地元常連客を大切にする老舗ホール「エムディー目黒」がパチスロ増台リニューアルで広域集客を狙う

2025.02.14 / ホール

ここでしか味わえない!中小規模店ならではの楽しみ方(エムディー目黒)

かつては「みどり会館」という屋号で地元客に愛されるホール営業を続けてきた。エムディー目黒に屋号を変更してからはもう17年が経過する。地元常連客は同店のことをいまだに「みどり会館」と呼ぶ人もいる。そんな駅前型老舗の中小ホールは、どのようにこの厳しいパチンコ業況をサバイブしているのか。


駅前徒歩0分「エムディー目黒」


 東京都品川区、目黒駅西口に「エムディー目黒」という設置350台ほどの中小ホールがある。駅を出て徒歩0分。小さな信号をわたればすぐという好立地だ。かつては店舗100メートルほどの位置にガイアが。駅反対の東口には、CUBA 6thというパチスロ専門店が競合店として存在していた。

 現在エムディー目黒を切り盛りするのは、かつてホールコンサルタントとしてさまざまな法人で活躍していた経験のある松山翔店長だ。松山店長の正式な就任は2019年から。PS併設型の駅前店。就任当時の平均IN枚数は4000枚程度だった。それでも、土地・建物が自社物件ということもあり、支出が少なく、2018年にはガイア目黒が撤退。利益を出すことはできていた。
 

目黒駅西口の広場。
駅を出てから1分もかからない好立地で3フロアのお店を営業できるのも、やはり自社物件であるため。

 

 当時から変わっていないが、エムディー目黒の武器はスタッフの接客レベルの高さが礎となっている。アルバイトを含めスタッフの能力が非常に高いのが密かな自慢で、例えばインカム1つをとっても常連ユーザーが「どの台にいくら使ったか」などの情報をお互いに共有しあっているなど、本来であれば店長クラスがホールコンを見ながら分析するような高度な情報が飛び交っているそうだ。また、その情報共有はそのまま接客の質に反映される。

 「例えば『黒縁メガネのバック持った方が今からエレベーターに乗ります。多分3階まで行くと思います』というようなことがすぐ共有されて、上の階にいるスタッフがエレベーター前まで待機してお出迎えするみたいなことが当たり前に行われているのです。すごいのがそのお客さまが会員かどうか、好みの台や前日の遊技がどうだったかなども分かる時は共有されてます。これがあると、遊技中に会員勧誘にしたり、その後のアクションにも影響があります。自分自身、さまざまな店舗にいましたがこれほどのオペレーションは見たことがありませんし、最初みたときは驚きました」(松山店長)

 店内のスタッフたちは若い女性が多いが、声をかけた際の返事やその速度、表情などから、そこはかとなくホスピタリティの高さを感じる。身なりや態度がキチッとしており、これが目黒という土地柄の地主や高所得者ユーザーの心をつかまえた。日中の店内には若者以外の来店客も多く、若い女性スタッフと友だちのような距離感で会話するシーンがそこかしこで見られる。

 これこそがエムディー目黒の業績を支えてきた企業文化だった。松山店長が就任する以前から続くもので、中小ホールかつその地で長く営業する老舗にとっては必要不可欠な要素だ。 
 

昨年10月29日に行ったPS変更工事リニューアルがヒット。スマスロ好調を追い風にした

 

 徐々に業績を伸ばしていく中で、2022年には駅東口にあるCUBA 6thが閉店となった。これにて、目黒駅前はエムディー目黒の独占市場となるが、都内の一駅間は近い。隣駅や新宿まで10分程度ということもあり、地元集客を大切にしつつも、他エリアからも集客をしなければならなくなった。そこで松山店長が打った手が好調になりつつあるパチスロの増台だった。同店は3フロアの構成となっており、1階・2階がパチンコフロアで、3階にパチスロが集約していたが、2階をパチスロのフロアにPS変更工事をしたのだ。

 これには巨額の費用がかかるし新店長が就任直後にやることではないのだが、その辺りはやはりコンサルを努めた経験もある松山店長だ。これくらいお金をかければこれくらいの売上が増えるはずというシミュレーションを入念に行いそれを断行。
 

リニューアル以降は3階にメダル機を集約。ジャグラー以外もAタイプは充実している。

 

 またパチスロを中心とするリニューアルを行い売上を大きくすることで出た利益を積極的に還元できるように営業内容を調整した。面白いのが特定日をチューニングしたことだ。元々は3のつく日のみだったところに9のつく日を足し、さらに0を足した。さらにCUBA 6thが特定日としていた6のつく日を閉店した際に吸収する形で特日を変え、3と6と9と0という形になった。

 これが当たり昨年10月29日のパチスロを増台リニューアルした際には、777人の抽選枠に対しコンパスの抽選が2000人を超えた。パチスロ台数を超える人数が並び、自由が丘など他エリアのユーザーが少しずつ意識を向け始めるようになった。
 

目黒区のホールではあるが、
品川区を中心とする共闘企画「しにせぇず」にも参加している。

 

 また特日の増加にあわせXの運用も活性化。アルバイトを含む全スタッフを積極的に登場させるなどし人気アカウントに成長させたのも良い手だった。伸びた売上で設定を入れ、特日をしっかりと告知。またスタッフがウリであると見るやそのXをスタッフに任せ、新たなファンを獲得、さらに特日の認知向上に生かす。これらのサイクルが「エムディー目黒」を名店として押し上げるようになった理由のようだ。

 同店のユーザーは必ずスタッフが発信するポストを見て、その日の営業を察する。そしてこのフットワークの軽さ、コロナの影響から脱するためという動機があるにせよ長く続く店舗を新店長が自分色に染め上げることができたというのも、中規模店舗ならではのことだろう。

 「こんな小さなお店でも出玉で結構頑張ってるんだぞというところを実際に来て体感していただきたいです。スタッフのポストもしっかりやっているので、それも見て良い台を探す楽しみを感じやすくなっていると思います。ぜひスタッフの接客の良さも一度体験しにきていただきたいですね」(松山店長)
 

エムディー目黒/松山翔店長

 

エムディー目黒