岡野陽一の今月の汁台「岡野陽一的〝変だな〟と思う仕事」
2025.07.17 / 連載「借金芸人」岡野陽一が送る人気連載をリニューアル! 変わったようでいて変わっていないかもしれない。パチンコを打っていく中で岡野陽一がたどり着いた人生の境地を、月替わりの金言とともにお楽しみあれ。

岡野陽一的〝変だな〟と思う仕事
変な仕事で考えると非常に難しいですね。我々芸人にとっては「変だな」で考えると、どうしてもドッキリとかになってしまいますからね。また、単純に「どこから金が出て、誰が喜んでいるんだろう」という変さもあります。
変だなということでいうと、「なんで自分みたいな者をグリーン車に乗せるんだろう」「私のことを何だと思ってるんだろう」というのもあります。ありがたいことなんですけど、申し訳ないというか、単純にもったいない。その分ギャラを上げてくれたらいいのにと。
でもいまだに覚えているのは、TBSの企画でリアルカイジみたいな鉄骨わたりの企画がありました。1位になると300万円もらえる企画で、若手ギリギリくらいの時だったのですが、鈴木もぐらなんかもいて、一般の人もいたりしました。その時、「我々なんて所詮タレントなんだな」と思わされた出来事があります。
目隠しをされていて、扉がバーンと開くと、目の前には10階建てのビルに鉄骨がかかっているわけです。鉄骨の下には網が張ってあるけど、命綱はなく、夜なので、下も見えないほど暗い。冷静に考えたらテレビで死ぬわけはないのですがやっぱり怖いものは怖い。芸人として「なにこれぇー」「無理無理こんなの」とリアクションをする時間が必要なのですが、我々芸人が騒いでいる間に素人組の人たちはとっとと渡っていってしまうんですね。その時に野良の人間のたくましさを実感しつつ、「テレビ業界って優しいんだな。ひょっとしたら甘いんじゃないか」とすら思わされました。
若手の頃なので、当然300万なんて大金欲しいに決まってます。テレビでよくある賞金系の番組で、芸人が賞金を狙うことについては、何が正解かは難しいところです。私の場合は間違いなく賞金狙いなのですが、ある程度上の方になると違うのかも。
例えば、TBS感謝祭の後夜祭とかに出た時、正直そんなにボケるところはありません。あれは本当に不思議なご褒美みたいな仕事です。2、3時間生放送して、一言もしゃべらないこともありますし、あれが一番特殊かもしれません。何せ賞金をもらえないとしゃべるチャンスがないのですから、意外と真剣にやることが芸人として正解なのかもしれません。
そして、皆さんが気になるのは、「本当に本人が賞金をもらえるのか」だと思いますが、昔はタレントと事務所で割っていたと思いますが、今はほとんどの事務所が全部芸人が持っていくようになっているんじゃないですかね。 逆にやっていて、お金が減っていく企画もあります。「くずパチ」なんかがそうなのですが、実戦の結果だけで言うとめっちゃマイナスです。でも昔からパチンコを打っている身としては、元来金がもらえることじゃないのに、遊んでいるだけでなので、収支は正直どっちでもいいと思っています。
ある程度お金を持てるようになった今と昔とでは、どっちも良さがあって比較することはできません。私は基本後付け人間なので「今の方がマシだな」と思うようにしています。
昔は毎日ライブに出るような生活をしていましたが、昔は昔でめちゃくちゃ楽しかったし、売れてない同士で鳥貴族に行って、コンビニで缶ビール飲んで帰るみたいな遊びしかしなかった時でも、いつか売れるとずっと思いながらやっていたので、感覚としてはゴッドを打っているようなものです。8192のフラグさえあれば通常時も楽しいみたいな。
ただ私の場合、昔に比べて所得が上がったとしても、生活レベルは変わらないんですよね。なぜなら、給料を毎月ずっと使い切っているから。唯一変わったのはご飯くらいじゃないですかね。ギャンブルで負けるお金が給料分増えただけで、後はまったく何も変わっていません。
結局、ないものを増やすのが楽しいんですよね。もし今お金がなくなったとしても1パチはやらないでしょう。汁が出ないから。どんなにお金がなかったとしても、4円パチンコを打ちます。これね、使う額に関してはどっちでも良いんですけど、出た時に「損したな」という感覚が本当に嫌なんです。だから乗り打ちを嫌う理由もそれです。
こんな考えだから借金ができるんでしょうね(笑)。ギャンブルは減れば減るほどやりたくなるものですから。分かりませんか? お金がないからギャンブルをやるんですよ。逆に腐るほどお金があったらギャンブルもつまんなくなってしまうかもしれません。お金はなくとも、「今日、勝てるかもしれない」と思って打つ感覚が汁です。今日パチンコに行くことによって明日からの人生が変わるかもしれない。さらにパチンコですごい勝ったら週末のG1にもっと大きな金額をぶち込めるわけです。
私の場合、ご褒美もギャンブルなので、だからご飯だけはいいものを食べるようにしています。どうせなくなるというのを覚悟しているので、ご飯だけが唯一お金が有意義に使えることなんです。普通の人には分からないかもしれませんが、人格が2つあるようなもので、「使われる前に使う」という感覚です。もう一人のアイツから守ってあげているわけです。
