【特別対談】現場に根ざす政治 —「握手の先に政策があるんだ!」を全国へ

2025.10.24 / その他情報

国民民主・田村まみ議員×マルハンユニオン林万喜委員長

パチンコ業界の労働組合と上部団体のUAゼンセンと深いつながりを持ち、労働現場の声を政策に反映している国民民主党。自民党や立憲民主党が議席を減らす中、着実に支持を広げている同党において、参院選比例区でトップ当選を果たしたのが田村まみ議員だ。2度目の当選を果たした今、政治活動の原点とこれまでの道のり、そしてパチンコ業界が抱える課題と政治の接点について、業界との橋渡し役でもあるマルハンユニオン・林万喜委員長が聞いた。現場目線と生活者感覚を大切にしながら活動を続ける田村議員が語る「等身大の政治」とは—

労働組合と政策が合わさって結果につながった

マルハンユニオン中央執行委員長・林万喜(以下、林) まずは参院選挙2度目の当選おめでとうございます。20万5331票を集め、国民民主党でトップ当選でした。

田村まみ議員(以下、田村) ありがとうございます。労働組合の皆さまと、我々の訴えてきた政策が合わさって、結果につながったと感じています。支えてくださった皆さんがあってこその当選です。感謝しかありません。

 今回の参院選では国民民主党の飛躍が目立ちました。その要因はどこにあるとお考えですか?

田村 党に対する評価の変化は、昨年の衆議院選挙の頃から感じていました。急に注目を集めたわけではなく、結党以来ずっと一貫して伝えてきたことが、ようやく届き始めた実感があります。「手取りを増やす」という旗を掲げ、ずっと国民の生活と向き合ってきた。その姿勢が、物価高騰という現実の中で「自分たちの思いを代弁している」と受け止められたのではないかと思います。

現場主義と市民目線を大切にした地道な対話の積み重ね

 党の看板政策である減税についても、生活に直結する内容ですね。現状について教えてください。

田村 はい。国民民主党では「手取りを増やす」ことを最大の目的にしています。そのための手段のひとつが減税です。今、特に力を入れているのが基礎控除を178万円に引き上げるという政策。物価が上がっているのに給料が追いつかない中、税収は8兆円も上振れしている。取りすぎた分は国民に返すべき、という考え方です。

 消費税減税についての考えはどうでしょうか。

田村 もちろん重要な政策だと思っています。ただ、今の優先順位としては少し低い。というのも、政府としては「賃金が上がっている」という判断をしているので。ただし景気が失速しそうな場面では、迷わず「カンフル剤」として消費税減税を打つつもりです。そのための法案もすでに提出済みで、タイミングが来ればすぐ動ける準備は整えています。

 続いて田村さんご自身のことを伺いたいのですが、そもそも政治を志すきっかけは何だったのでしょうか?

田村 もともと「政治家になりたい」と思ったことは一度もありませんでした。労働組合での活動を通じて、職場で直面している課題が、実は社会の仕組みや制度と深く関わっていると実感するようになりました。「政治に無関心ではいられない」という感覚ですね。誰かがやらなきゃいけないなら、自分がやるしかない。政治に関心がなかった自分だからこそ、関心を持たない人々に訴えかけられるという自覚があり、立候補を決意しました。

 初当選までの2年間、どんなことを意識して活動されていたのでしょう?

田村 最大のテーマは、「どうやって一人ひとりと接点を作っていくか」でした。選挙は団体の力だけでは勝てません。だからこそ、私は全国を回って、できる限りたくさんの方と〝初めまして〟の握手を交わしました。また、「政治は暮らしである」という考えから、団体の上層部よりも、実際に現場で働く人とのつながりを優先しました。握手はその人の時間をもらう行為です。その瞬間に目を見て、少しでも話をする。それが信頼の始まりだと思っています。

好きなのはパチスロ。等身大の政治家

 握手の数を数えていたと聞きました。

田村 はい、私はもともとイオンで働く従業員でした。政治の世界とは無縁で、むしろ関心がなかった側の人間です。だからこそ、同じように「政治なんて関係ない」と思っている人の気持ちがよく分かる。その人たちとどうつながれるかを考えたとき、握手という行為はとても象徴的でした。だからこそ、どれだけの人と出会ったかを自分自身が記録し、責任を持って向き合いたいと思ったんです。

 少し話題を変えて、パチンコについても伺います。以前はよく打っていたとか。

田村 はい、好きでしたね。今は忙しくてなかなか行けませんが、シフト勤務だったころはよく1人でホールに通っていました。

 選挙戦最終日には、マルハン宮崎店と南宮崎店にも来てくださいました。

田村 あの日は非常に混んでいて、本当ならスタッフの皆さん全員と握手したかったのですが、接客が最優先ですので。それならとインカムを借りて、個人演説会として、想いをお伝えしようと。そういう現場の都合を理解して対応できるのが、私の強みでもあると思っています。現場で働いた経験があるからこそ、空気を読みながら臨機応変に動けるんです。

 パチンコ業界の印象についてはどう見ていますか?

田村 一人のファンとして語るなら「分煙への対応」が早かったなと思います。私が知っているお店だけかもしれませんが、コーヒーレディのスカート丈が長くなったのも印象的でした。社会で問題視される前に先んじて対応している印象を受けました。

 意外な視点です。

田村 今も昔もパチンコを悪く言う人は多いですよね。だからこそ「批判されちゃいけない!」と素早く対応しているのではないですか?

まずは身近なお客さまにもっと広報を

 確かにそういう部分はあります。パチンコ業界の社会貢献が大きく変わったのは東日本大震災からです。石原慎太郎都知事(当時)から名指しで批判され、社会からの轟々たる非難に晒されました。誤解を解くため我々はUAゼンセンを通じて川合孝典議員と相談し、節電啓発等担当大臣であった蓮舫議員へ直接説明できました。批判されちゃいけないと痛感するとともに、個人ではできないことも労働組合の力があれば大臣まで届くのだと知った契機でもあります。

田村 パチンコ業界は確かに多くの社会貢献をやっている。各ユニオンの方からも話を伺い、素晴らしいなといつも思います。でもホールへ来店される方はそれをほとんど知りません。まずは身近なお客さまに、もっともっと広報してもいいのでは。「我々は社会的課題に率先して取り組みました!」って。打たない人にばかり一生懸命アピールしてるように感じます。マイナスイメージを払拭したいあまり、お客さまへのPRが足りないように思いますね。

 業界としても耳の痛い話ですね……。

田村 せっかくいいことをしているのに、それが伝わらなければ意味がありません。例えば「この玉・このメダルが、社会貢献に使われています」と伝えられたら、遊技そのものに対する見方も変わるかもしれません。

 労働組合としても、現場の声を政治に届けていくことの重要性を訴え続けています。選挙の時だけでなく、普段から政治を身近に感じてもらえるよう、働きかけていきたいと思っています。

田村 私も同じです。「握手の先に政策がある」と実感してもらえるよう、これからも全国を回り、現場と政治をつなぐ存在であり続けたいと思います。1期目はがむしゃらでしたが、2期目は政策の立案と発信、そしてフィードバックを意識して、さらに深く、届ける政治を実践していきたいです。

【まとめ】現場と政治・政策をつなぐ「等身大の架け橋」として
田村まみ議員の語る言葉には、決して誇張のない等身大の説得力がある。政治家としての「志」よりも、「目の前の課題に向き合ううちにたどり着いた場所」が今のポジションであるという言葉は、多くの無関心層の心にも響くリアリティを帯びている。労働組合での経験に裏打ちされた現場感覚と、国政という舞台で培われた政策構想力。その両輪を支えているのが、何よりも「人との接点を大切にする姿勢」だろう。

握手の数を重ねる意味、インカムを借りてでも現場の声を拾い上げようとする行動力、そして現場の人間としての言葉で政策を伝える覚悟。それらが一貫して田村議員のスタイルであり、政治に希望を見出せなかった人々の「共感の入り口」となっている。

今後も、「政治に届かない声をどうすくい取るか」が問われる中で、田村議員のような現場に根ざす政治家の存在意義はますます大きくなるだろう。

<プロフィール>

⚫️田村まみ/1999年同志社大学神学部卒業、1999年ジャスコ株式会社(現イオンリテール株式会社)入社、2002年イオンリテール労慟組合(現イオンリテールワーカーズユニオン)中央執行委員、2016年UAゼンセン政策委員会委員、2017年UAゼンセン政策クループ、2019年7月第25回参議院議員選挙(比例代表)初当選。

⚫️林万喜/1974年7月3日生まれ、熊本県出身、マルハングループ労働組合連合会会長、UAゼンセン中央執行委員、UAゼンセン総合サービス部門執行委員、UAゼンセン総合サービス部門政治委員会副委員長。

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