名機、再臨。ヒットしたリメイク機の共通項はこれだ

2025.09.22 / 機種

2022年11月、パチスロ市場にスマスロの導入が開始された。それらのスペックは、スマスロの登場までに導入されたメダル機と一線を画す内容であった。と同時にパチスロユーザーたちは「このスペックが導入できるのであれば、過去あったあの台も再現できるのではないか」という妄想を始めた。そして昨今、その妄想は現実のものとなり、リメイク機はホールの第一線で活躍を果たしている。本稿では成功を収めたリメイク機の共通項について迫っていく。


次々とリリースされる「初代ライク」な機械たち

 

スマスロ時代のトレンド 往年の名機のリメイク機が続々リリース

パチンコ・パチスロ市場は、これまで常に変化を遂げてきた。遊技機の規則改正や市場環境の変化に伴い、ユーザーの遊技スタイルやホール運営のあり方も時代とともに姿を変えてきたのである。
 全国での遊技機の総設置台数に目を向けると、2006年をピークに減少傾向が続き、ピーク時には約490万台を誇っていた設置台数は、2023年末時点では約340万台にまで縮小。実に70%強の規模にまで落ち込んでいる。かつては全国各地にあったホールも、閉店を余儀なくされるケースが後を絶たない。
 加えて、筐体の高機能化や部材コストの上昇による機械代の高騰も重なり、ホールは少ない予算でフロアを構成せざるを得ない環境に追い込まれている。
 こうした状況下で、パチスロに限った話ではあるが、あるひとつのトレンドが生まれた。それがリメイク機の開発・導入だ。
 「スマスロ北斗の拳」の大ヒットは記憶に新しい。2023年に導入された本機は、2003年に導入された初代の「北斗の拳」のゲーム性がほぼ完全再現されているような一台で、往年のファンはもちろんのこと、初代を知らない若年層のユーザーにも受け入れられ、稼働貢献は驚異の89週を記録。近年では異例ともいえるロングヒットを達成した。導入から2年半ほど経過した本稿の執筆時でも、ホールのメイン機種のひとつとして第一線でユーザーから支持を受けている。
 以降各メーカーからも、4号機や5号機時代に一世を風靡した人気機種のDNAを受け継いだリメイク機が次々とリリースされ、パチスロユーザーにも受け入れられている。
 いまやリメイク機は、業界を支える柱のひとつと化している。だが一口にリメイクといっても、その完成度や方向性はメーカーごとに大きく異なる。そこで今回は、各メーカーがどのようなリメイク機を市場に投入しているのか、これまでの動きをまとめた上で、ヒットしたリメイク機の共通項を洗い出していく。
 実際に各メーカーからリリースされた、あるいはリリース予定のリメイク機を見てみよう。まず冒頭でも触れた「スマスロ北斗の拳」でお馴染みのサミーは、「サミークラシック」という独自の復刻プロジェクトを5.9号機時代から走らせており、「パチスロディスクアップ」「パチスロガメラ」「アラジンAクラシック」「パチスロハードボイルド」「パチスロファイヤードリフト」などいずれもリメイク元の面白さをそのままに、現代風にアレンジしたゲーム性の機種を開発・販売し続けている。
 「スマスロ北斗の拳」や「パチスロ交響詩篇エウレカセブンHI-EVOLUTION ZEROTYPE-ART」などはクラシックシリーズには属していないものの、おおむね考え方は共通しており、いずれも演出の発生頻度を上げる、新規演出を搭載するなどで4号機や5号機序盤の機種の「退屈さ」を解消しているのが特徴だ。
 ユニバーサルは「Aプロジェクト」で往年のノーマル機の復刻に早くから取り組んでいるメーカーとして知られている。「ハナビ」「バーサス」「サンダー」などのノーマルタイプが主にはなるが、スマスロ時代に突入してからは同プロジェクトとは別に「スマスロ 緑ドン VIVA!情熱南米編 REVIVAL」「マギアレコード」(※初代まどマギのゲーム性を踏襲)と5号機時代に人気を博した名機を連続して復刻した。
 大都技研からは「吉宗」、BT機では「クレアの秘宝伝」をリリース。吉宗は4号機の初代を、クレアは5号機初代を色濃く意識した作りとなっており、特に吉宗はシステムまでほぼ完全再現されていることから、現在もアツい支持を受けている。

 

4号機の「ディスクアップ」はBIGボーナスとARの組み合わせで出玉の瞬発力が魅力のひとつであった。
5号機で蘇った「パチスロディスクアップ」は、リール配列や出目制御など、初代のエッセンスを色濃く受け継いだ遊技性を実現。
ART自体は1ゲームあたりの純増が0.5枚と、出玉面では緩やかな推移を見せるようなスペックに生まれ変わった。
「パチスロ モンスターハンター 月下雷鳴」のゲーム性は「パチスロ モンスターハンターワールド:アイスボーンTM」から色濃く踏襲されており、
主なゲーム性自体はかなり再現されていたが、スマスロだからこそ実現できるツラヌキ要素も実装された。
©Sammy ©CAPCON

 

4号機・5号機がスマスロで継承進化

 5号機時代からパチスロ市場に参入したエンターライズは、スマスロ時代において、5号機時代のヒット作をほぼ完全に再現した「スマスロバイオハザード5」「スマスロモンスターハンターライズ」をリリース。モンハンライズは言わずもがな、5号機でヒットした「月下雷鳴」のリメイクと言えるだろう。
 その他にも、コナミアミューズメントからは「マジカルハロウィン5」を強く意識した「マジカルハロウィン8」が、ニューギンからはロデオの4号機「サラリーマン金太郎」をリスペクトした「L サラリーマン金太郎」、オリンピアからは初代を意識した「戦国乙女4」が登場している。
 また、山佐からは「パチスロナイツ」「パチスロハイパーラッシュ」および「スマスロモンキーターンV」がリリースされている。「モンキーターンV」は厳密な意味ではリメイクではないが、演出や細かい打感などが初代ライクであり原点回帰を目指した作品なのは間違いないだろう。そして今後は、あの「ELVISION」の復刻を謳った「ネオプラネット」の導入も予定している。
 このように近年になって急に数が増えたリメイク機たち。中にはホールの主役級の活躍をする機種も含まれていることから、今後もトレンドは続くと考えられる。しかし、なぜ今リメイク機が盛り上がりを見せているのだろうか。次ページからはホールとメーカーの思惑が合致したリメイク機がリリースされる背景を探ってみたい。


なぜ今リメイク機なのか

 本記事の冒頭でも触れたが、パチスロ市場全体に目を向けると、パチスロの総設置台数の規模は、昨年末8年ぶりに増加に転じたとはいえ、ピーク時の2006年と比べおよそ70%になっている。当然、販売される1機種あたりの台数も減少傾向で、何BOXも構えるような機種は、年に1度あるかないかという状況。どの機種をメイン機種として運用していくかは、ホール関係者にとって永遠のテーマとなる。
 一方、メーカー側も開発期間の長期化や新機種適合のハードルの高さを考慮すると、今までにない新しい試みの機種の開発に手を出しにくいという可能性もあるかもしれない。
 この両者の思惑が合致する形で「過去のヒット作のリメイク」が注目されやすくなっている可能性も考えられるだろう。ホールとしては最低限過去の輝かしい実績があり、ヒット作のファンが打ってくれる見込みがあるので購入しやすいという要素は間違いなくあるはずだ。
 さらにもう1つ、6号機時代になり、5号機では実現できなかった4号機のAT機と同等レベルの「高純増」を再現できるようになったこと。また、スマスロ化により機種のシステム的な自由度が大幅にアップしたことで、「大量獲得」を現実的なレベルで再現できるようになったことも大きな理由だと考えられる。
 これは特に「スマスロ北斗の拳」や「吉宗」を見れば一目瞭然だ。この2機種は今までも幾度となく「初代復刻を掲げる」「再現する」「遺伝子を受け継ぐ」といったキーワードでPRされた後継機が複数回にわたってリリースされてきたが、いずれも試みが全面的に成功していたとは言いづらいものが多い印象だ。それがこの時代に突如「リメイク」が成功したのは、繰り返しになるが「高純増」ならびに「大量獲得」を再現できたことによる影響である。
 特に4号機時代の名機のゲーム性を再現できるようになったのは業界にとって非常に大きい。先に挙げた機種だと「吉宗」に当てはまるのだが、当時はまだ版権のタイアップものは少なく、自社のオリジナルIPを使ったヒット機が大半だったことから、ボトムが重い版権使用料を抑えつつ一定の稼働が見込める機種としても、リメイクは「メリットがある」と活用されているフシがある。

 

©DAITO GIKEN,INC.

 

リメイクの先へ。必要なのは 複数の世代に対するアプローチ

どのユーザー層をターゲットとするか

 一方で、すべてのリメイク作が高評価を受けているわけではないことにも注目したい。例えば「Lサラリーマン金太郎」「スマスロ 緑ドン」などはオールドファンには根強い人気があり、愛してやまないユーザーがいるものの、初代をホールで打っていない若いユーザー層へのリーチは満足なものではなかった印象が見受けられる。
 これはリメイク機の宿命である「シンプル過ぎるゲーム性」が影響していると考えられる。「スマスロ北斗の拳」などは新規演出の大量追加、そしてグラフィックの刷新、さらには「無想転生バトル」という強力な新要素のほか、細かく見ると演出発生率のチューニングなど初代から比べて現代風に調整されている部分が数多くあり、決して「懐古目的」のみにとどまらぬよう狙いを澄ましてヒットを飛ばした感がありありと見える。
 「吉宗」も同様に、リーチ目役を特定状態でのみ出現させるという工夫をすることで、初代のネックであった通常時の退屈さを軽減。また上位モードである裏鷹狩の突入条件を極端に分かりやすくすることで711枚のBIG消化中のアツさを、ある意味では初代以上に楽しめるようになっている。これらの要素が新規ユーザーにも受け入れられているからこそ、「スマスロ北斗の拳」「吉宗」は幅広い年代に愛され、高稼働を維持していると考える。

 

「L サラリーマン金太郎」は、4号機の「サラリーマン金太郎」を再現。
ボーナス後の高確からメインATである「金太郎チャンス」を目指すというゲーム性を踏襲しつつも、裏金太郎モードというツラヌキ要素を実装。
一方でAT性能の高さから初当たりがやや重めであったり、高確を見抜く演出法則が良くも悪くも細かかったりと実戦していて気になる要素も見られた。
©本宮ひろ志/集英社/FIELDS

 

 2024年はパチンコ・パチスロ業界市場で初めて20円パチスロの台数が4円パチンコを上回った、などパチスロにおいては徐々に明るい兆しが見えはじめ、ようやくほっと一息といった状況だが、まだまだ稼働は不安定であり楽観視はできない。
 過去のヒット作のリメイク機が頼もしいと感じられる状況はしばらく続くと見られるので、今後それらを購入する際には、リメイク元の機種そのまま、という要素だけではなく、中身が現代風にブラッシュアップされているかどうかをしっかりと見極めて機種選定を行なっていくことが重要だと言えるだろう。
 もちろんリメイクを謳いながら原型を留めていないほどゲーム性が一新されている、というのもリメイク機の魅力を失っているようで問題となるが、「マギアレコード」のように、ガワは違えど打感で懐かしさを感じられる機種であれば、きっとユーザーも違和感なく受け入れるはずだ。
 また、同時に各ホールではどのようなユーザー層を取り込みたいかという目的の部分も意識する必要がある。若年層のユーザーを増やしたいという狙いがある場合は、リメイク機の導入は機種によっては目的に即していない可能性がある。この辺りの感覚は、「初代を知る者」として各店舗の店長陣の感覚がものを言う領域となるのではないだろうか。

 

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