【ピデアな男】グランドオータ熊谷本店/店長・菅野将平

2025.04.15 / ホール

オータ歴22年。「何をやっても稼働上がりません」という、かつて不振店だったグランドオータ熊谷店の稼働を担当した2年間で倍近くまで押し上げた菅野将平店長。X上では「かんのー店長」として、埼玉県北ユーザーから慕われている。キングハナハナ53台設置という機種運用もさることながら、菅野店長が立て直したのは「人の心」。菅野店長の2年間の戦いを振り返ってもらった。


僕は不振店の立て直しを任される店長。
「最後に菅野に懸けてみよう」という
感じで任されることが多かったです。

 

PiDEA編集部(以下、編) 今日は集客日ということで、かなり稼働も高いご様子ですね。

菅野将平店長(以下、菅) 抽選が225名様で、入場は278名様でした。

編 やはり朝一は、このお店のトレードマークでもあるハナハナから埋まっていくのでしょうか。

菅 朝はハナハナから埋まるように2年間かけて頑張ってきました。53台のキングハナハナから埋まって、マイジャグなどジャグラーが埋まっていきます。また、ここ最近は差別化戦略を徹底的にやっていて、コイン機を1台ずつ並べているようにしているのですが、そこでもずっと設定を使ってきているので人気です。 

編 菅野さんが任される以前の状態はどんな感じだったのでしょうか。

菅 熊谷店はグループでも、地域でも稼働は下から数えた方が早いお店でした。今の時代、その状態が続いてしまったらもう閉店するしかないというような状況で、「何をやっても稼働が上がりません」という感じで私が引き継ぎになりました。

編 菅野店長って今おいくつですか。キャリアは長そうに見えますが。

菅 2003年入社で、今年45歳です。

編 かなりベテランじゃないですか。

菅 大学を卒業してオータに入って一本でここまできました。比較的昇進も早くさせていただきました。若い頃はすごく嫌だったのですが、常に厳しい環境を与えられてきていたこともあって、不振店の立て直しを命じられることが多いです。

編 どんな若かりし頃を過ごしてきたのか気になります。 

菅 周りの年代の人たちが「明日休みだし、どこ打ちにいこうか」と言っている時に、僕はもう明日の営業のことを考えないといけないような状態が常に続いてきた感じで、人より早く苦しい時期がきて、ありがたいことに経験はたくさん積ませてもらいましたが、楽な1年を過ごしたことはありません。

編 最後の砦みたいな感じなんですかね。

菅 社内では「オータらしい店長といえば菅野」と言われたり、稼働が振るわないお店も「最後に菅野に懸けてみよう!」という感じで任されることが多かったです。

編 今までにどんな店舗を立て直してきましたか。

菅 グランドオータ厚木店も今では神奈川の旗艦店になっていますが、元々は不振店でした。あとはグランドオータ新座駅前店とかですね。

編 なかなかプレッシャーですね。菅野さんが失敗したら後がない状態で任されるのは。

菅 不振店がダメになると最悪閉店になってしまいます。社員は残れるかもしれないけど、アルバイトさんとかは仕事を失ってしまうこともあります。とは言いつつ、僕も30歳で初めて店長になりましたが、リニューアルオープンして半年で閉店させてしまった経験もあります。その時に思ったのが、「いろいろかっこいいこといっても、結果出ないとこうなるんだな」と。やめた方がいいのかなとか思ったこともありましたが、同じ思いをしないように本当にど真剣にやっていこうと。稼働が上がらなかったら閉店と言い訳ができない店舗ばかりを任されてきて、覚悟が人一倍強くなりましたね。だから上司に対しても言いたいことははっきり言わせてもらっています。

編 熊谷店は数字ではどれくらいの稼働だったんでしょうか。

菅 アウト枚数でいうと、集客日でも7000枚くらいでした。「何をやっても稼働上がりません」と言われて引き継いだのですが、僕の考え得ることは全部やってみようと考えて励んできた結果、直近の集客日では、1万4000枚を超えて当店の平日アウト最高記録となりましたし、集客日のアウト枚数は倍で、平日も2年間で倍になっています。

編 これはきっかけはやはりハナハナだったのでしょうか。ちなみになぜハナハナを選んだのかも気になります。 

菅 結局、お店として儲けを出すためには粗利をいただかないといけませんが、少ないお客さまからはいただくことはできません。熊谷店はオープン当時は稼働が良かった店舗だったんです。それがコロナ禍から下がりっ放しで信頼を失いました。稼働が良かった当時、ハナハナが人気だったんですよ。

編 なるほど。元々伝統があったんですね。

菅 はい。また、ハナハナの土壌って埼玉県にはどこにもないんです。近隣の店舗でも入れてはいるけど、育成はできていない。だったら自分が参入して育成していこうじゃないかと。僕はホールに出て、お客さまの声を直接聞くようにしています。満足・納得されているかどうかを確認したりする作業は欠かせません。お客さまからは「ハナハナで⑤⑥使うお店ないよ!」とお声をいただきました。来店系の時しか入らないという声が多い中で、だったらうちが自分たちの自前で、自分たちの設定を組んでしまえばいいんじゃないかなと。

編 集客日とキングハナハナ、そして53台導入という数字で本気度を示していったのですね。

菅 アンバサダーの演者さんはいますが、あくまで自分たちの力でチャレンジしていくことを狙いました。「埼玉でハナハナだったらオータ熊谷だよね」というブランディングで、うちの土壌さえ作ってしまえば唯一無二になれるだろうと。 

編 それにしても、踏み切り方がすごいですね。いくら伝統があったとはいえ、ハナハナの土壌のないエリアで53台というのは。

菅 「ハナハナそんなにやってどうするの?」とかいろんな声はありましたよ。僕は沖縄の店舗も経験があるのですが、沖縄と違い関東では「地域最大級沖スロ」という売り方でハナハナや沖ドキをまとめてプロモーションしているお店を見かけます。しかし、本気度を伝えるとしたら「ハナハナ」「沖ドキ」と分けて売り込むことで、よりお客さまへは「伝わる」と考えております。台数が固まっていないからお店の本気度が全然伝わってこないんですよね。どんなことでもそうですが、何が良い、何が悪いということをちゃんと言語化できるかどうかが大切だと思っています。

編 言語化ということですが、菅野さんが担当する以前の熊谷店はどんなところが問題で不振だったのでしょうか。

菅 一言でいうと信用と信頼がないお店です。私の考えでは、パチンコホールには「美観」「共感」「歓迎感」が重要だと思っていて、そのどれもなかったんです。

編 「美観」「共感」「歓迎感」というのは……? 

菅 入口が暗いとか、お客さまをお出迎えする体制がいかにも整っていない状態です。「これじゃお客さま来ないよね」ということをリスト化したら、2年間で434個あり、それを全部改善していきました。

編 見た目が悪かったんですね。

菅 遊技台確保券1つをとっても、何も感じさせないようなもので、細かい所が作り込まれていなかったですし、紙幣が入らないサンドが複数あったりバックヤードも整理整頓がされていない状態でした。改善しなかった理由を聞くと、「コレが当たり前だと思っていました……」というような答えも返ってきますし、まずはスタッフの気持ちや考えの部分も直していく必要があったんです。

編 無秩序な状態ですか。

菅 というか、放置されていたように感じます。その状態が普通になってしまっていて、誰も改善しないし、何をすればいいか分からない状態。店舗の中を変えるということもそうだけど、「人の考え方と行動」を変えるんです。なんで変える必要があるのか、これを説明して理解してもらうことに時間を使っていました。自分がいなくなって稼働が下がってしまっては元の木阿弥なので、言語化して復習させること。なにかをする時には、「何のために」という「目的」を絶対つけるようにしています。「稼働」を上げるために必要なことって基本的に3つしかないと思っています。

編 その3つとはなんでしょうか。

菅 「新規のお客さまを増やすこと」「来店頻度を上げること」「滞留時間をのばすこと」。この3つに紐づいていない施策は無意味なんですよ。これが分からないと絶対に数字は上がりません。だけどみんな「やること」が「目的」になってしまうんです。最初来た時はどうしようもなかったので、やらなくていいことをやめました。だから、毎日送っていたLINEもやめました。

編 店内の装飾なども変更されたのですか。

菅 どう感じてもらいたいのかそこから逆算して何を創るかを考え、装飾と販促を分けるようにしました。

編 POPにおける装飾と販促の違いってなんですか。

菅 販促はお客さまの売上につながるもの。装飾は雰囲気です。例えば、当店のキングハナハナのコーナーは独創的な飾りがありますが、あれは装飾なんですよ。ハナハナの装飾も売り上げには直接つながっていなくて雰囲気がいいよねというものです。

編 立て直しのプロである菅野さんのお考えでは、不振店を立て直すのにもっとも重要なものはなんでしょうか。 

菅 「人」だと思いますよ。いくら店長1人がすごくても無理で、だから店長は多くの人を巻き込んでいく力がないといけません。やり方が分からないから動けないという人が今はすごく多いですが、デコったハナハナの拡声器をもってホールに出るだけでお客さまから声もかけてもらえるし、声をかけてもらえたらスタッフも喜びます。業者さんと細かいことを打ち合わせるのが好きな人もいるし、スタッフ一人ひとりの得意なことを見つけて生かすということができた方がいいのです。こうした改善の結果、スタッフの女性比率が65%になり、女性が楽しんで前向きに働けるお店と言う部分も相乗効果としてお店が良くなってきています。

編 菅野さんの考えには全部ゴールがありますね。もう2年熊谷で勤められていますが、昇進されたりとか。

菅 実は5月からエリアマネージャーとして、新体制でスタートすることが決まっています。なのでこの取材のオファーをいただいた時に、どうしても店長のうちに出たかったんです。

編 そうだったんですね。しかし、かんのー店長のファンのお客さまは寂しがるのではないでしょうか。

菅 4月後半から引継ぎ期間になり、5月から本格的に新体制でスタートになります。その時までは私が管理者として店舗に立ちますし、エリアマネージャーになってからもお店には立ちます。Xを通じてお客さまから「熊谷店は大きく変わった!」とか「スタッフが頑張っている!」などの前向きな応援コメントが自分の中では本当に励みになったし、本当に助けてもらいました。最初は本当に苦しくて毎日悩んでいましたが、皆さんがお店に光を当ててくれたことで少しずつ良くなってきています。今回の記事を通して、感謝の気持ちを絶対に伝えたいと考えておりました。いつも前向きに応援していただき、本当にありがとうございます。 

 

グランドオータ熊谷本店, ピデアな男