岡野陽一の今月の汁台-No.05「汁とストレスはお友達」

2024.01.23 / 連載

編集者「岡野さんストイックになっていませんか?」

抽選を受けることが大好きな私ですが、パチスロではあまり汁が出ません。多分、自分のレバーオンで引けるか引けないかによって結果が大きく変わる感じが好きじゃないし、そもそも最初から引けないもんだと思ってレバーを叩いているからだと思います。パチスロは大事な時に引けるか引けないかというのがストレスで、常にこのストレスを受け続けないといけません。

長年パチンコ・パチスロを汁のためにやってきた私ですけども、汁だけを求めるとやっぱり疲れちゃうんですね。「そろそろいい加減に引けるだろう」と期待し続けるのが耐えられなくなってきつつあったので、最近ではどっちかというと、ストレスがかからないように、〝絶望ベース〟で打っていました。

ただですね。汁とストレスは表裏一体。汁の一番の友達がストレスなんですよ。汁には常にストレスが付きまとっていて、逆にストレスがないところに汁はありません。スポーツ選手なんかそうじゃないですか。何年も何十年もその道を突き詰めて高い壁を乗り切って最高の汁を出すのです。


 

自分ではあまり1年を振り返るなんて作業をしないのですが、今編集者さんから「2023年はいかがでしたか?」という平凡な質問をいただきましたので、仕方なくちょっと振り返ってみたいと思います。

私はこの世で一番嫌いなものがストレスなんですが、2022年後半はキングオブコントだったり単独ライブだったりのストレスがすごかったので下半期がずっとつまんなかったですね。

それに比べて、岡野的2023年はすごい平穏、凪でした。レギュラーの仕事がちょこちょこ増えたりはしましたが、2022年と比べてもそんなに大きな変化はない。特にストレスが溜まることがなく、毎年これくらいの一年でいられたらいいなと感じて過ごしてきましたが、逆に言うと欲もなかったなという気がします。改めて振り返ってみると、それこそもうちょい汁が出る生き方をした方がいいんじゃないかなと思ったりもするわけです。ストレスがなかった分、汁の量はどうしても少なくなっちゃいますしね。

そうなんですよ。岡野というのは面倒くさいヤツで、汁が一番好きなのに、ストレスが一番嫌いなんです。2023年というのは、おとなしい穏やかなおじいちゃんの汁を求めて生きてしまっていたかもしれません。

だからちょっとくらいは頑張らないといけないなということで、先日R-1グランプリにエントリーしました。ルールを変更して芸歴の制限を外したんですね。単独ライブの2日前、世間で発表されたのと同時に知ったのですが、出なきゃいけないなという半々な気持ちです。私の場合は「やったー出られるようになったぞー」じゃないんですよ。

そこまで気にしているわけじゃないですけど、一方的に「10年目以上の芸人禁止! いりません!」と追い出されたのに、それから何年か経ったら出られますっていうのもなんだかなって。

賞レースというものはやっぱり特別で、芸歴の制限がなくいつまでも出られると、いつまでも出続けたくなってしまうんですけど、一方でもう出なくていいという思いもあるんです。ただ、今回は「出ない」という選択肢はなかったですね。

ダサいじゃないですか。世間体を気にして「出ない」スタンスを取るのも。それこそ抽選理論です。抽選を受けるチャンスがあって、2000円(編注※R-1のエントリーフィー)で1回転回していいよと言われているのに回さない理由はないなって。ストレスはかかりますが、結果が出たら汁が出る。

私は過去に決勝進出したことがあるので1回戦免除なのですが、年末くらいから1回戦が始まって、3月くらいにはもう決勝です。これが1年ずっと大会が続くとなると苦しいけど、3カ月の短期決戦なのでストレス嫌いな私でも全然大丈夫そう。

昔は賞レースに出る時に、「2回戦受かるぞ!」とそのたびに気合を入れていたけど、もはや自信とかはないですね(笑)。ネタをずっとやっている芸人じゃないので。ずっとやっている人と比べたらそりゃ不利だと思います。ネタって面白いものでずっとやっていないと衰えるというか、そこにかけた時間がちゃんと出る気がするんですよね。ただ結果は運です。どんなに練り込まれたネタでも、運の要素で振り回されることもたくさんありますから。

編集者「なんか岡野さん、ストイックになっていませんか。仕事人間というか……」

え……? 変わっちゃったんですかね私。それは良くないな。いやいや汁を求めるためにストレスを我慢するだけですから。汁を出すためにあえてストレスを食いにいくんです。いや2023年もそれなりにストレスは十分あったんですよ。競馬で信じられないくらい負けて汁は出ているけど、〝人生汁〟みたいなものではなかった。来年はそれをね。

〝人生汁〟とギャンブル汁は似ているけど、まったく違う。人生汁の方が重いというか、濃い。今回はなんだか、まっとうなことを言った気がしますね。変わってしまったんでしょうか。

 

岡野陽一の今月の汁台