どうする!?パチンコ 高粗利営業からの脱却
2025.08.18 / 機種LT3.0対応機種の導入もスタートし、パチンコもパチスロ同様に盛り上がりを見せるかと期待されたものの業界内で危惧されているパチンコの「高粗利化」は止まらない。
実際に高粗利が加速している現状に対してホール関係者はどのように感じているのか。パチンコホール関係者から集めたアンケート結果をまずはご覧いただきたい。

実に85.3%が「現在のパチンコは粗利が高くなりすぎている」と回答。その背景には、ラッキートリガー機種の台頭やスマスロ偏重による営業バランス崩壊、ヘソ1個賞球によるベース低下など、さまざまな要因によって、パチンコの高粗利化が進んでいるとホール関係者は見ている。
また、その他の意見では、「機械代の高騰」と「機種寿命の短命化」により、「新台で回収しなければ成り立たない」という悪循環を指摘する声も。
ユーザー側から見れば「1万円が30分で消える」「勝てる気がしない」など、“疲弊”や“あきらめ”の声も増えてきている。ホール関係者の中には「本来のヘビーユーザーはすでに低貸に流れ、残るのは一部の過激層だけ」と冷静に現状分析をする意見もあった。
こうした現状において、ホール関係者はパチンコの「高粗利化」を改善したいと思っているのだろうか。
8割以上のホール関係者が「改善したい」と希望

高粗利営業を「改善したい」と考えているホール関係者は、アンケート回答者の実に80.9%に上った。この数字は、ホール現場が今の営業状況を「望んで続けているわけではない」ことを明確に示している。
しかしその一方で、改善のための“具体策”は見えているようで見えていないというのが実情だ。
改善するための手法として検討していることを聞いた結果をみると目立ったのは、〝ハイミドル偏重からの脱却〟を求める声である。
玉単価の高いMAXやハイミドルのラッキートリガー搭載機を中心に構成された営業では、どうしても1人あたりの粗利が高騰し、ユーザーの〝負け体験〟ばかりが蓄積されていくという指摘が多い。
「出玉に寄りすぎた設計」「突入率が低く、継続しにくいスペック」「何も起こらず短時間で3万円が消える」など、射幸性と粗利のバランスが崩れていることへの危機感がにじむ。
以下、ホール関係者から寄せられた対策案の意見(抜粋)
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甘デジ・ライトミドルの比率を増やす
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2円台を切る玉単価の新台導入
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ヘソ3個賞球の復活
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MAXやハイミドル設置比率の抑制
といった“遊びやすさ”の再構築を志向する声である。
また、「機械代を抑える」「稼働が見込める台に(導入を)絞る」など、支出を抑制することで、ユーザーへ還元する方向に舵を切りたいと考えるホール関係者も少なくなかった。
一方で、「改善したいが、現実的な手立てが見当たらない」「機械代、スペック、客数、すべてが複雑に絡み合っていて簡単には変えられない」という声も少なくなかった。
構造的な問題とユーザーの求める遊技体験、そのギャップをどう埋めていくか。
粗利を下げるためには、単に“利益を削る”のではなく、台構成と収益構造そのものの再設計が求められている。
ハイミドルやMAXタイプ偏重から脱却するために他スペックの機種を育成は必須!?
続いて、ハイミドルやMAX偏重に対して、他のスペックを育成したいかどうかを聞いたアンケート結果が以下となる。

実に91.2%が「ライトミドルや甘デジ、ハネモノなどの他スペック機種を育成したい」と回答している(「稼働が付くなら育成したい」60.3%、「稼働に関わらず育成したい」30.9%)。
単にバラエティー的に設置するだけでなく、“稼働を上げて、シェアを増やしたい”という意志が明確に存在していることが浮き彫りとなった。
一方で、「稼働が付くなら」という条件付きの回答が6割を占めている点も見逃せない。
これは、“育てる余裕”がない現場の苦悩を反映しているとも言えるのではないだろうか。実際、昨今の新台運用は高粗利で運用しつつも稼働の落ち幅が低い機種だけが、ホールの主軸となり、比較的低粗利運用にチェンジさせていくのがセオリーになりつつある。こうした状況から見るに、初動から人気を維持できるような人気のコンテンツ、またはユーザーの遊技意欲を高めるようなスペックを持ったライトミドルや甘デジであれば、育成していく土俵に上げたいと考えるホール関係者が多いということだ。
また、約3割のホールは、「稼働に関係なく他スペック機も育成したい」と答えている。
この層の存在は、パチンコ営業における“戦略的多様性”が失われていないことを示しており、中長期的なファン層拡大を見据えた地道な取り組みが必要不可欠であること認識しているといえるだろう。
パチンコを「一部のコアユーザーのもの」にせず、再び“気軽な遊び”として広げていくには、こうした他スペック機種の“育成”を本気で考えるタイミングに差しかかっている。
では、どんなスペックを育成したいと考えているのだろうか。
ホール関係者が考える育成したいスペックはライトミドルと甘デジ
以下のアンケートは具体的にどのスペックを育成していきたいかという問いに対する結果だ。

“遊べるパチンコ”への回帰がホールの未来をつくる
高粗利営業から脱却するために、ホール関係者が注目しているのは“新たな収益軸”ではなく、“もう一度お客さまが戻ってくるための仕組み”だ。
その中核として挙がっているのが、甘デジとライトミドルの育成である。
アンケートでは、ハイミドル・MAXタイプ以外の機種を育成したいと回答した中で、甘デジ(31.1%)とライトミドル(29.5%)がほぼ同数で並び立ち、両者を含む複数タイプを育成したいという層も36.1%にのぼった。
つまり、市場の主流となっているハイミドル一辺倒の営業スタイルを見直し、多様なスペックを“育て直す”べきだという機運が、現場には確かにあるということだ。
甘デジを推す声の背景には、「低投資で当たりを体感できる楽しさ」や「高齢層やライト層の受け皿としての機能」、そして「高すぎる玉単価への対抗手段」としての期待がある。
一方ライトミドルには、「投資とリターンのバランスが取れている」「営業としても一定の収益が見込める」「粗利と稼働の中間点にある」という、営業視点からの現実的な評価が寄せられている。
多くのホール関係者が共通して口にするのは、「いまのままではユーザーがもたない」「遊技頻度を取り戻したい」という危機感だ。
そしてそれに対して、甘デジやライトミドルといった“遊べるスペック”にもう一度光を当て、台そのものを育てる・ファンとの接点を増やす・長く運用するという取り組みが、ひとつの出口になり得ると感じている。
重要なのは、スペックの“選択”だけではなく、“育成”という発想である。
かつてのように、「遊んで、勝って、また来たい」と思ってもらえる環境を取り戻すために、甘デジやライトミドルは単なる脇役ではなく、これからのパチンコの〝要石〟のような存在にしなくてはならないだろう。
今一度、自店舗の機種構成、設置割合、運用を見直し、ファンを呼び戻すために動き出すべきではないだろうか。
【番外編】パチンコユーザーは「遊びたい!」ライトミドル好きに聞いたリアル
今回、ホール関係者だけではなく、公式Xを使ってライトミドルが好きなユーザーに好きな機種と好きな理由を聞いてみた結果が以下となる。

新旧入り混じる結果で、1位に選ばれたのは初代の「AKB48」だった。そして、現役機種で支持を集めたのが「eぱちんこ押忍!番長 漢の頂」という結果に。

過去機種を推すユーザーの意見で多かったのは「初当たりが軽い」「出玉バランスが良い」「毎日少しずつ勝てた」といったもの。
かつてのライトミドルには、手頃な投資で“当たる楽しさ”と“勝てる期待”が共存していた。
今とは違い、「時間を使う価値があった」「飽きずに通えた」という記憶が、ユーザーの中に強く残っているのが印象的だ。
一方、現在のパチンコに対しては「ハイミドル以上はもう疲れた」「1/319とか1/399の勝負ばかりで、打つ前からしんどい」といった意見、〝お金がかかりすぎることへの不満による反動〟からライトミドルが良いという意見も多かった。
とはいえ、すべてが否定されているわけではない。
LT(ラッキートリガー)搭載機でも、「e番長」「まどマギ3」などのライトミドル帯LT機には一定の支持も集まっていた。
「1/199なら当たりそうと思える」「投資が抑えられるから試してみようと思える」「ラッシュに入ったときの一撃性はやっぱり夢がある」──
こうした声からは、「低リスクで夢がある」というLTライトミドルの設計思想に対する共感もうかがえる。
ホール関係者が他スペックを育成したいと考えているように、パチンコファンも投資が嵩む現状に疲弊し不満を持っているは事実。であるならば、実際にMAXやハイミドル一辺倒ではなく、ライトミドルや甘デジを待つファンのニーズに応えていくことも重要な戦略になってくるのではないだろうか。