【ピデアな男】16MGMいわき泉店/エリア長・小島 克昭

2024.12.19 / ホール

良い時も悪い時も−。私のやり方はバカ正直に なんでも伝えてしまうこと。

 福島県いわき市にある「16MGMいわき泉店」は、全国で38店舗ある一六商事のパチンコホールの中で、もっとも業績が高い店舗である。今回取材した小島克昭氏は、この店舗をグランドオープンの時から9年間にわたって店長を務めており、この春に昇進し、同店店長兼4店舗のエリア長となった。小島氏がもっとも大切にしているのは「信用」。その真意を聞く。

 
PiDEA編集部(以下、編) 小島エリア長は現在おいくつですか。
小島克昭エリア長(以下、小) 39歳です。MGM歴は17年です。
 大学卒業と同時に入社ですか。
 はい。正確には、大学在学中にアルバイトでMGM水戸店で勤務していましたのでもう少し前ですね。就活はしていたんですが、なかなか自分に合う会社を見つけられなかったんです。自分がやりたいことはなんだろうと迷っていた時期でもありました。ただ、そんな中でもパチンコ・パチスロでは遊んでいました(笑)。
 アルバイトからそのまま社員登用という流れですね。
 今本部長をされている方が、当時水戸エリア5店舗のエリア長を担当していた時に誘ってもらいました。私の接客態度を見て「あの子、いいね」と。
 前号で、「Twitterでは言えなかったXXXな話」という連載コーナーに、かなピーエリア長が出ていましたが、この時も絡みはあったんですか。
 当時かなピーさんはチーフというポジションで、直接声をかけてもらったのはかなピーさんでした。「就活に悩んでいてやることないなら1年くらい正社員やってみない?」みたいな感じで。
 それから小島さんのMGM生活がスタートするんですね。
 入社の意を伝えた翌日には、水戸から15kmほど離れた友部に異動になっていましたね(笑)。当時一六商事内でも社員数がそこまで多くなくて、そういうこともあったんです。で、当時の店長からみっちり叩き込まれました。もともと接客は嫌いじゃなかったので問題はなかったですが、営業は面白い反面難しさもあり、その魅力に引き込まれていきました。
 このいわき泉店はMGMグループの中でもっとも稼働が高いお店で、当時の教えが今も生きているということですかね。
 もちろん社内でも多大なるサポートをいただける体制にはあったので、自分だけの力ではないと思います。
 いわき泉店の稼働は、どれくらいなのでしょうか。
 今は4円パチンコのアウトでいうと2万3000〜4000個くらい。1円パチンコは3万3000〜4000個くらい。どのホールさんも復活傾向の20円パチスロはそこまででもなく、1万3000枚くらいです。
 いやいや、全国平均よりもだいぶ高いじゃないですか。どうしてこのお店は高稼働なのでしょうか。
 あまり地域で一番とかは意識していなくて、いわき市内でも強いお店はありますし、負けないようにという思いでやってきました。強いていうなら、あまり周りのお店でやっていないことを頑張っていることかもしれません。
 周りの店でやっていないことと、言いますと?
 ここがグランドオープンした9年前くらいは、自店顧客への情報発信ツールといえばメールでした。そこをオープンのタイミングでLINE@にしたいと上司に相談し、それが通って他の店舗よりも早く運用できたんです。その他にもコロナ禍の後の分煙などもいち早く進めることができました。こういうことの積み重ねかなと思っています。
 
 小島さんのお店づくりで一番大切にしていることってなんでしょうか。
 9年前からこの店の店長で、実は他のお店で店長経験がないんです。オープン前にこのエリアを市場調査した際に、何度かライバル店さんを拝見しました。そこで気付いたのですが、店長自ら表に出て、積極的に接客しているところはどうやら多くないぞと。そこに対して、私は会いにいける店長みたいな感じで気軽に話せることをモットーとして活動しています。よく同僚や上司から「小島のこだわりは何?」ってよく聞かれるんですけど、自分が何をこだわっているのかよく分かっていません(笑)。こだわりがないのがこだわりです。
 本当ですか。パチスロは毎日センター7揃えを徹底していると聞きましたよ。それもこだわりの1つなのではないでしょうか。
 そういえばそうですね(笑)。全台リセットも一日も欠かさずやっています。一回転だけ回してカニ歩きして探すということが嫌いで、それを防ぐためのセンター7揃えでもあるんです。自分がいちユーザーだったとして、休みの日に朝から打ちに来てセンターに7が並んでいたら気持ちいいじゃないですか。夕方の仕事帰りのお客さも大切ですが、やっぱり朝に入ってきた時の印象や雰囲気。そうした目に見えない空気みたいなのはこだわっている部分ですね。
 以前、営業部分で叩き込まれたというお話でしたが、その時に教えてもらったことで印象に残っているのは。
 上司だったかなピーさんの営業スタイルは独特と言いますか、見ていて楽しかったですし、学ぶことも多かったです。全面に自分を出して、自分がイベントになっちゃうくらい。あのスタイルは各店長の中でも見たことないですね。MGMグループではどっちかというと表に出ないで、縁の下の力持ちタイプの人が多い印象です。その中であのスタイルは良い意味でも悪い意味でも目立つなという印象はありました。
 ちなみに小島さんもXではなくInstagramをメインに運用していますが、これはなぜでしょうか。
 きっかけは、インスタ映えに乗っかった感じでした。Twitterのネガティブな発言が多いのが、自分にあんまり合わないと思っていたんです。なのでInstagramで、ちょっと写真で捻りたかった。答え合わせとしてね。
 SNSはどんな運用を?
 前号のインタビューでも答えましたが、ツールはXでもInstagramでも何でも良くて、お店として何を意図して表現するかが大切だと思っています。私は自分自身が人気者になりたいというタイプでもないので、黒子的な感じの役割です。もし有名になれるなら自分だけじゃなくスタッフの皆んなも含めて有名になりたいですね。ただ、自分もいつかは異動する時が来ると思っています。
 9年ですもんね。
 ここ数年はいつ異動になってもおかしくないだろうなと思って働いてきました。やはり、何年も勤務していると、自分たちが作り上げてきたという思いはありますが、それに捉われすぎて気持ちを入れすぎちゃうと、後任が大変になってしまうだろうなというリスクも考えるようになってきます。「小島の店」という見え方になってしまうのも会社としてあまりよろしくないかなと思いますし。
 後継者育成は必須ですね。
 何人か入れ替わっているんですが、当店のナンバー2はいます。彼らは「なんでそういう営業するんですか?」といった感じで私のやり方に疑問を感じることが多いみたいです。
 どんなところに疑問を?
 例えば、夜のうちにパチスロのセンターセブンとか、設定をある程度叩いておくんですけど、朝起きて用意して出勤する車の間に、なんかふと、「今日は何の日」みたいな情報を目にすると、思いつきで朝に打ち変えちゃうとか結構あるんですよ。開店5分前くらいに「やっぱりここ変更して」みたいに、全台系の機種をつくってみたりとか。
 たしかに急な変更ですが、思い付きなので理由はなさそうです(笑)。
 大体の店長は月の予定を決めて売上予測と粗利を計算していくと思うんです。でも、私はちょっと余裕があるとやっちゃうんですよね(笑)。そもそも業績の進捗というのは予定通りにいかないものだと思っています。こういうアドリブは説明が難しいですね。ただ、かなピーさんしかり本部長しかり、上司が営業に関しては口を出さずにいてくれたことが大きいです。ただ、一方で、スタッフも「今日あそこ朝一で埋まりましたけど、何かあるんですか?」みたいに楽しんでくれているので、気付いてくれるのはありがたいなと思いますね。
 たしか、このお店は来店や取材を活用しないことも宣言されていましたよね。
 あれはかなピーのアカウントで「〜のようです」と伝聞形式でポストされた情報ですね。たしかにそういった媒体を活用しないことを選択しましたが、まず前提として存在を丸ごと否定をしているわけではありません。私が管轄する4店舗の中には、媒体の力を借りている店舗もあります。今はおすすめ機種をホールが表現できるようになりましたが、それも嫌だなと思って、あえてしない方法を選びました。
 その理由を詳しく言語化してみてください。小島さんのホール感に迫れそうな気がします。
 上司から「なんでやらないの?」と聞かれたことがありました。私は「逆に聞きますけど、おすすめの内容ってなんですか」と聞き返しました。10人のお客さまがいたら、受け取り方は10通りあると思うんです。「毎日5、6で組んでる」とか「あって4、5、6」でしょとか。おすすめというワードを出したら、そこだけしか狙われなくなり、なおかつ満足してもらえたかどうかも分からない。だからやりたくないんです。
 満足したかどうかというのはなかなか判断が難しいところです。
 その点、私のやり方はバカ正直になんでも伝えてきました。それこそ良い時も悪い時もです。会社なのでどうしても利益を多くいただかなきゃいけない日もあります。そんな時は朝イチからは言いませんけど、「今日はごめんなさい」というようなことも口頭で伝えられる範囲で伝えてきました。「16日近いので〜」とか「誕生日があるので〜」とか。そういう正直な営業をしてきたことも、ファンが増えた一つの要因かなと思っています。
 良い時ばかりではなく、悪い時は悪いと言ってしまうのは勇気がいることですが、顧客からは信頼は得られそうですね。
 それはどの店舗よりも大切にしてきました。店長としてこの店を長く営業してきたというのもあると思います。これが、「1、2年で業績上げてくれ」という指示だったら当然、別のやり方をしていたでしょう。管轄しているエリアの勿来(なこそ)店はまさに苦戦中で、私がエリア長になったからといって、なかなか一気に変えらるものでもありません。
 店長兼エリア長というのはなかなか骨が折れるポジションですね。
 まさしく(笑)。同じ商圏ではなく、ましてや県外の店舗なので、土地土地の違いもありますし、機種のラインナップからブランディングまですべて違いますので、戸惑いはあります。どの地域でも言えるのは、店長が朝お出迎えしているだけでも、やっぱりお客さまからの信用は違ってくるかなと思っています。私も新装開店や、このお客さまに来ていただきたいという日にはちゃんと入口に立ってお出迎えしています。
 店長になったらホールに出たがらない人もいると思いますが、出た方がいいんでしょうか。
 やっぱり人によって感性とかテクニックは違うと思いますが、ちゃんと来ていただいているお客さまに、あいさつするというところは一番口うるさく言っていますね。もし、それをやってない店長とかいたら、その人は店長をやるべきじゃないんじゃないかと思います。
 そこまで重要ですか。
 私の場合は、なんなら多い時は抽選からも参加しています。スタッフが足りていようがいまいが、自分が気になってしまうので出てしまいますね。やっぱり気にならなくなったら店長はやらない方がいいのかなと。うちでいうと16日にどういうお客さまがいらっしゃって、どの台から埋まっていくのか。これってお客さまとの駆け引きなんです。それを気にしなくなったら店長は正直やらない方がいい。
 店長の一番重要な仕事だという考え方ですね。
 お店に出て気付かされることって本当にいっぱいあります。例えば、足の不自由なお客さまをみて、「自動ドアの開閉時間がちょっと早いかな」とか気付きがあったり。機械選定に特化している店長もいらっしゃると思いますが、私は正直データ管理とか機械選定とかも得意ではありません。苦手とまではいかないけど、やらなくていいと言われたらやりません(笑)。瞬発力があるやり方ではないので、すぐには結果が出ないと思いますが、気付いたらじわじわと上がっているはずです。
 イベントなどで瞬間的に集客するわけじゃない分、他店からするといわき泉店の稼働を奪うのは難しそうですね。
 自分がどっちのお店行くかとなった時は、イベントが盛り上がっているお店も魅力的なんですけど、やっているだけになっちゃうのは良くない。
 駆け引きの主体は媒体対ユーザーではなく、ホール対ユーザーであるべきですよね。
 広告規制が緩和されたタイミングで1年ほど前から来店バブルが始まってきました。元々来店に対しては疑問があって、「塊が〜」とかそれだけを探す遊び方がちょっと嫌だなと思っていました。抽選を受けて、狙って、打って、探してもらう。これがお客さまとの駆け引きであり、ホール営業の醍醐味だと思っています。
 
 上司がこのいわき泉店で「媒体使いたい」と言い出したらどうします?
 もしどうしてもとなったら、特定の機種はあえてごめんなさいして、勝手に違うところに入れてみたりするかもしれません(笑)。
 小島さんってやっぱりちょっと異端ですよね。しっかり上司に立ち向かってる感もある。
 このお店は最初から順風満帆だったわけではありません。グランドオープンして1年経たずにPS工事をしたいと願い出て、80台分をPからSに変更しました。その時も私一人ではなく、上司も一緒に戦ってくれました。絶対に通したいという信念はあるかもしれません。
 今後の目標を教えてください。
 ここのいわき泉を母店として維持しながら、他の店舗に注力していければなと思っています。統括している店舗でも、店長が頻繁に変わっている店舗があるので、まず信用を取り戻すためにも自分の色が出るようなポスターとか、可能な限り朝のお出迎えもしようと思っています。
16MGMいわき泉店, ピデアな男