ReFaから学ぶ パチンコ業界のブランディング戦略

2026.03.09 / その他情報

美容・健康器具メーカー「株式会社MTG」の快進撃が止まらない。昨年11月には主軸ブランド「リファ」の旗艦店「ReFa GINZA」を、高級ブランドショップが立ち並ぶ銀座のメイン通りにオープンし、話題となっている。 


16年で到達した
売上1000億円

 

 「株式会社MTG」の快進撃が止まらない。2025年9月期の連結業績は純利益が248%増(前期比)の79億円、売上高が37.5%増の988億円だった。さらに今後の業績予想として、2026年の9月期の純利益は前期比13%増の90億円、売上に至ってはいよいよ1000億円の大台を突破し1200億円を達する見込みであることも発表された。

 この報は経済新聞などでも大きく扱われ、発表の翌日にはMTGの株価を25%も引き上げる結果となった。まさに「破竹の勢い」の超優良企業だが、男性店長にはあまり馴染みがない名前かもしれない。従って、ここではまず基本情報についておさらいしよう。

 MTGは愛知県名古屋市に本社を置く「美容・健康器具」のメーカーである。ひとくちにMTGといってもブランドは複数あり、例えばあの世界的な美のカリスマ、マドンナと共同開発した美容製品を取り扱う高級ブランドである「MDNA SKIN」や、サッカー界のスーパースター、クリスティアーノ・ロナウド選手とコラボしたEMS(電気刺激)トレーニンググッズブランド「SIXPAD」などは海外でも人気が高い。

 しかしなんといっても国内で名が知られているのは美顔ローラーを始めシャワーヘッド、ボディケア・頭皮ケアグッズ、ドライヤーなどを取りそろえた美容ブランド「ReFa(以下・リファ)」だろう。社名は知らずとも、リファならば分かるというユーザーも多い。

 2012年に発売された美顔ローラー「ReFa CARAT(リファカラット)」シリーズは世の女性たちの間で大いにバズり、瞬く間に50社以上の競合がいる美顔ローラー界のトップブランドに成長。リニューアルを経ながら現在までに販売実績1000万本を越えるモンスター商品になっている。 

 2020年代に突入するとシャワーヘッドやドライヤー、ヘアブラシなど「出す製品がほぼヒットする」という状況になり冒頭の事業実績につながるのだが、果たしてリファの何がここまで消費者のハートをつかんでいるのだろうか。これを分析すれば、もしかしたらパチンコ産業においても見習うべき何かが見えてくるかもしれない。 

 

あのマドンナまでをも唸らせた?リファを支える「ブランド力」。

 

 今では家電量販店などいたる所で容易に目にすることができるリファブランドの製品だが、ブランド立ち上げから暫くはまだ知名度も低く、メーカー通販と契約サロンでの販売がメインだった。

 流行の最初期、知名度向上に一役買ったのは美容師やエステティシャンなど、実際にそれを使用したプロたちだったという。そう、単純に「良いものだ」とプロが認め、それを自らの顧客に勧め始めたのだ。

 これによりリファは美容に敏感な女性たちの間で見事「流行の商品」となるのだが、そこには「MTG自体がまだ無名の一企業であったこと(ミステリアスさ)」と「商品の露出が少なかったこと(希少性)」、そして「一般的な美顔ローラーよりも高価な価格設定だったこと(高級感)」の3つの要因があったのではとここでは分析する。

 つまりリファはプロがおすすめする高級品で、いざ決心して買おうと思ってもなかなか手に入らない希少性のあるものだったのだ。この消費者の「憧れ」や「飢え」がリファという製品の根底にあり、ブランド力を支える大きな原動力となっていたのだろう。もちろんそれは「商品が良い」という大前提の上に成り立つものだが、それを補強するエピソードにはリファは事欠かない。

 例えばマドンナの話などは顕著だ。MTGはマドンナがパートナーシップを結ぶ数多くのそうそうたる大企業たちのなかで、最も小さい会社である。マドンナに試供品のリファを手渡した専属エステティシャンは、企業の規模や名前ではなく、商品そのものの良さに引かれてそれを渡したという。

 さらに信じられない話だが、MTGはあの米国グラミー賞のギフトラウンジ(海外セレブに自社製品を持って帰って使ってもらうためのラウンジ)のメインスポンサーに選定されており、ネット上ではなんとシンディ・ローパーやボビー・ブラウンがリファの美顔ローラーを片手に微笑むという、ついコラージュを疑ってしまうような画像が公開されている。単なるイメージだけの、ハリボテのブランドではこの快挙は絶対に成しえないものであり、このような耳を疑うようなエピソード自体、リファの製品力を証明しているとも言える。 

 

 

「ブランディング」と「拡販路線」の奇跡的な両立!

 

 リファの商品はもちろん美顔ローラーだけではない。シャワーヘッドやドライヤー、それにヘアケア用品など多数のヒット商品を抱えている。そして商品数が増えると共にリファは直販やサロン販売のみならず、代理店や小売店へとその販路を増やしてきた。

 今ではシャワーヘッドやドライヤーは家電量販店で気軽に買えるし、またドラッグストアや東急ハンズ、ロフト、さらに近年では「TikTokショップ」などでもリファの名をみかける。要はブランド初期にリファの印象を決定づけた3つの要因のうち「ミステリアスさ」「希少性」の二つが消え、残ったのは「高価な価格設定(高級感)」のみなのである。

 ところが近年は若い世代の女子たちの間でリファの製品が欲しくてもなかなか買えないという「リファ不足」の現象が起きているという。

 きっかけは前述の「TikTok」にてリファのヘアブラシ(ReFa HEART)が「可愛い」と人気になったことで、これを入口にリファ製品にハマる若い世代が出現。彼女たちの美顔ローラー、シャワーヘッドとスキンケア周りをすべて「リファ一色」に染めていっている。実は冒頭の業績の大躍進はヘアケア用品が起爆剤となっており、顧客の「世代交代」が理想的な形で成功したことを示している。そう。リファは2010年代のブームの勢いをそのまま若い世代に波及させることに成功しているのだ。

 この部分のノウハウは遊技人口の現象や若者のパチンコ離れに喘ぐ我々の業界にとって喉から手が出るほど欲しいものであり、業界全体までゆかずとも、個店ベースで参考になる部分は絶対にあるはずだ。

 

 

リファに学ぶ

パチンコ店の新規顧客獲得

 

 リファのブランド戦略をひも解くに、重要なのは初期にバズった3要因「ミステリアスさ」「希少性」「高級感」のうち、キモになる「高級感」を保ち続けていることだろう。

 このあたりは「BALMUDA(バルミューダ)」のブランド戦略を思い浮かべてしまうが、大きな違いはMTGがメーカーであり製品をすべて自社製造している点だ。バルミューダはデザイン・設計の会社であり製造自体は委託であるため、あの「スマホ事件」(※)のようなことが起きてしまった。「高級感」は諸刃の剣で、イメージにそぐわない安っぽさが露呈してしまうと足元からすべてが瓦解する。

 が、リファはそのような愚は犯さない。あのハリウッドセレブたちが認めた美顔ローラーすら今なお何度もリニューアルし常に製品力を高め続けているのである。

 つまりリファの「高価な価格設定」はハズしてはいけない芯の部分である「製品のよさ」を追求するためのコストであって、これがなければもはやリファではないのである。比較的安価なヘアブラシとて、顧客の世代交代を促すために値付けをしているわけではない。確かに他のリファ製品に比べると手を出しやすい価格にはなっているが、一般的なヘアブラシに比べると割高である。さらに製品としてもただの撒き餌としてデザインに特化したものではなく、ピンの三段構造や先端の丸形加工など単純にヘアブラシとしても優れている。つまり流行中のヘアブラシは美顔ローラーとまったく同じく「利用者に満足してもらって自社のファンになってもらう」という基本的なことがしっかり守られているのである。そう。大切なことだけは何も変わっていないのだ。

 さらに調べると初期にあった「ミステリアスさ」「希少性」が別の形に置き換わっていることが分かる。

 例えばリファは自社と自社製品を知ってもらうために、その製品を導入した宿泊施設を「コラボルーム」にするという。端的にいうとショールームのホテル版である。

 さらに2025年には銀座にグローバル旗艦店をオープンしたが、こちらも「体験」や「顧客とのリレーションシップ」の要素を打ち出している。

 TikTokを含む販路の急拡大はいわずもがなだが、これらのことから、近年MTGはより顧客に対し自分たちを身近に感じてもらう方向にPR戦略の舵を切っているようだ。「高級感」は残しつつ、それ意外の部分を時代と状況に合わせて巧みに変化させること。これが受け入れられたからこそ新規顧客の大量流入と売上の爆増が実現したのではないだろうか。

 パチンコホールに置き換えて考えてみよう。リファ式の顧客獲得のためには、まずは自社の強みをしっかりと確認し、その要素をハズさずにクオリティーを上げ続けることが必要だ。これがリファの「商品力」と「高級感」にあたる。顧客管理・地域密着が強いお店ならばそこを徹底して磨き、競合他店との差別化を図る。設置台のユニークさがウリならばそこはより明確にしてブランド化していく。内装や世界観に自負がある店舗はそこを徹底して突き詰める。イベントの強さと並び人数で勝負するのならばそこを極める。SNS運用や店長のキャラが好評を博す店舗はいっそ、そこを軸にして店舗づくりをするのもいいだろう。大切なのは自分たちのカラーのなかで何が一番の強みかを見極め、ブレずに突き詰めることだ。

  一方で、それ以外の枝葉の部分については時代に合わせて柔軟に、特に若い世代の嗜好に併せて変化させていかねばならない。

 リファが「ミステリアスさ」や「希少性」を捨て去って販路を拡大、トップブランドのまま新時代にチューニングして顧客の世代交代に成功したように、芯の部分に関係のない「自分たちはこういう会社だから」という自認は捨て去ってもいいのかもしれない。日常の業務においてはそういう不要なこだわりが足かせとなることもあるが、往々にしてそれは前の店長や運営会社が作った謎の風習だったりする。なぜそれがそのまま残っているかは簡単で「その方が楽だから」である。変化には痛みも伴うが、新しい時代の顧客を呼ぶほどの大きな改革のためには、案外そんな小さな変化の積み重ねが大事なのかもしれない。

 顧客の「世代交代」に成功しているとは言い難いパチンコ業界。完全に他業界とはいえ、これほど見事な形でそれに成功している会社があるのならば、それを見習わない手はないだろう。


※バルミューダは過去、高級家電ブランドとしての知名度を生かしスマホ事業に参入したが、価格に対して性能や魅力が十分でないと販売が伸び悩み、最終的に事業撤退に至った。

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