岡野陽一の今月の汁台「人生はやめ時の連続だ。芸人なんてその極み」
2025.11.24 / 連載「借金芸人」岡野陽一が送る人気連載をリニューアル!
変わったようでいて変わっていないかもしれない。パチンコを打っていく中で岡野陽一がたどり着いた人生の境地を、月替わりの金言とともにお楽しみあれ。
「人生はやめ時の連続だ。芸人なんてその極み」
ありとあらゆる事象には、「やめ時」というものが存在いたします。
カジノをしていて特に思うのは、結局のところ、帰りの飛行機の時間が迫ってきているギリギリの1、2回が勝負で、それまでの時間は例外なくそのためのフリみたいなもの。カジノなんて最終的にプラスになることを目的とするなら、マーチンゲール法で勝つまでやって浮いたらやめというのが正しいやめ時なのではないでしょうか。
その点、私の考えを述べさせていただきますと、パチンコにおけるやめ時は閉店、これ一択です。すべてのやめ時は目的によって左右されます。その目的というのが実はみんなそれぞれ微妙に違います。極端な話、プラスにすることが目的なら、1ゲーム目でベルを引いたらプラスなのだからそこで帰れば目的達成です。でも、現実にはそんな人はいないので、とにかくプラスになればいいという目的は実は存在していません。
要するに自分が満たされるか満たされないか。この点、今の時代コンプリートというのは明確なやめ時になるかもしれませんが、私からするとそんな調子がいい日はめったにないので、もっといけるかもしれないと思って2台目のコンプリートを積極的に狙っていきたいですね。その結果、出玉を削ることになったとしても後悔はしないでしょう。
とはいえ、私も一心不乱に打ち続けるほどメンタルが狂った人間ではないので、「出ないな」と思ったらやめます。私がやめる時というのは、レバブルハズシです。信頼度90%はハズレることもあるけど、95%以上の演出をハズした時は100回転くらい打ってお詫びの大当りがこなければやめです。
お詫び当たりの存在は残念ながらオカルトではなく統計上(※岡野調べ)の事実でして、皆さんもきっと経験があるはずなのに認めない方が多いですね。製作者のことを考えると、あってもおかしくないと思いませんか。
あとやめ時にもっとも影響するのがお金の面ですね。競馬とかスクラッチとかもそう。一度ベットしてしまったら、「あと一回やったら当たるかもしれない」という恐怖心との戦いです。石油をめちゃめちゃ掘っていて、全然出ないと。でもあと一掘りしたら石油が湧き出してくるかもしれない。パチンコと一緒で、どの判断が正解かは永久に分からない。だから数字化しちゃダメなんだと思います。納得いくか、いかないか。メンタル的なものが判断基準になると思います。
借金とかもそうですね。借りるのは10万円までと決めたらそれ以上は借りないでいられる人と、借りることをやめられない人がいます。借金については、私は借りるのをやめたら負け的な原理主義者なので、語るのはちょっと苦手な分野かもしれません。
期待値がないもの。パチンコなんかも基本的にはお店が勝つようになっているそうなので、「パチンコやるやつはバカ。やらない方が勝ち」みたいなクソみたいな理論はありますけども、数学的には正しいんですよ。ただ、それに対して言いたいのは、数学的に正しいことと、人として正しいことって違うということです。期待値人間、素晴らしいじゃありませんか。でも私は違う。
芸人なんて仕事はまさにやめ時との戦いです。若手の時なんて芸人の仕事も何にもなく、月収1万にも満たない日々を何十カ月も過ごしながら、付き合っている彼女や親からは「待てるのは何歳までだよ」とか言われたりします。早くから売れていく人もいますし、ベテランになってから売れる人もいますし、めっちゃ面白いのにやめていったやつもいます。だから、いつ売れるかなんて分かりません。そういう意味では芸人なんて特に、やめ時があるって言えないし、言いたくないのもあります。「5年やって売れなかったらやめたらいいよ」なんてことを言う人もいますが、私はそんなこと言えません。責任も負えないですからね。
かくいう私も「やめる」という選択はなかったものの、当時の相方から「俺らもそろそろ将来を考えないとな」という話は当然ありましたよね。私は「何言ってんだ」としか思わなかったですけどね(笑)。やめ時を決めるというのは一個の逃げだと思うんです。パチンコも勝ち逃げか、負け額を最小限に止める損切りみたいな感覚。すべては結果論なので、後で後悔しないためにも、やめ時なんて本当はルール化した方がいいんですよね。そっちの方が悩まなくていいので楽じゃないですか。自分が選択するならまだしも、他人に「やめ時はこうだ」という人は詐欺師だと思っていますけどね(笑)。それっぽいことを言うのはいいけど、責任をとってくれるわけでもないし、人の言うことで決めない方がいい気はしますけどね。嫌になったらやめればいいと思うんですよ。それが正しい気がします。
私も今でこそ芸で食えるようになりましたが、来年どうだとか分かりませんし、やめ時の恐怖とは今でも戦っていますよ。今のところ自覚はないですけど、不祥事とかあったら復帰できないでしょうし(笑)。そういうことを考えていると、何事も始める方が断然楽で、やめるという決断をする方がよっぽど大変なんだなと思います。
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