実地調査の簡略化 設置から営業開始までの 〝タイムラグ短縮〟がもたらす 「経営」と「現場」のメリット

2026.02.01 / ホール

2025年11月、警察庁は遊技機の増設・変更に伴う「実地調査」について、全国的に運用を見直し、その一部を省略する方針を示した。長年、ホール現場にとっては大きな負担であり、かつ「設置したのに稼働できない」という機会損失の要因となってきた。この運用変更は、単なる事務手続きの変更にとどまらず、ホールの営業戦略や現場スタッフの働き方に大きな変革をもたらす可能性を秘めている。本稿では、今回の措置の正確な内容と背景、そして今後ホール現場が享受できるメリットについて解説する。

所轄の立入検査がナシになる!?「実地調査の一部省略」

今回、警察庁が各都道府県警察に通知した方針転換は、遊技産業にとって長年の懸案事項に一つの区切りをつけるものだ。正式には「変更承認申請に係る実地調査の一部省略」と呼ばれるこの措置により、新台入替や配置変更の際に行われてきた、所轄警察署員による現地での実地調査が、一定条件下で不要となる。

従来は、変更承認申請から承認通知書が交付されるまでの間、あるいは交付直前に、警察官が店舗を訪れ、遊技機の製造番号確認や封入状態、島配置図との整合性、不正改造の有無などを直接確認する工程が組み込まれていた。

この「立ち入り」という工程は、制度上は安全確認のための重要な手続きである一方、営業者にとっては日程調整や立ち会い対応が不可欠であり、心理的・時間的な負担も小さくなかった。特に問題視されてきたのが、設置工事を終えながらも稼働できない「空白期間」の存在だ。

実地調査の日程次第では、数日間にわたって新台を眠らせる状態が生じ、その間の売上機会を逃すケースも少なくなかった。

今回の措置では、書類審査に不備がなく、過去の営業実績や不正事案の有無などを総合的に勘案して問題がないと判断された場合、原則としてこの物理的な立入検査が省略される。

書類審査が完了し、承認通知書が交付された時点で、直ちに営業の用に供することが可能となる点は、ホール経営にとって極めて大きな意味を持つ。

日遊協の広報誌(2025年12月号)でも、「新台入替等に伴う実地調査の一部省略は、ホールの業務負担軽減につながる」と明確に位置づけられており、業界全体としては歓迎ムードが広がっている。

背景にある警察業務の合理化と業界への信頼度の向上

では、なぜ今、このタイミングで実地調査の簡素化が実現したのか。その背景に、大きく二つの要因がある。

一つは、警察業務全体の合理化である。

匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)への対応、悪質ホストクラブを背景とした人身売買や売春行為の摘発など、社会的に緊急性の高い事案が増加する中で、警察組織には限られたリソースをより重点的に配分することが求められている。

その流れの中で、定型的で再現性の高い業務や、リスクが相対的に低い分野については、運用の合理化・簡素化を進めるという判断がなされた。

もう一つの要因が、遊技業界に対する「信頼度」の向上だ。

日遊協は今回の措置について、「不正事犯の減少等に鑑み、以前から警察庁に見直しをお願いしてきた」と説明しており、その前提として、業界全体で長年にわたり不正排除や自主規制に取り組んできた実績を挙げている。

スマート遊技機の導入による不正防止体制の強化、旧規則機の計画的撤去、広告宣伝ガイドラインの策定と順守、さらには遊技産業健全化推進機構を通じた第三者チェックへの協力など、業界自らがルールを整え、遵守してきた積み重ねが、今回の判断につながったと言えるだろう。

今後は警察署内のデスクに座って書類に「承認」スタンプを押すだけという簡素化が進むだろう。

今後の期待〜入替のための店休日はなくなるか?

ホール側にとって、実地調査がもたらしてきた最大の問題は「稼働ロス」、すなわち機会損失だ。

遊技機の設置が完了しているにもかかわらず、実地調査の日程待ちのために数日間、電源を落としたまま待機せざるを得ない「寝かせ期間」は、売上だけでなく、営業計画そのものに影響を与えてきた。特に繁忙期において、このタイムラグは莫大な売上損失を意味する。

また、実地調査には店長や管理者の立ち会いが必須とされるため、調査時間帯が確定しない場合には、シフト調整や現場指示にも神経を使う必要があった。地域によっては、調査対応を前提に店休日や半休を設定せざるを得ないケースもあり、これが慢性的な負担となっていた。

今回の「実地調査の一部省略」によって、こうした構造的な問題が大きく改善される可能性がある。

最大の変化は、入替戦略のスピード感の向上である。

「実地調査の一部省略」の内容や開始時期については、各都道府県警察と地域の組合が細かく打ち合わせていくことになるであろうが、入替検査のための店休日や半休の廃止や、新台の稼働開始時間の前倒しなどが実現する可能性は高い。また今後、パチンコ島をパチスロ島へ変更するなどの大規模な設置や配置の変更に対しても、「寝かせ期間」の短縮が予想される。

すでに組合と県警の間で調整が進んでいる地域でも、さらなる短縮も検討されていくだろう。スマスロ・スマパチの普及により、不正対策がより強固になった状況で、目視検査の必要性は相対的に低下しており、今後はホール側の自己管理能力がより重要視される時代へと突入する。

従来、ホールの現場管理者は、警察官の実地調査の日時に合わせて立ち会いが必要だったため、事前に待機していなければならかった。

また、実地調査終了まで入替機種も開放もできなかった。今後はそうした時間的ロスや機会損出も軽減されそうだ。

 

新台早期開放と管理者負担の軽減へ追い風

今回の「実地調査の一部省略」に対するホール現場の受け止めを聞いてみた。

都内ホールの主任は、「所轄が立ち入りをしなくなるのは、時間的にも気持ち的にもかなりのメリット」と話す。調査当日は担当官の来店を待つ必要があり、開店直前まで来ない場合には強いプレッシャーを感じていたという。

一方、千葉県内のホール店長は、都道府県ごとの運用差に言及する。

毎回必ず実地調査が行われる地域、ランダムで実地調査が行われたり、行われなかったり、または時間差があったりする地域や店舗が混在する中で、公平性を保つために「設置から解放まで1日置く」という県遊協の自主ルールを設けてきたケースもあった。そうした中で、「全国的に省略されるなら、その1日が不要になる。これは素直にありがたい」と期待を寄せる。

その他、好意的な声の多くは、「新台の早期開放によりお客さまに喜んでいただける」「実地検査対応で管理者(店長)の立会が必須であったが、今後はその負担が軽減される」「店休日がなくなれば、営業戦略が変わる可能性がある」などがあった。

その一方で、「実際はそれほど変わらないのでは」「そこまで意識していなかった」という声があるのも事実だ。

最終的な運用は都道府県警察の判断に委ねられる部分が大きく、書類の電子化や運用基準の明確化など、今後の詰めが制度の実効性を左右する。

そして忘れてはならないのが、この制度が「性善説」に基づいているという点である。

警察庁は不正改造事案の絶無を強く求めており、万が一、この運用を悪用する事案などが発生すれば、制度そのものが見直される可能性もある。

実地調査の簡素化は、ホール企業が行政手続きの調整業務から解放され、本来注力すべき営業・サービスにリソースを振り向ける好機である。と同時に、より高いコンプライアンス意識が求められる時代の到来を意味している。

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