【ピデアな男】アルファ境港店/統括店長・村田 晃一

2025.03.14 / ホール

鳥取県西部にある人口約3.2万人の境港市。海もあり、湖もあり、山もある、そんな土地で40年以上営業を続ける「アルファ境港店」は、かつては市場でダントツの低稼働店舗だった。そんな状況を任されたブロッコリーがトレードマークの村田晃一店長は、さまざまな改革を行い、パチスロの稼働を山陰地方でナンバーワンに押し上げた。そしてその方法が前代未聞で、非常にユニークな成功事例を発見することができた。


チャレンジをしてみるのは絶対必要だと思うし、
店を任されている以上、自分(店長)が舵取らないで
どうするのと思うんですよ。

PiDEA編集部(以下、編) 村田さんは名刺に統括店長とありますが、複数店舗やっていらっしゃるんですか。

村田晃一統括店長(以下、村) 一応、アルファ境港店(P200台、S295台)とアルファ東出雲店(P209台、S165台)の2店舗がありまして、僕がどちらも見ています。

編 業界歴はもう長いんですか。

村 いうて10年くらいですね。グループ会社が経営している別の建設業で営業のお仕事をやっていたりしました。

編 ちなみになぜ村田さんが建設業の方にコンバートされたんですか。

村 若かったからじゃないですか。あと、「お前、明るいけん」みたいな感じで(笑)。

編 ホールで働きたいという思いは当時なかったですか。 

村 最初は何も考えてなかったです。僕も若かったので(笑)。それで、ちょうどコロナ禍に真っ最中の頃に「パチンコの方を頼む」ということで初めて店長になったんです。その時はホール経営も苦しかったけど結婚していたのもあって、仕事頑張ろうと。店長としては駆け出しなんですが、ホールに戻ってきました。

編 ブランクがあって、しかもコロナ禍で初店長というだけで結構な出来事ですが、当時お店はどんな状況でした。

村 コロナ大打撃でやばいくらい稼働がなくて、もう鳥取県の中でもダントツの稼働最下位みたいな店舗でした。パチスロのアウトで月平均3900枚とか。だから、組合に行ったら他店の店長たちがたくさんいるんですよ。そこで「アルファなんかがすみません」とコソコソしていたんですが、それがめっちゃくやしくて、いつか全員ブチ抜いたると思っていました。

編 そんな状況から、今はどれくらい稼働に変わったんですか。

村 2月の平均でアウト1万2900枚くらいまで上がって、パチスロでいったら山陰地方でトップ稼働です。

編 数年かけてですよね。それにしてもすごい上がり方です。ぜひ何をやったのかを教えてください。 

村 特に引き継ぎとかもなく、「さ、今日から店長です」みたいなデビューでした。鳥取県が島根県も合わせて95%くらいが等価店なんですよ。それでパチンコがどこの店もきつい。調べてみたら境港市なんて20〜30人しかパチンコに座っていない日もあったりしました。でも、パチスロには200人くらいいるんです。店を繁盛させるには、パチスロ客を集めるしかない。6.5号機が出てきた頃から、「これパチスロいけんじゃないかな」と思って、初手はパチスロ全振りって感じです。

編 「カバネリ」とか「犬夜叉」とかの頃ですね。ただ、当然他のホールも同じようなことを考えるわけじゃないですか。そうだとするとあまり差を埋めるようなことにはならないのでは?

村 そうなんです。だから、自店の弱点も含めて2カ月かけて何が足りてないのかを研究することにしました。その結果ある答えにたどり着いたんです。

編 その答えとは。

村 知名度がなさすぎたんですよ。「え? アルファってどこ?」という感じで、店の場所もその名前も全然知られていませんでした。その状態でいくら玉を出そうとしても誰も知りません。じゃあ名前を売るしかない。特にXを中心に目立とうと思ったんです。

編 ここでてんぱ店長というアカウントにつながるんですね。

村 ただ、目立とうと思ってもなかなか目が出ませんでした。とにかく唯一無二の存在になろうとしたんですよ。

編 唯一無二というのは何を指しているのでしょうか。

村 僕というキャラを真似できる人はいないんですよ。自分でも人と比べて明るいなとは自覚していますが、まずキャラがコミカルですし、お客さまとの距離も近いし、現場も毎日見てるし、Twitterならどれだけやってもタダだし、もうこれしかないと思いました。

編 何をしたら目立つんでしょうか。

村 他所のパチンコ屋さんはどこの店も大体同じようなポスター画像を貼って「今日も元気に○時オープン」みたいなことばっかりで、それを客観的に見ると、「こんなん誰が見るん」となるんですよ。それより、雑でもちゃんと自分の言葉でフォロワーに届く表現で発信するようにしました。今は境港市のパチンコ・パチスロユーザーならアルファという名前を知らない人はいないと思っています。

編 知名度が上がったことは変化につながりましたか。

村 劇的に変わりましたね。幸いなことに、周辺のホールさんがどこも店長系アカウントをやっていなかったんですよ。ラッキーって(笑)。それで、若い方が中心にフォロワーになってくれて、若い方の集客が増えたのですが、最初は年配の常連さんたちに嫌がられましたね。「ワシら、昼から来てみたら若いやつらに全部いい台取られとる」って。 

編 難しいところですね。解決策はありましたか。

村 文句は言いつつも、年配の方も、若いやつの方が詳しい、若いやつが多いということは良い店なんだとなんとなく知っているんですよ。僕、お客さまにはあえて敬語使わないんですけどね。それで年配の人に言うんですよ。「だって若い方の真似するしかないって、うまいんだけん。昼から来てもいいけど、取られたくなかったら朝から来るしかないって」って。そうしたら、いつの間にか朝から来てもらえるようになったんですよ。結果的に若い方を集めたのは正解だったのかなと思っています。

編 それですっと理解を得られるのがすごいです。

村 これはちょっと裏技もありまして、年配ユーザーのコミュニティーの中にはボス客みたいなのっているじゃないですか。権力を持っている常連みたいな人が飲食店とかを経営していると食べに行って、会話するんですよ。「僕、アルファって店で店長やってるんで、めちゃめちゃ頑張ってるんで絶対来てくださいよ」って。で、その人が打ちに来てくれてたくさん出ましたとなったら、周りに広めてくれるじゃないですか。そういうことを何人も何回もやっていました。

編 お店の営業じゃなくて、村田さんによる店長個人の営業じゃないですか。

村 SNSもそうです。誰かがアルファで「6確した」と言っても、そこにコミュニティーがなければ1人の感想なだけなんですよ。でもそこで誰かが反応して会話が生まれたりすると、それが口コミになっていくんです。2日に1回くらいのペースで閉店後にライブ配信したりして、「今日の営業どうやった?」みたいなことをお客さんと話したりして、感想を聞いたりします。 

編 なんか境港市のユーザーをハックしたみたいな話ですね。

村 なんだかんだ人が人を連れてきてくれますから。

編 初手のパチスロ全振りから、知名度の低さをすぐに課題設定してSNSもうまくいくのはすごいです。

村 全部あたったわけじゃないんです。店長になって行き詰まった時もあって、その時は一週間泊まり込みで横浜の流行っている単店に調査に行ったりしました。

編 横浜? 何をしに横浜へ?

村 「流行っている手法を教えてほしい」と教えてもらいに行ったんですよ。

編 誰が相手にしてくれるんですか。

村 「こういう状況の店で、教えてくれる上司もいなくて……」と真剣に頼み込むと意外と相手にしてくれるもんですよ。エリアも遠すぎるし、自店の邪魔にもならなそうだし「まいっか」って感じで。さっき話したボス客を狙えってのも、横浜にあるお店の部長さんが教えてくれたことだったんですよ。「嘘でもいいから常に出てますよ、賑わってますよとアピールをしろ」「ネガティブな店にお客は行きたくないから、SNSにはポジティブなことしか書くな」「あたかもうちが一番店ですよと装え」「絶対に現場には立ち続けた方がいい。店長でも、最前線で状況を見てないと、いつかお客さんとの壁ができるぞ」とかいろいろ教わりました。こういうことを何店舗も行って、そこでいろいろ持って返ってきて、全部試したりして、SNSももっと箔がついていきました。

編 そんなムーブする店長初めて聞きました。そんなことできるもんなんですね。めちゃくちゃ驚いてます私。

村 だって教えてくれる人誰もいなかったんですもん。

編 村田さんの上に部長さんとかいないですか。 

村 統括店長なんですが、社内では部長職で、もう上は常務と社長だけです。社長は若くて理解もある方ですが、常務は65歳で堅物。変われない店って大体上に地蔵みたいなのがいるんですよ(笑)。その人たちが屈強すぎて自分たちの意見が通らないから、ぬかるみから抜け出せない。僕はそれをすべて無視しました。

編 その世代の方からすると、SNSとか理解するのも難しいですよね。

村 「そんなことなんのためにやるんじゃ」というのもありました。イベント1つとっても、昔は1日でドンと出す感じだったんですよ。でも、僕は1日でドンよりそれ分配した方がよくねと思っていたので、全部変えていったんです。

編 上が反対していることを押し通せるのはすごいですね。

村 もうめっっっっちゃ、戦いました。「とにかく死ぬ気で売上上げるんで、今までより出玉出していきます。利益率は死ぬほど低くなりますけど残す利益額は今までと同じです」と宣言して、赤字になった月はありません。

編 すごい会議になりそう(笑)。

村 一触即発ですね(笑)。半年間黙っといてくれと。黙らせたというより、最初はもう無視です。山陰地方でパチスロに関してうちより稼働率が高い店はないという結果をちゃんと出してから黙らせました。

編 いろんな改革の中で、一番きつい戦いだったのは……。

村 社内です(笑)。飲みの席で常務が言うんですよ。「アルファがこんだけ増えてお客さんからも『最近すごいね』と言われてワシも気分がええわ」と。間髪入れずに「やっと気づきましたか」とあおったりしています。

編 ギスってるのか、関係性がちゃんとあるからなのかもう分かりません(笑)。

村 僕にしかできない、真似できないのは、転換と発想だと思うんですよ。頭硬すぎたら流行らないし、柔らかすぎだと頓珍漢になっちゃう。平成から令和になって世の中変わっているんだから、ある程度時代に沿った形で舵を切らないと。世の中に蔓延っている化石たちがいつまでも偉そうにしてちゃダメなんですよ。 

編 この内容は地方の同じような境遇の店長さん、焚きつけられるかもしれないですね。

村 自分のやりたいことがあるなら、なんでもやってみりゃいいと思うんです。でも、そこを突破できないのは、プレゼン力なのか交渉力なのか。僕はこう見えてちゃんとデータをもってプレゼンします。「何年後にこの数値を超えます。だからこう変えていきます」と。最初は突っぱねられるんですよ。そしたらもう喧嘩腰。「本当にそれでいいすか。このままでやってどうやって金返していくんですか。よそでは、こんだけ数字上げているところもあるんですよ」って。僕ね、チャレンジをしてみるのは絶対必要だと思うし、店を任されている以上、自分(店長)が舵取らないでどうするのと思うんですよ。だったらもっとぶつかっていったらいいんじゃないかなと。あとは周りに味方をつけること。1人ずつ買収していって味方を増やして会議で総攻撃ですよ(笑)。そうすれば社長も陥落するかもしれない。僕だって何回も失敗したけど、何もせず衰弱していくよりも、変化を繰り返した方が良くなると思うんですよ。ぶっちゃけ事業に失敗しても店長が借金を背負うわけじゃないじゃないですか。所詮雇われだぜって。

編 35歳の若さでそこまで達観してすごいです本当に。

村 その分努力も見せてますからね。僕、365日毎日店にいるんですよ。朝も閉店後も。会社はちゃんと休みをくれるので、〝自主的に〟ですよ。その姿は常務しかり、社長しかり見ているので。これがなんもしない奴で能書き垂れてるだけだったら意見も通らないと思いますけど、自分なりに積み上げてきたものもあるので、それを見て最終的に任せてくれている社長のおかげです。ライブ配信でも「社長はマジで神」と言っています(笑)。 

編 まさに今は村田さんの理想の状況と言えるのでしょうか。

村 僕自身もパチンコ・パチスロする方だったので、一番は本来の遊技の楽しさを知ってもらいたいなと思っています。鳥取県、島根県の等価市場でも率先して出しにいったんです。そうすると、どこの店も「アルファより出てない」と比較されるようになってきました。これは自惚かもしれないし、他店からすると「元々だワイ」と言われるかもしれないけど、出玉合戦がちょっとだけ始まってきているような気がするんですよね。お客さまから「アルファのおかげで結構市場の意識変わってきてると思うよ」と言われるようなこともあって僕の理想に近づいている。出し合いとか出玉合戦があるとお客さんが店を選ぶようになる。そこで勝ち残りたいですよね。 

 

ピデアな男, アルファ境港店