岡野陽一の今月の汁台「純粋無垢だった自分を心の牢屋に閉じ込めた話」

2025.08.14 / 連載

「借金芸人」岡野陽一が送る人気連載をリニューアル! 変わったようでいて変わっていないかもしれない。パチンコを打っていく中で岡野陽一がたどり着いた人生の境地を、月替わりの金言とともにお楽しみあれ。


純粋無垢だった自分を心の牢屋に閉じ込めた話

 以前、この企画のインタビューで「ポケットのあるTシャツが好き」と話をさせてもらったことがあります。先日行われた単独ライブイベントの「岡野博覧会」でもこれを発売させてもらいまして、ご購入いただいた物珍しい方々は、その利便性を体感していることでしょう。

 私はタバコを愛しています。ただ、喫煙者への風当たりは強く、どこでもは吸えません。なので、単独ライブ前には喫煙用の家を借りたりもします。

 そんな私が愛煙しているのは、マルボロゴールドですが、もう10年近くになるでしょうか。特にこだわりがあるわけではないので、「なんでその銘柄?」と聞かれても大した答えはありません。タバコってバカの嗜むものなのでみんなカッコから入りますよね。最初はセブンスターとか強いのがかっこいいと思っていながら、メンソールや、周りに誰も吸ってない銘柄を狙う時代を通り過ぎていくのです。

 かつてはパチンコ屋さんでもタバコを吸うことができたので、片手で取り出しやすいからソフトパックと決めていたんです。芸人になったら動きが激しくなりますので、ボックスの方がぐちゃぐちゃにはならないことを学んで変わっていった遍歴があります。また、金がないときは安いタバコも吸ってみたりしたのですが、味なんて分からないクセに「これは違うな」とか思っていたりしました。

 ということですので、特に気に入ってマルボロゴールドを吸っているというよりは、ゴールドなのでパチンコ的元担ぎで選んでいます。元々はマルボロライトのパッケージが好きだったのですが、ゴールドになってからは納得いってないですね。まったくしっくりきていないけど、お客さんがくれたりするから、そこにあるから吸ってるみたいな大人の感じの考え方です。

 とまぁ、こんな具合に服もなんでもこだわっていないことにこだわっているというか、靴下なんか10個くらい同じものを買って一切迷わないようにしています。スティーブジョブズの下バージョンというか、いらんことに悩みたくないと思っていろいろなことを決めています。

 例えば、「ズボンは黒!」「スニーカーは白!」みたいな感じだし、ちょっと行きたくないなと思った飲み会は行かないとか。飲みに行ったらあろうがなかろうがとりあえず「瓶ビールありますか?」と頼むとか決めています。

 自分にとってはオール自由というのが辛くて、反対にルールをつけると人生って楽になるんですよね。だから、自らにルールを設けることによって、無理矢理理由をつけて選択肢を狭めています。その方が自分が楽だから。

 これね、難しいところで、「今日どこに飯行く?」とかも非常に苦手なんですよね。予約するのも苦手なので、基本的には、相手が食いたいものでいいと思っています。でも「牛丼でいい?」と聞かれたら嫌ですね。もちろん牛丼は好きですよ。この場合、牛丼が嫌なんじゃなくて、牛丼と言われて、私が「嫌です」と言った瞬間に私のターンが来ることが分かっているから、それなら自分で選ぶということです。明確にターンがなく、ボールをどっちが持っているか分からないその状態が嫌なだけなんです。お互いが気を使ってしまっているこの状態は、意外とお互いそんなに行きたくないところに行ったりする悲劇を起こすこともあったりします。私はそれが嫌なんですよね。

 正直言うと、ギャンブルとお笑い意外はどうでもいいと思って生きていますが、逆に言えば非常に細かい自分ルールがあるやつなのかもしれません。いやむしろ、見方によってはただただわがままだなと思ってしまいます。

 そうなんですよ。本当はどうでもよくないことが結構あるから、彼女によく言われるんですね。「どうでもいいと言うけどめちゃくちゃ細かいよ」と。これについてはもう仕方ありません。今ここにいる私は、生まれた時の自分じゃないからです。親が育ててきた自分は、18歳くらいまでは自由奔放に生きていましたが、いつからか私はそいつを心の牢屋に閉じ込めました。それ以来、自分の本音と向き合ったことがないのかもしれません。

 本当は牢屋にいる、そいつが言うことが本音なんです。だから私は本音を探すのに人よりちょっと時間がかかります。なんで牢屋に閉じ込めたかといえば、そりゃ借金とかそういうので現実通り生きるとそいつが苦しんでしまうから、生きるために閉じ込めてあげたんですよ。純粋無垢なままでいると、若くして借金があったり彼女がいない現実とかが辛いから、コイツを殺そうと思ったんですね。それで長年やっていたら、こっちが乗っ取ったみたいな話。だから僕が喋っていることは全体的に、アテにならないかもしれません。

 深淵をみたようで気持ち悪いでしょ。私は完全にやっちゃった感じがするんですが、誰しも大なり小なりあると思うんです。芸人って少なからずそういうところあって、クロちゃんさんとかナダルとか永野さんとか、リアルはいい人なんだけど、最低なことをやるじゃないですか。それは乗っ取られているかもしれないということです。皆さんも同じですよね。 

「もう別格。間違いなく今年1番の名機です。スペックもさることながら、カスタムで楽しめるレバー告知。私は『小レバー』と呼んでいるんですけどね、あのモードが天才的だなと思うのは、レバーの確率が毎回違うことです。もぐらが実験した結果、10回目でプシュンとなった時があるとのことで、紅丸の島に行くとレバーを引く猿みたいなのがいっぱいいます。私もその猿の1人なのですが、これ出玉が嬉しいんじゃなくて、また小レバーができるというのが嬉しいんです。どう考えても小レバーのカスタムは今年1番の発明。ちょっとあれは別格かな。汁の面で」

 

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