成増商店街で営業を続けて足掛け52年、海アウト平均4万発〝ほぼ〟パチ専の理想郷「成増会館」
2025.02.14 / ホールここでしか味わえない!中小規模店ならではの楽しみ方(成増会館)
店の看板機種である「大海5」(39台)はアベレージで4万発を超え、第二の柱である「エヴァシリーズ」は3万発に迫ろうとするほど。そんな異次元な稼働を作り出しているのが、成増商店街で52年営業を続けてきた老舗・成増会館である。同店が目指したのは、今目の前にいるお客さまを絶対に離さない色濃い接客だ。そんな店を切り盛りする田名網良店長に真髄を聞いた。
パチンコはビジネスじゃなくて客商売!
東京都板橋区の名店「成増会館」は総台数は473台だが、ラインナップはパチンコが413台。パチスロは60台で、しかも5スロのみ。つまり今の時代にはほとんど見られなくなった〝ほぼ〟パチ専である。他店では稼働の中心はあくまでもパチスロであり、目玉機種への積極的な設定投入で客を呼ぶというのが一般的になっているが、成増会館はなんとほぼパチンコのみで連日高稼働を維持しているのである。一体そこにはどんな仕掛けがあるのか。田名綱良店長によると自店の一番の特徴は「濃密な接客を本気でやっていること」だという。
パチンコに限らず、「地域密着」のお題目を掲げる店舗は日本中に無数に存在する。これはそのまま「地域の住民に愛される」「良い協力関係をつくる」という意味になるが、「これが正解!」という明確な形がないのも事実。従って何か商売をする際にはとりあえず地域密着を謳っておくのが常道ですらある。が、実際にこれを本気でやると一体どうなるのか。その問いの答えが成増会館にあった。
「低貸しでやるような接客を売りにした形態をほぼ4パチ専門店でやろうとするもので、いわば常連さんたちだけを相手に営業している、家族でやっているような居酒屋。パチンコの旗艦店でこれをやろうとした時に『正気か』という声も社内でありましたが、本気で取り組みました。コミュニケーションをしっかりとってデータ化して常連さんのことは名前でお呼びできるようになりました。インカムでも『●●さんが来店されました』と共有されますし、そうなったお客さまはありがたいことにお店を応援してくれるようになるのです」(田名綱店長)

お店側がどう思って導入したのかなどを知ってもらうための手の込んだPOPとなっている。
成増会館は同じ土地で50年以上営業を続ける非常に歴史が深いホールである。昔から通い続けているシニア層のファンが非常に多く、三代続けて通っているユーザーもいるとか。だからこそたとえ打たなくとも来てくれるだけで「ありがとうございます」を伝えるなどの本気の接客が刺さるという側面もあるのかもしれない。そして一度それが刺さった人は、もう成増会館のファンであり、お店を応援するサポーターにもなるのだろう。


例えば昨年、成増会館の近くに倍以上の規模の大型店舗がオープンした。しかし、普段から成増会館で打っている常連客は普段通り海やエヴァを打っていた。ある日、成増会館のスタッフが新店の様子を見に行った際、「成増会館がいっぱいだからこっちに来てるだけだから」と恥ずかしそうに言い訳をする常連さんに出くわしたという。なんともホッコリしたエピソードだが、これだけでも常連さんと店の関係値がしっかりでき上がり店舗のサポーターになっていることが分かる。そのお客さまは成増会館を応援し、稼働に貢献したいのである。こんなにありがたい話が他にあるだろうか。
もちろんそうなるためには試行錯誤の連続だった。例えば、来店ポイントを貯めるという一般的なサービスも専用機械にかざすだけでポイントが貯まるものや、中にはGPSなどの情報から入店しただけでポイントが貯まるタイプのものもある。成増会館もタッチ式でポイントが加算されるシステムを採用していたが、あえて手で押す紙の台紙を用いたスタンプカードに切り替えた。ユーザーからすると不便かもしれない。業務的にも効率が良いことではない。しかし、それ以上に常連客と関わるきっかけをつくることができるということを狙って決断をした。
他にも大小さまざまな取り組みがあり、それらはすべてお客さまとの接点を多く持つためのものだ。そして、それらから得た情報はすぐにデータ化、どのスタッフがどのユーザーとどういった形で親交を深めているかを記した「関係性マップ」というものが作られるようだ。そう、関係が深まったスタッフにとってそのユーザーは「店のお客」ではなく「自分のお客さま」になるのである。関係値が可視化されることでより心のこもった接客にフィードバックされるのだ。もちろんこれらの取り組みはスタッフへの負荷が大きいのも事実だが、みな成増会館のプライドを持って取り組んでいる。

さらにもう1つ特殊なのが、成増会館はシニア世代の嗜好にあわせ誘客の1つとしてDMも活用しているという点。会社内ですら今の時代にDMと疑う声があったが、これも本気で取りんだ結果今ではDMの発送は元々670人ほどだったが、本格的に取り組むようになってからは1500人ほどにまで増えた。
これらの努力の結果、特にシニア層からの支持を受け連日高稼働が続き、特日にはデータ分析システム上の稼働率の数値が全国で上位になった日もあった。繰り返すがこれはほぼパチンコ専門店の、しかも中小ホールの話である。
近年は「若者のパチンコ離れ」というワードが盛んに取り沙汰され、業界も全体でそれを呼び戻すためにさまざまな策を打っている。もちろんそれも重要なことではあるが、コロナ期に激減したシニア層の稼働がまだ完全に戻りきってはおらず、むしろそこで離脱してしまったユーザーも多い。成増会館の、シニア世代に寄り添う考え方と全力接客の取り組みは、他の法人にとってかなり示唆に富んだものである。取材の最後に訊いた、店長のこんな言葉が印象的だった。
「成増会館なんて昭和風な名前のホールが、今の時代にほぼパチンコだけで勝負しています。都内でも上位を狙える状態にありますし、ゆくゆくは全国でも上位を狙っていけるだなんてめちゃくちゃかっこいいじゃないですか。これは僕もそうだしスタッフたちのプライドになっています。地域の方が愛してくれているから成立していて、僕がやることはそんな縁を、壊すことなくつないでいくことだと思っています」
