増台後に差がついた!「平均アウトを落とさなかった」ホールの設計とは?

2026.02.15 / ホール

末年始のパチスロ増台は、多くのホールに一定の手応えをもたらした。しかし、その投資は本当に〝次〟につながっているだろうか。増台が横並びとなった今、結果を分けているのは設置台数だけではない。本企画では、増台後に平均アウトを落とさなかったホールの思考と空間づくりに迫り、増台後に何を設計すべきかを考える。


PART1️⃣
1月は増台効果を確認できた。でも2月は?

 「パチスロ増台が、平均アウト低下の引き金になることがある」

 これはあるホール店長の話。設備投資をしてまでそんなことがあってはならないのだが、その理由はこうだ。

 2025年末から2026年にかけて、「スマスロ沖ドキ!DUOアンコール」「スマスロ 化物語」「スマスロ 北斗の拳 転生の章2」「スマスロ鉄拳6」といった話題機の登場が相次いだ。これらのリリースを商機として、年末年始のタイミングでパチスロ増台を実施したホールも多かったことだろう。実際、1月の数字だけを切り取れば、客数が伸び、一定の成果も感じられたはずだ。 

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 一方、パチンコの稼働低下は、残念ながら歯止めがかかっていない。スマパチの登場によって一定の期待は集まったものの、市場全体を押し上げる起爆剤にはなりきれておらず、現状ではこれ以上パチンコに大きな投資判断を下すのは難しい、というのが多くのホールの共通認識だろう。

 その点、パチスロは違っていた。取材や演者来店による集客効果は可視化されやすく、話題機導入のタイミングでは平均アウトを押し上げるケースもここ数カ月は頻繁にみられるようになってきた。設置台数の推移を見ると、ここ数年でホールの投資軸はパチスロへと明確にシフトしていることが分かる。

 特に20円パチスロは、2022年から2025年にかけて、大幅に設置台数を伸ばしており、地域の1番店、2番店といった競争力のあるホールほど、その傾向は顕著に現れている。 

 つまり、「市場を制圧している店も、パチスロを増やしている」ということだ。この事実だけを見れば、パチスロ増台は正解の選択のようにも映る。

 しかし、ここで一度立ち止まって考えたい。「増台したのは、本当に自店だけだったのだろうか」ということ。同じことを考えていたのは、1番店も2番店も3番店も皆同じだったりする。

 結果として、エリア全体のパチスロ総台数は増加した。ここ2〜3カ月の動きを見ると客数も増えただろう。しかし、ここまで記載した通り、考えていたことはどこも一緒だったため、「稼働率を維持できず、平均アウトが低下する」という現象が発生。冒頭で書いたような声も多く聞かれる事態になってきたのだ。

 パチスロが好調であるということは、市場が求めているということ。ここに注力することはもちろん悪いことではない。しかし、それゆえに増台そのものに優位性がなくなってしまったということも言えてしまうのだ。総稼働量は増えているにもかかわらず、平均稼働が下がる。これは、パチスロ増台が横並びで行われた市場だからこそ起きている現象なのだ。

 ただし、すべてのホールが同じ結果になっているわけではない。地域ごとに詳細を見ていくと、パチスロを増台しながらも平均アウトを維持、あるいは向上させているホールが存在している。

 では、その違いはどこにあるのか。台数か、機種構成か、それとも別の要因なのか。これについては次見開きにて、2025年11月に増台施策を実施し、平均稼働率を上昇させた成功ホールを取材しているのでそこで語っていく。

 現時点では、パチンコよりもパチスロの方が朝イチから埋まっていくし、人気が高いことは事実。だからこそ2026年は、今以上にパチスロ増台を軸としたリニューアルオープンが増える可能性が高いと予想されている。4月のゴールデンウィーク前、7月のお盆商戦前といった時期には、再び大きな投資判断を迫られるホールも多い。そのときに、「増台したが、平均アウトが下がっていないホールは何をしていたのか?」という事実が参考になる。

 本企画では、パチスロ増台を目的ではなくきっかけと捉え、パチスロを増台している他の店との明確な差を生むための考え方を特集していく。同じ投資をしても結果が分かれる時代に入った。問われているのは、増台後の「設計力」だ。何が明暗を分けたのか、見ていこう。


PART2️⃣
(リニューアル成功事例に学ぶ)
設備投資にもっとも費用をかけたのはデータランプだった(DSGアリーナ高岡店) 

一般的に総台数を増やせば、平均稼働率は低下してしまう。しかし、何を目指すか、何を営業で表現するかで結果は変わる。増台リニューアルに成功したDSGアリーナ高岡店では、どんな裏技が存在していたのだろうか。


全体で稼働率15%アップ
DSGは何をしたのか?

 富山県高岡市で1154台の大型店を営業しているDSGアリーナ高岡店は、2025年11月にパチスロ増台リニューアルを実施し、客数は当然のこと、平均アウトまで上昇させるという数少ない成功事例がみられた。パチンコ島とパチスロ島の間にあった休憩スペースに一島増設し、36台のパチスロ増台を実施したのだ。

 増台対象となったのは当時新台としてデビューしたばかりの「Lパチスロ 革命機ヴァルヴレイヴ2」だった。 

「ヴァルヴレイヴ2」の島が増設したコーナー。市場がパチスロを求めているためパチスロの増台という結果だが、内情としてはパチンコの稼働がとても重要。青木店長は「パチスロだけしか狙い目がなくて、パチンコが全然打てないような環境が悪循環の始まりですよ」とパチンコホール営業の本質を取材で語ってくれた。

 年末に福井県の系列店グランドオープンとDSG片町店の大型リニューアルを控えていたが、あえて11月という時期にDSGアリーナ高岡店は増台施策を実施することになった。増台の背景にあったのはおそらくどのホールとも同じ。市場がパチンコよりもパチスロを求めているため、そのニーズに合わせて動いたというのが増台を決めた背景と理由である。

 結果、店全体の平均稼働率は増台前と比較して15%ほど上昇。特に46枚パチスロのピークの稼働人数が300人を超える日がほとんどなかった店舗だったが、増台以降は軽く300人を超え、土日になるとパチスロは満台でフル稼働する日も多い。 

ここまで明確な成果を上げたDSGアリーナ高岡店では、他の店舗と何が違っていたのだろうか。同店の青木学店長に話をうかがったところ意外な答えが返ってきた。

 「現パチスロ市場で業績を向上させるためにもっとも必要なことは、パチンコの稼働をつけることです。どんな店でも、皆さん朝イチは『東京喰種』や新台の『北斗転生2』に座りたいんです。でも、番号が悪くて座れなかった時に家に帰ってしまうのか、『この店はパチンコ頑張ってるし打つか』の違いです」

青木店長は「パチンコで多くのお客さまに楽しんでもらえる環境があるから、パチスロも強くいられる」という考えを示した。事実、店内でも人気の「エヴァ17」や「海物語」のコーナーには多くの良質なユーザーに支えられている。機種独自にデザインされたランキングTOP10などを見ても、その力の入れようが伝わってくる。

 店の売上を増やす先鋒の役割はパチスロが果たしているものの、パチンコで稼働をつけることで店のキャッシュフローは改善し、その分新台や出玉、広告宣伝といった部分に使えるお金が増えていくということだ。ちなみに、このリニューアルの際に、同店がもっとも費用をかけたのが、店の営業努力を雄弁に語ってくれるデータランプの新調だった。パチスロ全台にダイコク電機社の最新データランプ「BiGMO XCEL」と「DUALINA」を設置。パチンコも「REVOLA」を1から2へバージョンアップした。

 

データ非公開のDSGグループにとって、「店内で魅せる」ということは非常に重要な意味を持つ。そうした背景もあって、グループですでに導入していて実績のあるBiGMO XCELとDUALINAの設置がパチスロ増台の際に選択された。青木店長は「遊園地みたい」と表現するが、稼働が上がっていることが成功の証左だ。

 「リニューアルなので、見た目的にも大きく変わったことを伝える必要がありました。情報は見やすさが大事だと思ってそこも製品を選択した理由の1つです。DSGでは7月17日に福井県のDSGMEGA WORLD鯖江店のグランドオープンの時にもBiGMO XCELを導入していますし、金沢のDSG MEGA WORLDや野々市のDSGアリーナ野々市でもBiGMO XCELは導入していて、すでに実績があったんです。やっぱり雰囲気がガラッと変わりましたよね。私はあんまりランプとかにうるさく言う方じゃなかったのですが、液晶が大きいからお客さまが操作する回数が少ないというのは大事ですね。パチンコの状況が良ければパチスロにも設定入ってるって普通思うはずです」(青木店長)

 DSGの営業の本質は「すべてのお客さまに平等に」。リニューアルでは「何が変わったのかを明確にすること」。このために店長には決裁権があり、自由な判断をスピーディーに実行できる独自のガバナンスを行っている。ノルマとして課せられる売上や粗利に縛られず、長期的な視野で営業。しかし、店を存続させるために必要な稼働、売上、粗利を店長が考え、それを長期で実現していくことを目指す。だからこそ、単月ごとの〝粗利ショート〟といった概念が存在していない。

 それゆえに店長は必要なものを集めることができ、理想の形を目指していける。リニューアルによって、「殺伐とした感じではなく、遊園地みたいな賑やかな楽しい感じになりました」と店長は印象を語るが、その答えは平均稼働率がアップしたことに他ならない。  


PART3️⃣
増台後に成否を分けたのは「設計の差」
ユーザーへ何を表現するのか伝え方を考える

年末年始のパチスロ増台は、多くのホールに一時的な手応えをもたらした。しかし、その効果は本当に次につながっているだろうか。市場全体で増台が横並びとなった今、結果を分けているのは台数でも機種でもない。平均稼働を落としたホールと維持・向上させたホール。その差を生んだのは、増台後に何を設計したかだった。


増台後、瞬間的に客数が増えるのは当たり前。
その後、維持していけるかどうかが肝要。

 パチスロ増台は市場ニーズに合わせたと書くと聞こえはいいが、実際のところ単純な増台だけは稼働率を下げてしまうことになる。これは費用対効果の面で効率的とは言いがたく、店長個人が会社から下される評価的にも影響を与えかねない。当然ながら、ただ増やすというだけでは、そんな簡単に業績は向上しないのだ。

 増台はきっかけであり、来店したファンをいかに楽しませるか。その先に定着があり、繰り返し来店してもらうことで平均稼働は上昇していく。このポイントを抑えることが増台戦略において最も重要だということがよく分かる。平均稼働が落ち始めたホールでは、ある共通した兆候が見られる。まず起きるのは、評価軸のすり替えだ。増台直後の客数増加や総アウトだけを見て「ひとまず成功」と判断してしまい、平均稼働が下がっている事実が現場で十分に共有されないこと。稼働が割れている時間帯や島が増えているにもかかわらず、対策の初動が遅れてしまう。

 次に、ホール内の温度差が広がっていくこと。埋まる島と空き台が目立つ島が明確になり、通路から見た景色がまだらになる。実際の客数は増台によって増えているものの、ファンは数字ではなく雰囲気で店を評価することも多いため、「今日は静かだ」「なんとなく活気がない」という印象が先行してしまい、結果、滞在時間が短くなってしまうのだ。この悪循環が、さらに平均稼働を押し下げていくことがある。

 業界識者はこう言う。「パチスロ増台は、注目を集めるためには良い。でも平均稼働が1万を切っているようなところが増台したところであまり意味はないと思います。むしろ、注目を集めたその時に何を表現できるかが重要で、そこのビジョン次第で成功の可否は分かれるのです」。

 多くの店が増台施策で失敗してしまうのは、本来〝手段〟であったはずの増台が、〝目的〟にすり替わってしまうからだ。増台することで満足してしまい、増台で集客した稼働がそのまま維持できると勘違いしてしまうのである。

 さらに問題なのは、客数が想定ほど伸びなかった際に、対策が場当たり的になってしまう点だ。せっかく費用をかけて増台したにもかかわらず、稼働率を維持しようと短絡的に5円パチスロを増やしたり、島替えを繰り返したりする。これらは根本的な解決にはならず、「何をやりたいのか分からない」という印象を与え、かえって新規ユーザーの定着を妨げてしまう。

 こうしないためにはビジョンがもっとも重要で、次に考えるべきは、増台をきっかけに普段来店していなかったユーザーが来店した時に、新しい魅力を伝えることができるかということ。そこでは、店側が「変わった感」を演出することがもっとも重要になっていくのではないだろうか。

 たとえ増台によって総アウトが増えたとしても、平均稼働率が低下すれば、ファン目線では「客入りが悪くなった店」に映ってしまう。繁盛するパチンコ店を目指す上で、最大の敵は「閑散とした雰囲気」だ。客の少なさは連鎖的に客離れを引き起こし、気づいたときには回復に時間がかかる状態に陥る。増台リニューアルが裏目に出る瞬間があるのだ。増台によって変わった感の演出をした上で、来店ユーザーをファン化させる二ノ矢、三ノ矢の施策を実施しないと飽きられることは必至だ。

 年末年始に増台し、平均アウトが落ち込み苦しんでいるホールも多く存在するが、施策の結果を限定的であったと判断するのは時期尚早。ゴールデンウィークやお盆休みの直前に照準を合わせ、再び第二弾のリニューアル施策等を練り直し、「何が変わったのか」を明確に伝える空間づくりと仕掛けを計画すべきであろう。


(以下、ホールのアピールポイント①〜⑥)

 

 

 

 

 

 

パチスロ増台