外国人パチンコFIRST TAKE「彼氏・彼女・そして俺。 パチンコRe:ゼロ地獄巡りツアー」
2025.05.18 / コラム彼氏・彼女・そして俺。
パチンコRe:ゼロ地獄巡りツアー

2022年の冬。コロナ禍の影響がまだ色濃く残り、全国のパチンコホールは集客の回復に苦しんでいた時期でした。そんな折、ふらりと日本にやってきた30歳前後のイケメンアメリカ人・クリス。彼女さんと一緒にカップルでパチンコにチャレンジしにきたという。
パチンコとはなんたるかをササっと事前説明して入店。当時はツアーにおけるルーチンがなかったため、なんとなくいっぱい当たった方がいいだろうということで、とりあえず甘海あたりを打ってもらって、何度か当たったところで他へも行こうかなという算段でした。
……だが、事件が発生します。甘デジコーナーへ向かう道中、クリスが目を止めたのはパチンコのRe:ゼロ。あー、Re:ゼロファンか。分かるよ、レムは可愛いもんな。
パチンコツアーの主目的はお客さんに楽しんでもらうことなので、そうとくれば打たせない理由はな……いやいや、ある! お金もそうですが、何よりも時間が問題。ツアーは基本2時間なので、ミドルスペックは時間内に当たらない可能性がかなり高い。
ひとまずリスクから説明します。我々からすればライブの入場券程度の感覚で放り込める1万円札も、初心者にとってみれば大金。後々になってクレームをつけられないよう、「当てるだけで2万円、右打ちを取るところまで考えると4万円は覚悟するべき」と伝えました。そうか、自分はこんな時リスクから伝えるんだな(笑)。とはいえプレイヤーは2人いるわけで、「最悪当たらなくとも先バレを入れておけば盛り上がるだろう」。そんな淡い期待を抱きつつ実戦開始。
4時間後、そこには表情ひとつ動かさず、淡々とサンドへ入金を続ける〝3人〟の姿がありました。おぉ神様、どちらを見ておいでですか。そしてなんで1人増えてるねん。
最初は仲睦まじく小粋なトークをしていた2人でしたが、おのおの1枚目の諭吉さんがペロっとのまれたあたりで無言に。そして1.5諭吉が打ち出されたあたりで、彼女さんが若干の不機嫌ムードへ。各2.5諭吉ほどのまれた頃には、「アンタはいつもそう、前に転職した時も〜」「この前のクリスマスもそうだった〜」だの、まるで古いホームドラマかのような口論へ発展。ちなみにここまで先バレなし。
危機感を覚えた私は「まぁまぁ」となだめる形で彼女さんの隣に座りました。しかし、遊技もせずに着席するなど言語道断。それでなし崩し的に3人での共闘が始まったというわけです。「まさかノリ打ち?」と若干気にしつつ、総投資は10諭吉へ。3時間経過しても先バレひとつなしとシビれる展開で、彼女さんの表情はもはや般若。剛掌波の一つも繰り出してきそうになっていました。
涙をこらえつつ、11諭吉目を捻じ込んだ時、自分の台から先バレが鳴り響く。「こんな俺にも神は微笑んでくれるのだ」と神の存在を感じた刹那、隣で鳴り響く先バレ。その説明中、さらに重ねて3つ目の先バレだ! 「彼女さんはこれ、クリスはこの保留!」と指差しつつ2人の背後へ移動、早口で今がいかにチャンスか、逆転の希望はどのくらいかを伝えてあげます。爆裂投資パチンカーなら分かるこの奇跡。そして画面を食い入るように見る3人。
結果、長北はスカで、カップル2人は大当り。クリスの台はそのままラッシュへと突入し、一撃2万発超というクリティカルヒットとなりました。あれだけの殺意を発していた彼女さんも、いつの間にやらえびす顔。
2人は燃えるような、いや妬けるようなアツアツぶりを披露して、ニコニコと退店していきました。万国共通、人間とは現金なものです。チップとして中景品2つをいただき解散しましたが、足りません。マイナス8k。
(PROFILE)
長北真●1984年沖縄産まれ。アメリカの全寮制高校で3年を過ごし、青山学院大学法学部を卒業。パチンコ歴は20年超。ネットワークエンジニア、プロジェクトマネージャー、翻訳家、大手SNS内管理職、カジノディーラー等多彩なキャリアを積み、マレーシアでコンタクトセンター設立管理に従事。300名以上の外国人に対し、日本人向けのサービスを教育。2022年よりGlobal Pachinko株式会社を立ち上げ。低迷するパチンコ業界の新しい道を切り開くべく奔走中。Xアカウント(@global_pachinko)