Wynn Resorts マカオWynn Palace拡張1期20億ドル計画~営業権再入札の前後関係焦点

2019.07.14 / カジノ
2019-07-14

【海外ニュース】

7月10日、Wynn Resortsは、機関投資家向けイベントInvestor Dayを開催。

今回、マカオWynn Palaceの拡張計画を公表した。
拡張計画はPhase 1, 2の構成。ターゲットROIC(Return On Invested Capital, 調整後プロパティEBITDA / 投資額)は15-20%。年間訪問者数は700-1,000万人。

<Phase 1 – 南区画 概要>
・土地面積3ha
・プロパティ名”Crystal Pavilion”
・ホテル棟は約650室
・初期投資額20億ドル(約2,160億円)
・2021年後半に着工。工期は36ヵ月強
<Phase 2 – 北区画 概要>
・土地面積1.7ha
・ホテル棟は約650室
・投資額、時期は未定

Wynn Palace拡張計画の焦点は、着工時期とマカオのカジノ営業権再入札との前後関係である。マカオ6事業者のカジノ営業権は、2022年6月に満期となる。マカオ政府は、満期前、2021年にも再入札を実施する方針。

政府の再入札の方針は、現時点では未発表であるが、焦点は、既存事業者の再選定における当落、そして、新規事業者の選定の有無である。マカオ6事業者は、いずれも、その売上高の8割あるいはそれ以上をカジノ部門に依存する。カジノ営業権の喪失は、実際上、事業維持をほぼ不可能とする。

なお、Wynn Resortsは、新規エリアでは、日本のみ強調。日本市場を”EXCITING POTENTIAL OPPORTUNITY”とし、”5-STAR URBAN RESORT”の実現に取り組む。


(出所)Wynn Resorts – ANALYST AND INVESTOR DAY, JULY 2019.

マカオ:政府,カジノ営業権満期に伴う再入札準備~21年実施予想も。日本営業に影響

5月11日、梁維特(Lionel Leong)・マカオ特別行政区経済財政庁長官は、記者団に対し、カジノ営業権(コンセッション)満期後の方針について言及。ポイントは、

・改めて、”更新(Renewal)”ではなく、”新規入札(New Public tender)”を実施する方針を強調
・政府は、現在、入札実施に向けた法的な準備を進めている(ゲーミング法および関連規制の改正など)
・入札、すなわち事業者選定では、マカオの観光レジャーセンター化への貢献、ノンゲーミング強化などに重点を置く

一方、5月に入り、マカオのゲーミング法専門家であるJorge Godinho氏(マカオ大学・法学部客員教授, リーガルコンサルタント)は、”新規入札”が2021年に実施されると予想。

背景には、4月19日に、崔世安(Fernando Chui Sai On)・マカオ特別行政区行政長官が、議会にて、再入札が現行コンセッション満期(2022年6月26日)前に実施されること、すなわち現行営業権の延長オプションを行使しない方針を明らかにしたことがある。

マカオのカジノ営業権の”新規入札”は、日本におけるIR区域整備計画の選定認定(国による都道府県等と事業者の決定)の時期と一致する可能性がある。その場合、マカオの現行カジノ営業権保有者は、その喪失リスクを抱えた中で、日本参入営業を展開せざるを得ない。

マカオでは、コンセッション保有者(または、コンセッション保有者とサービスアグリーメントを締結した事業者)のみが、カジノ運営を許可される。コンセッションは、権益であり、6社の企業価値を支える原動力である。

図表の通り、マカオでは、6社(中国系3社、米国系3社)がゲーミング・コンセッション(サブ・コンセッションを含む)を所有しており、すべて2022年6月26日に満期を迎える。

ゲーミング・コンセッションに関して、現行法、契約(政府-事業者間)が規定するポイントは以下の通り。
・現行コンセッション満期後、新規コンセッションは、フレッシュな入札プロセス(Public Tender)を通じて付与
 (政府は、繰り返し、”更新”ではない点を強調)
・現行ゲーミング・コンセッションは、最大5年間の延長が可能
 (2019年4月、政府は延長しない方針を表明)
・政府は、2017年より、現行ゲーミング・コンセッションを早期償還できる権利を持つ
 (現在まで、政府は権利行使について言及なし)
・現行ゲーミング・コンセッション保有者は、それを喪失した場合、カジノ施設を、対価なしに、マカオ政府に移管する義務
 (カジノ施設の喪失は、事業性の観点から、自動的に全施設の喪失を意味する)

2017年央、政府高官は、初めて、”新たな入札(New Tender)”という表現を用いた。その発言は、現コンセッション保有6事業者に激震を与えた。
それまで、政府関係者は、”更新(Renewal)”と表現し、6事業者はそこに満期後も現状維持のニュアンスを感じ取っていた。
政府が”新たな入札”と表現したことで、事業者再募集・選定、入れ替えのニュアンスを読み取ったわけだ。

図表:マカオ カジノ運営6事業者のコンセッション満期日

コンセッション満期日 事業者 証券取引所 カジノ施設数 獲得順
2022年6月26日 SJM Holdings 香港証券取引所 22
2022年6月26日 Wynn Macau 香港証券取引所
2022年6月26日 Galaxy Entertainment 香港証券取引所
2022年6月26日 Sands China 香港証券取引所 4(サブ)
2022年6月26日 MGM China 香港証券取引所 5(サブ)
2022年6月26日 Melco Resorts & Entertainment NASDAQ 6(サブ)

注1:カジノ施設数は2018年12月末時点
注2:2019年3月15日、マカオ政府はSJM Holdingsのコンセッション(MGM China Holdingsのサブ・コンセッション)の満期日を、2020年3月31日から2022年6月26日に延長を承認
注3:(サブ)はサブコンセッション。Sands ChinaはGalaxy Entertainmentより、MGM ChinaはSJM Holdingsより、Melco Resorts & EntertainmentはWynn Macauより取得
 

Wynn Resorts Encore Boston(6月23日開業)初日来場者5万人, 年間800万人見込み

6月23日、Wynn Resortsは、マサチューセッツ州エバレット市にて、Encore Boston harborを開業。

グランドオープニングセレモニーには、数千人が参加。Wynn Resortsは、初日の来場者5万人、年間では800万人の集客を見込む。

Encore Boston harborまでの開業までの道程は長く、数々の困難に直面した。

2014年9月、州ゲーミングコミッションは、Region A(ボストン広域エリア)のプロジェクトとして、Wynn Boston Harborを選定。その後、落選したグループ(周辺市など)などによる州政府Wynn Boston Harborへの提訴が相次いだ。

2016年7月までに、Wynn Resortsは、マサチューセッツ州の環境対策部門を含む行政許認可のほぼすべてハードルをクリアした。その後、建設工事が本格化した。

2018年1月には、Wall Street Journal報道を契機に、創業CEO(当時)であったSteve Wynn氏のセクシャルハラスメント問題が台頭
2019年4月30日、マサチューセッツ州ゲーミングコミッション(MGC)は、セクハラ問題に関連した適格性調査結果の最終判断を下した。MGCは、3,500万ドルの罰金などを条件に、Wynn Resortsのゲーミング・ライセンスを維持し、Encore Boston Harberの開業を許可した。

直近5月21日、Wynn Resorts、MGM Resortsは、Encore Boston Harborの売買協議中止を発表。
売買協議の背景は、Wynn Resortsは投資回収面の判断、MGM Resorts Internationalは州内競合の回避(ドミナント戦略)と推察される。
両社とも、売買協議中止後、それぞれの地域コミュニティの懸念を火消し、コミットを強調する事態となった。

マサチューセッツ州では、2011年ゲーミング法のもと、3つのIRと1つのスロットパーラーの設置が容認された。3つのIRは、Region A(東部)、Region B(西部)、Region C(南東部)に一つずつの想定であった。現在、IRは、二つのみ許可されている。

2015年6月、スロットパーラーであるPlainridge Park Casino(投資額$250mn)が開業。
2018年8月、コネチカット州境に位置するMGM Springfield(投資額$960mn)が開業(Region B)。
2019年6月、Encore Boston harbor(投資額$2.6bn)が開業予定(Region A)。

州政府(Massachusetts Gaming Commission)は、Region Cに、三つめのIRを承認するオプションを有する。

米国マサチューセッツ州Encore Boston Harborの概要

・土地:13.3ha
・アクセス:ローガン国際空港から8Km圏内。主要交通ハブから数分内。主要なポイントにシャトルバス
・総開発費:26億ドル
・延べ床面積:28万㎡
<主要施設>
・ホテル棟27F、671室(104スイーツ含む)
・飲食15店
・spa, フィットネス
・MICE, ボールルーム3,400㎡, 10break-out室
・カジノフロア=20,000㎡(テーブル242台, スロット3,158台, 計4,000ポジション)
<経営指標>
・年間800万人の訪問
・EBITDAの予想レンジ=3.5-4.0億ドル
・雇用創出=運営時5,500人
・州は税収として年間2億ドルを期待(カジノ売上課税はGGRに対して25%)

 

Wynn Resorts 19年度1Q 経常益1.7億ドル,実質YoY42%減~マカオ米国とも市場縮小

5月9日、Wynn Resortsは、2019年度1Q業績を発表。

1Q(1-3月)の営業利益は$255mn,YoY33%減、経常損益(営業利益-ネット利息費用)は$169mn,YoY42%減(それぞれ、前年同期の訴訟和解費を除く比較)。

主力のマカオ事業、ラスベガスとも市場縮小。
なお、4Q累計の営業利益以下には、1Qにおける各種訴訟和解費用(ユニバーサルエンターテインメント、Elaine Wynn氏など)$464mnの計上が影響。

会社は、マカオにおけるカジノ営業権満期を視野に、アジア太平洋地域でのM&A意欲を示した。
4月8日、Wynn Resortsは、オーストラリアCrown買収協議中止を発表した経緯がある。

Wynn Resortsは、マカオ事業(Wynn Macau)のウエイトが高い。同社のマカオのゲーミング・コンセッションが2022年6月に満期を迎える。マカオ政府は、満期後に再入札を実施する方針。

2019年度1Q業績(1-3月):
・売上高$1,652mn,YoY4%減, 調整後プロパティEBITDAは$495mn,YoY12%減, 営業利益$255mn(前年同期$81mnの赤字), 株主帰属当期利益$105mn(前年同期$204mnの赤字)
・前年同期は、各種訴訟和解費用(ユニバーサルエンターテインメント、Elaine Wynn氏など)$464mnを計上
・前年同期の訴訟和解費を除く、営業利益は$255mn,YoY33%減
・1Qの経常損益(営業利益-ネット利息費用)は$19mn
・地域別業績
Macau Total=売上高$1,251mn,YoY3%減, 調整後プロパティEBITDA $386mn,YoY8%減
– Wynn Palace=売上高$727mn,YoY9%増, 調整後プロパティEBITDA $223mn,YoY5%増
– Wynn Macau=売上高$524mn,YoY15%減, 調整後プロパティEBITDA $164mn,YoY22%減
Las Vegas Total=売上高$401mn,YoY7%減, 調整後プロパティEBITDA $108mn,YoY24%減

<参考>2018年度業績(1-12月):
・売上高$6,718mn,YoY11%増, 調整後プロパティEBITDAは$2,044mn,YoY13%増, 営業利益$747mn,YoY29%減, 株主帰属当期利益$584mn,YoY22%減
・米国税制改正に伴いタックスベネフィットが発生。当期利益はイレギュラー
・地域別業績
Macau Total=調整後プロパティEBITDAは$1,577mn,YoY22%増, 営業利益$978mn,YoY43%増
– Wynn Palace=調整後プロパティEBITDAは$844mn,YoY60%増, 営業利益$459mn,YoY2.9倍
– Wynn Macau=調整後プロパティEBITDAは$733mn,YoY4%減, 営業利益$532mn,YoY1%減
Las Vegas Total=調整後プロパティEBITDAは$467mn,YoY11%減, 営業利益$170mn,YoY30%減
・1Qに、営業費用に、各種訴訟和解費用(ユニバーサルエンターテインメント、Elaine Wynn氏など)$464mnを計上

2019年度1Q末(3月末)財務状況:
・ネット有利子負債$7,488mn(手元現金$1,823mn、有利子負債$9,310mn)

Wynn Resorts 米国MA州 適格性調査の結論~免許維持, 罰金。セクハラ問題収束

4月30日、米国マサチューセッツ州ゲーミング・コミッション(The Massachusetts Gaming Commission MGC)は、同社創業者(旧CEO)Steve Wynn氏のセクハラ疑惑に関連したWynn Resortsの適格性について最終判断を下した。
MGCは、調査、判断に約一年の時間を費やした。これにより、Wynn Resortsのセクハラ疑惑に伴うゲーミングライセンスの適格性問題が収束したことになる。

MGCの判断の結果、Wynn Resortsは、ゲーミング・ライセンスを維持し、予定通り、Encore Boston Harberを6月に開業できることになった。

ライセンス保持の条件として、Wynn Resortsに課された義務は、
・当局への3,500万ドルの罰金。Wynn Resortsの経営執行部が、Steve Wynn氏のセクハラ問題を適正に取り扱わなったことを問題視
・独立監視機関の設置
・経営執行部、従業員に対するハラスメント防止教育

また、現CEOのMatthew Maddox氏は、従業員の内部告発を調査しなかったことを理由に、50万ドルの罰金を支払う。

1月28日、Wynn Resortsは、1月25日にNevada Gaming Control Board(NGCB)が同社創業者(旧CEO)Steve Wynn氏のセクハラ問題の調査結果および同社に対する懲戒処分案を決定したと発表。

調査は、Wynn Resortsの関係者の一部が、セクハラ問題を認識していたものの、是正行動を起こさなかったと結論付けた。

NGCBは、同社の営業ライセンスの制限、取り消し、あるいは、同社従業員に対する処分を検討せず。ただし、NGCBは、同社に対して、罰金を科す考えを示した。

その後、2月26日、米国ネバダ州ゲーミングコミッション(The Nevada Gaming Commission)が罰金額が2,000万ドルで決定したと公表。経営に大きな打撃を与える額ではないが、事前の市場観測(数百万ドル)を上回り、事象の深刻さを改めて示す格好となった。

Wynn Resorts創業者Steve Wynn氏のセクハラ問題は、2018年1月26日のWall Street Journal報道が起点となった。そこから、米国ネバダ州およびマサチューセッツ州、マカオのゲーミング当局がライセンスの適格性に関する調査を開始。
2月6日には、Steve Wynn氏は、CEOを辞任。3月21、22日にはSteve Wynn氏は所有するWynn Resorts株のすべての売却を発表。

ゲーミング事業は、当局のライセンスが前提となり、その剥奪は事業消失、すなわち企業価値の喪失を意味する。

Wynn Resorts 豪Crown買収協議中止~マカオ営業権満期視野に日本, APAC進出急ぐ

4月8日、オーストラリアのCrown Resortsが、Wynn Resortsと経営権の異動を伴う可能性がある協議を進めるとリリースを公開。
4月9日、Wynn Resortsは、SEC(米証券取引委員会)に、Crown Resortsとの協議を認めるリリースを提出。
同じ4月9日、Wynn Resortsは、SEC(米証券取引委員会)に、Crown Resortsとの協議打ち切るリリースを提出。

各種報道によれば、協議は、Wynn ResortsによるCrown Resortsの買収であった。Crown Resortsの時価総額は、71億ドル(約8,000億円)。
情報漏えいが、協議の打ち切りの一因となった。

Wynn Resortsは、地理的な事業拡張を目指したとされる。収益柱であるマカオのコンセッション満期(2022年6月26日)を意識した動き。その対策は、マカオ事業の継続(コンセッション新規獲得)、日本やオーストラリアを含むアジア太平洋地域(APAC)への新規参入である。

Wynn Resortsは、現在、米国(ネバダ州ラスベガス)およびマカオで事業を展開するが、営業利益の85%はマカオ由来である。

マカオのゲーミング・コンセッション(6社が保有)は、すべて2022年6月26日に満期を迎える。マカオ政府は、現行コンセッション満期後、次期コンセッションを新規入札(New Pulic Tender)を通じて付与する方針を強調(更新の概念はない)。

長年の株主間紛争は和解~Steve Wynn氏、Elaine Wynn氏、ユニバーサルエンターテインメント

・2018年3月、創業CEOであったSteve Wynn氏が、所有株式全株を売却し、CEOを退任
・その前後に、長年の懸案であったElaine Wynn氏、ユニバーサルエンターテインメントとの紛争が決着
(Steve Wynn氏が売却前の主要株主構成は、Steve Wynn氏が11.8%、Elaine Wynn氏が9.4%)

・3月8日、長年の懸案であったWynn Resorts社ら(ボードメンバーを含む)、ユニバーサルエンターテインメントとの訴訟は和解

<元妻であるElaine Wynn氏との紛争>
・Elaine Wynn氏は、自身の株式の権利をSteve Wynn氏に預託する契約(売却制限、議決権)を締結
・過去6年間、Elaine Wynn氏は、預託契約の無効を主張(ユニバーサルエンターテインメント株式の強制償還後)
・2月9日、Steve Wynn氏は、Elaine Wynn氏所有のWynn Resorts株式に対するコントロールを放棄すると発表

<ユニバーサルエンターテインメントとの紛争>
・2012年2月、Wynn Resortsは、当該調査レポートを根拠に、ユニバーサルエンターテインメント(UE)所有のWynn Resorts株式(発行済株式数の19.6%)の強制ディスカウント償還を実行
・その後、UEは、強制ディスカウント償還の無効を主張し、Wynn Resorts社らを提訴
・2018年3月8日、和解が成立。Wynn Resorts社は、2018年3月末までに、UEに、26億3,200万ドルを支払った。一方、UEらは、Wynn Resorts社らへの訴訟を取り下げた

オリジナルサイトで読む