、ウイングレットさん、アイランド秋葉原さん、メガロ大須さんのように、キャラクター人格で発信をしようとして、早々に諦めたんですよ。
編|当初は、中の人ではなく、アイキちゃんキャラでいこうと?
稲|僕の精神的にキャラでいくのは持たないので、30代男性のいちツイートとして発信させていただきますと。
編|このアカウントの目的って何に設定していますか。例えば集客とかいろいろあると思いますが。
稲|タイキって東海圏なら知られているけど他法人みたいに全国区ではないので、一番の目的は店舗アカウントが何か面白いことをやっていると知ってもらうことです。極論を言えば、「来店してもらう」という副産物は今は正直切り捨てています。今は時期が時期なので集客みたいなことは難しいですが、ただ次のステージでは狙っていきたいなと。
編|運用面でのこだわりってありますか。正直全然真面目じゃないアカウントですが、そういう方ほどこだわっていると思いまして。
稲|ツイートにギャップをつくって突っ込みどころを用意するのを心がけていますね。アニメアイコンで可愛い女の子がツイートしているのかなと思いきや中身はおっさんっていうね。その方がリプもつきやすいですし。
編|突っ込みの隙を用意すると。
稲|それは必ずやっています。真面目な話0.5、おふざけ9.5くらいのバランスです。そうすると真面目なことやるとそれに突っ込みがくるようになります。常にリプくれる方には感謝しかないですし、やりとりしてて楽しいのが本音。正直、炎上した方が早いかなと思うこともあるけど、炎上芸は向いていないと思うので。
編|でも、全然ネガ発言はしていないですよね。
稲|お店のアカウントという特性上、会社を代表して発信していると思っているので、誰かの悪口やクソ台といったネガティブなことは絶対に言わないようにしています。それはこのコロナ禍でより一層感じました。ネガ発言の方が反応があるのは分かるけど、そこに乗ったら矜持が崩れるというか。
編|月間のインプレッションってどれくらいあるんですか。
稲|月間で100万くらいですが、正直どれだけの人に見られたかよりもどれだけ濃いやりとりをしたかを重視しています。いいねって別に付き合いでも押せるけど、マジでその人と会話をしたいと思ったらリプするしかないですよね。一万人の薄いフォロワーより濃い100人の方がいいなとTwitterをやりはじめて思いました。
編|Twitterに張り付いている時間ってどれくらいですか。
稲|22時間くらい。寝ている時以外、結構見てますよ(笑)。僕は業務と思っていないので問題ないけど、他のTwitter担当者にも同じだけ張り付けとは言えないのが悩みどころ。とはいえ、考えがまとまった時にまとめてリプ返するので、作業時間自体はそんなに。
編|稲タイさんってオタクな感じじゃないですか。で、その趣味趣向がお店の営業に色濃く反映されている。店長クラスの方とお見受けしますがいかがですか。
稲|正解です。でも、去年の12月くらいに仲の良い人とのやりとりで「実はエリア長です」と言ったことがありますよ。
編|本当の仕事はTwitterではなく、バリバリの管理職ですよね。
稲|人と機械と売り上げと数字はすべて見る立場です。
編 ファンキーなエリア長で。ずっと現場一筋だったのですか。
稲|いえ、業界歴は13年くらいですが、店長を経験していないんです。デザイン系専門学校出身で、もともとはDTPデザイナー。でも絵がすごく下手クソというか。
編|いわゆる〝画伯〟というヤツですね。
稲|今はやっていないけど、知り合いのアカウントに「イラストを描くのでアイコンに使ってください」とやっていたんです。そうしたら結構喜んでもらえて、もしかしたら一般の方も僕の下手な絵で喜んでくれるんじゃないかと。それで、今からアイコン描きます。リプくれたら全員分やります。一枚5分で描きます。ただしクオリティーは保証しませんと。それが一番リプがつくので、そこでさっと宣伝を差し込むんですよ。
編|うわぁ、策士(笑)。
稲|朝の入場で雑誌とかペットボトルで場所取りする人がいることに対して、剣とか盾とかで警告を出していたのですが、実は次のネタめっちゃ仕込んでいるのに今はその辺が発信できないのが悔しいですね。営業案内という武器を取り上げられた今こそ、Twitter担当者の地力が試されている時期だと思います。
取材を終えて……
Twitterを「公開プロレス」と表現する稲タイさん(34)。Twitter上ではクソリプ、ネタツイしかないが、実は業界歴13年のエリア長として社内SNS担当者を束ねる立場である。自身のネット遍歴が2ちゃんねる出身ということもあり、「全員が名無しで面白さだけで幅をきかせていたのを考えると、正直、見た目で勝負している人にはコンテンツとして負けたくない(笑)」と密かに闘志を燃やしている。平時からネガティブなことは決して発言せず、ポジティブな感情で共感を呼ぶことを信条としている。