もしもパチンコ・パチスロにこんな機能があったら

2025.12.02 / メーカー

新機能、続々登場

2025年のパチンコ革命、イヤホンジャック搭載機の導入

2025年10月6日、パチンコホールに「Pスーパー海物語IN沖縄6」が導入された。本機種は導入前から大きな話題となっていたが、筐体にイヤホンジャックを実装している。イヤホンプラグを持つ有線のイヤホンをジャックに挿し込めば、遊技台から発せられる音をイヤホンで楽しむことができる。これまでイヤホンジャックを実装した筐体の導入はなく、今後登場する機種にも実装が期待される。

ⒸSANYO BUSSAN CO.,LTD

 

新たな機能という点で考えると、2021年12月20日より導入された「新世紀エヴァンゲリオン〜未来への咆哮〜」の「スマートハンドル」は、間違いなくその後のパチンコ開発に影響を与えたと言えるだろう。ハンドルを枠の中央部に設置し、右に捻って玉を打ち出すのではなく、奥に向かってハンドルを捻り操作する。ハンドルの左右どちらの方向からでも操作ができ、アームレストも実装されているため長時間遊技をしても疲れにくい仕組みとなっている。本機はゲーム性やスペック面も含め評価され、全国のホールでメイン機種として長きにわたり君臨しており、2025年10月13日〜19日の週をもって稼働貢献200週を達成というとんでもない実績を残した。本機がユーザーに受け入れられ、スマートハンドル含めて今までにない形のハンドルの認知が進んだことからも、のちに各社から登場するハンドルの設計に影響を与えたと言えるだろう。

 

令和の時代に即した タイパ重視の遊技

液晶演出の側面から考えるならば、「eシン・ウルトラマン」に実装された「P-スキップ機能」も他の機種にはない独特の機能だ。

©2022「シン・ウルトラマン」製作委員会 ©円谷プロ ©OK!!

ヘソに玉が入賞した後の変動中に、液晶の上部にある「P-スキップゲート」に玉を通過させると、ゲートの先にあるポケットへ玉が入賞した時に、ハズレを引いていた場合は液晶演出がすべてキャンセルされ強制的に変動が終了する。もしハズレを引いた上で数分にわたる演出に発展した場合、P-スキップ機能を活用することで相当な時間短縮となる。玉がゲートの先のポケットに入賞した瞬間に当否が告知されるため、ある種の〝完全告知モード〟としてゲーム性が成立しているのも面白い要素だ。

 

「P-スキップ機能」とは少し異なるが、2025年3月17日に導入された「e真・北斗無双 第5章 ドデカSTART」にも演出スキップ機能が実装されている。

©武論尊・原哲夫/コアミックス 1983 版権許諾証KOW-225

©2010-2013 コーエーテクモゲームス

©Sammy

変動中に筐体の十字ボタンの近くに設置されている緑色のボタンを押すと、液晶上でシャッターが閉まって演出が強制的に終了する。しかし変動時間は変わらないので、時短のための機能ではなく一発告知を発生させるための機能と考えたほうがいい。

 

パチスロへ目を向けると「L無職転生」にて市場導入を予定している、ニューギングループの新筐体「MIRAI-H」もお披露目された。

本筐体の最大の特徴は、パチスロ筐体に必須だと思われていたレバーが存在しないという点だ。MAXBETとレバーオンの役割を両方とも担うボタンがあり、このボタンを押下することでリールが始動する。そしてリールを停止させるストップボタンは地面と平行方向に設置されており、ストップボタンが地面と垂直方向に設置されていた従来の筐体と一線を画す要素だ。

 

すでに起きた革命機能①

演出スキップ機能

「P-スキップ機能」は「小当り」を上手く活用して実現した仕組みだ。「eシン・ウルトラマン」では、ヘソに玉が入賞するとハズレor大当りの抽選を行う。そして「P-スキップゲート」を通過した先のポケットに玉が入賞すると小当りの抽選を行う。小当りの当選率は約1/1となっているため、「P-スキップゲート」に玉を通せばほぼ確実に小当りを獲得できる。液晶で発生する演出には優先度があり、優先度は大当り、小当り、ハズレの順に高い。つまりヘソの抽選でハズレを引いた場合、小当りが発生すればハズレの演出をキャンセルして小当りにひも付いた演出に書き換えることができる。本機は小当りの演出を非常に短い内容に設定することで、あたかもハズレの演出のみをスキップしているように見せているのだ。ヘソの抽選で大当りを引いた場合は、小当りで書き換えることができないので、大当りの変動を最後まで見届けることとなる。

 

すでに起きた革命機能②

ニューギンのレバーレス筐体「MIRAI-H」

 

 

一見すると、ゲームセンターなどに設置されている格闘ゲームの操作部分のようにも見える。レバーがないのが本筐体の最大の特徴だが、リールを停止させるストップボタンの間隔が非常に狭いのも特徴のひとつだ。片手で操作しやすく、操作にあたって腕を大きく動かす必要がないため、長時間の遊技に適しているだろう。本筐体のPVで謳われている「よりシンプルに・より長く・より楽に」という趣旨が体現されている。他にも下パネルが存在しない代わりに液晶上部(スピーカーが設置されている箇所)がパネルとなっており、コンテンツに応じたデザインにカスタムできるようだ。

 

遊技機に実装可能な機能を考える

もしもの話を展開する際、我々PiDEA編集部が風適法、および遊技機規則(遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則)を細かく確認して検証する、という手段も考えたのだが、やはりここはプロの意見を伺いたいところ。ということで本稿の執筆にあたり「ジェイさん@発信する遊技機クリエーター」にお時間をいただき、もしもの是非について話をうかがった。 

ジェイさん@発信する遊技機クリエーター

略歴:新卒で遊技機メーカーに就職、入社直後はプログラマーとして案件を担当しつつ、のちに進行管理を担当。メーカーを数社渡り歩いた後、今日に至るまでフリーの遊技機開発者として活躍。現在はJ-BEAT合同会社の代表取締役として遊技機の開発を請け負うかたわら、業界誌や媒体への寄稿、自身のnoteなどを活用して情報発信を継続的に行っている。

Xアカウント:https://x.com/jsan65536

 

 まず大前提として、遊技機における機能の実装は大きく分けて4つの観点から実現可能性を考える必要があるという。

 

①に関しては、遊技機規則(遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則)という法令で定められた内容に反する台を販売することはできない、という話だ。当然のことではあるが、遊技機を制作・販売するためには、遊技機規則で定められた内容を遵守することが求められる。例えば、パチスロのメダル関連の部分だ。「1ゲーム回すために必要なメダルは3枚まで」「1回の入賞で獲得できるメダルの枚数は最大で15枚まで」などの基本的なルールについても、事細かに遊技機規則に明文化されている。ことあるごとに話題になる型式試験での出玉率についても、当然記載がされている。非常に細かいルールが無数に存在する法令だが、これらの規則と内規(自主規制)をすべて遵守した台でないと、市場に出回ることは決してない。

②に関しては、パチンコ・パチスロ業界にとどまらず、現代の科学において実現できないことは当然不可能だ。

③は、パチンコ・パチスロの製造販売はビジネスとして行っている以上利益を追求すべきもの。どんなに革新的な機能を実装したとしても、ホールが購入できないほど高価となれば、メーカー側も制作をするメリットがない。

④のコンプライアンス的な側面に関しては、日々メディアやSNSに触れている皆様であれば察しがつくだろう。当然メーカーの開発者は、会社の看板を背負って制作した台を世に出すこととなる。

これらの4項目をすべてクリアするようであれば、実際に筐体への実装、及び実装された台の販売というところにまで漕ぎ着けられるかもしれない。

 

実現なるか、まだ市場にない新機能

はじめに液晶演出に関連する部分から検討していく。まずは「液晶演出を任意のタイミングで一時停止できる機能」について。ユーザーが任意のタイミングで液晶演出を停止できれば、出現率の低い演出をじっくり楽しめたり、停止した画面を撮影してSNSで共有できたりする。こちらはジェイさんによると「技術的な側面からは実装が可能」なようだ。「実際に導入されている遊技機において、エラー処理中やホッパーエンプティー時の表示などの際は、液晶演出とは別の画面に切り替わるが、内部的な処理としては液晶演出を一時停止するような処理が行われている」とのこと。現にエラーを解除すれば、エラーが発生する直前の演出から再スタートするのは筆者も遊技中に経験したことがある。

しかし「実際のホールで、任意のタイミングでの一時停止ができてしまうと、規則的な部分に抵触する可能性」があるとのことだ。例えば獲得枚数の「456枚over」などで止められてしまうと、射幸性をあおるような要素の1つとなってしまう。

次にデバイス関連。直近では「沖海6」でイヤホンジャックが実装されたが、Bluetooth機能が実装されればワイヤレスイヤホンを接続することも可能ではないか。ジェイさんいわく、これに関しては「規則的な側面では2024年8月23日より施行されている解釈基準において、音声の出力に関して外部出力が可能となった。技術的な側面でも『花慶の日2024』にて試作機が公表されているので可能だ」とのこと。

しかし「メーカー視点で考えると、Bluetooth機能を実装するだけ機械代が上昇してしまうのは避けられない。加えてBluetoothの機能がユーザーに受け入れられるかという市場全体での問題も存在する」とのこと。リスクを冒して実装するかは各メーカーごとの判断となるだろう。

 

風が出るなら他のものも?

筐体から風が出る機能はすでに実装がされているが、これが匂いや水だったらどうだろうか。

匂いに関しては、「現行の規則上実現が難しい状況」のようだ。大前提として、「遊技機を型式試験で適合させるには、ホールに設置されている限りは機械の性能が変わらないような設計にしなくてはならない」とのこと。つまりホールに一定期間設置しても、常に芳香性能が変わらない仕組みを作らない限りは実現が難しい。もしこの先そのような仕組みが開発されたら、演出の一環として匂いを発する装置を実装した台が導入されるかもしれない。

上記の大前提をもとに考えると、筐体から水を放出するデバイスも実現が難しいと考えられそうだ。筐体に貯めておける水量には上限があるため、ホールに設置を続ける限り、変わらずに水を放出し続けるということが難しいと考えられるだろう。

しかし、過去に遊技機の筐体に水を使用して市場に販売された台が存在する。それが平和から販売された「CRおよげ!たいやきくんV」(2005年)だ。

©️高田ひろお ©️平和

液晶の前面に本物の水を張った「アクアディスプレイ」を置き、一定のタイミングで画面下から本物の泡が出る設計になっている。筆者が確認した動画では、ただ泡が出るだけではなく液晶のリーチアクションと連動して泡が発生しているようにも見られた。

水を使用した装置自体は開発が進んでいた過去があった(あるいは現在もどこかのメーカーで進行中という可能性もある)が、水が装置を通して筐体外部へ飛び出る仕組みの実装はまだ先になるだろう。

 

クリエイターは常に未来を見据えている

最後に、ジェイさんご自身についても質問をぶつけてみた。

まず「コスト面を考慮しなくていいのであれば、どのような台を制作したいか」という質問をしたところ、タイミングによって作りたいと考える台は毎回異なる、とのことだった。というのもジェイさんが主に担当している業務領域は、ディレクターとして全体の進行管理。やはり視点は、スケジュールや予算なども含めた制作工程にあるようだ。予算に関連した部分でいうと、いかに限られた予算の範囲で良い台を作るか、という点に興味を持つことがあるとのことだった。

また「現代において遊技機開発に生かせるかも、と注目している技術はあるか」と質問したところ、映画館で採用されている「4DX」と回答があった。4DXはいわゆる体感型の映画上映システムで、座席が前後・上下・左右に動いたり、映画のシーンに応じて水が降ったり風が吹いたりするので、映画を体全体で感じることができる仕組みだ。

パチンコ業界においては、座席が光ったり振動したりすることで臨場感を高める仕組みは存在するが、遊技機そのものが4DXに近しいユーザー体験を提供することはほとんどなかった。もしこの先近しい機能を有した台が導入されれば、ジェイさんが裏で一枚噛んでいるかもしれない。

 

総括

一通り質問をぶつけてみて感じたが、我々が想像できる範囲の機能に関しては、メーカー側はすでにとっくの昔、下手したら10年も20年も前に検証され尽くした機能なのかもしれない。そう考えると、今まさにメーカー内で開発が進められている機能は我々の想像をはるかに凌駕する領域で開発が進んでいるはずだ。遊技機の進化は、常に開発者たちの挑戦と発想力によって支えられてきた。規則・技術・コストという制約を乗り越えながらも、プレイヤーを驚かせる新しい体験を追求している。これからも「できない」を「できる」に変える開発者の創意工夫が、業界を前進させる原動力となるだろう。

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