【連載】第4回 IRカジノと日本の未来

2025.07.18 / カジノ

カジノ政策の〝第二フェーズ〟

オンライン統制と利権構造

日本のオンラインカジノ規制は無秩序な賭博を排除し、統制可能なリアルカジノの開業を見据えた布石と見る向きも。諸外国の例から、将来的には制度化・ライセンス制導入の検討の可能性も。

 IRの誘致と推進リアル優先の政策

 2022年秋以降、政府は無許可オンラインギャンブルの取り締まりを本格化させた。海外サイトを経由した違法賭博が横行し、芸能人やスポーツ選手の関与も問題視された。これに応じて警察庁も対応を強化し、2025年6月には政府により「ギャンブル等依存症対策基本法」が改正され、「利用」「運営」だけでなく、「広告」「誘導」までもが明確に違法とされた。

 しかしこの動きの背景には、大阪IRという巨大な既得権益の保護が見え隠れする。IRの柱はカジノ収益であり、その競合にあたるオンライン賭博の排除は、政策的に合理的な選択でもある。リアルIR施設の誘致・推進を〝第一フェーズ〟と位置づけ、オンライン制度化はあえて後回しにするという戦略が読み取れるのだ。

 

規制強化と秩序形成の始まり

 現在、日本のカジノ政策は転換期の〝第二フェーズ〟へと移行している。これは、「推進」から「統制」へ、「自由」から「管理」への政策転換を意味する。

 このフェーズでは、単にカジノを合法化するのではなく、社会的秩序を前提とした合法空間の維持と囲い込みが重視される。具体的には次のような政策構造が見える。

●オンライン賭博の排除によるIR事業の保護

●広告・誘導行為の違法化による周辺の関連事業者への締め付け

●規制と利権のバランスを取った政治的調整

 IR推進が表向きの名目である一方で、実際に大きな利益を得るのは、特定の企業や政治関係者、さらには金融・不動産を取り巻く利権ネットワークである。

 大阪IRの背後には、自民党有力議員、大阪維新の会、大手ゼネコン、観光業界、ホテル運営会社、そして外資系カジノ企業が連なっている。中でも注目すべきは、税制優遇や土地規制の緩和といった政策的インセンティブであり、これはIR参入企業にとって極めて魅力的な条件となっている。

 政治家は「地域振興」という名目でこれを後押しし、企業は「投資と雇用創出」を理由に積極的に参加する。その蜜月関係の中で、真に利益を得るのは誰なのか──。市民にとっては見えにくい利権の構図が、ここに浮かび上がる。

 

オンライン制度化という〝第三フェーズ〟への布石

 現在のオンカジ規制は、単なる排除ではなく、将来的な制度化を見越した環境整備である可能性がある。実際、イギリスやカナダ、さらには日本がお手本としているシンガポールにおいても、政府が指定した事業者にオンライン賭博のライセンスを付与する制度が存在する。

 日本でも、「IRの経済効果が想定に届かない」などを理由に、IR事業者にオンライン運営免許を与える制度設計が検討される可能性は十分にある。リアルとオンラインの「二枚看板」で収益構造を多様化すれば、IR事業者はさらなる利潤を得ることができる。

 これは、規制によって整えた秩序の上に構築される、新たな利権市場とも言える。カジノ政策の第二フェーズは、単なるギャンブル合法化を超え、社会秩序と収益構造、そして政官財の利害が複雑に絡み合う局面に突入している。

その先にある〝第三フェーズ〟では、オンラインを含めた制度拡張が現実味を帯びてくるだろう。

 

参考

 

カジノ, オンラインカジノ, ギャンブル