店長より上のSNS運用を考える/株式会社キング観光

2024.09.21 / ホール

海外でも、インスタとかYouTubeの数字が正義。
だから勇気を持ってSNS上へ

株式会社キング観光/副社長
権田 淳氏
 

 

 

部長職である私のような存在が
ハブ的になることに意味があると考えています

株式会社キング観光/営業部長
しまんくす氏
 

副社長の権田淳氏は、自らTikTokの動画に出演して広告塔となり、営業部長のしまんくす氏も、多くのホールと共闘のプロモーションを画策し、動画にも自ら出演する。キング観光といえば、今パチンコ業界でもっともSNSに理解のある会社と言えるかもしれない。だからこそ、店長より上の役職者がSNSを運用することについて一過言あると思い話を聞いてみた。


「ダルビッシュ有選手がTwitter(当時)でファンの方と交流しているのを見て私もやり出しました」

 自身のTwitter運用がスタートしたきっかけをZoomの画面越しにそう答えてくれたのは、キング観光の営業部長を務めるしまんくす氏だ。当時キング観光サウザンド栄若宮大通店の店長だったしまんくす氏は、実際に営業を生み出している人だからこそポストされる言葉や表現が第六感に働きかけることを知っている。
 「ただ店長はあくまで単店としての存在として強いので、部長職である私のような存在がハブ的になることに意味があると考えています。私が発信することは特に中身はないんですけど、『数字の魔力』というものはありますからね。今は数字を持っている人の方が信用される社会です」(しまんくす氏)
 このところ、他法人との共闘企画も順調に話題性を高めており、営業部長となった今も矢面に立つ姿勢は店長陣よりもアグレッシブだ。基本的には、管轄する名古屋5店舗のプロモーションを後方支援する立場としてXを運用している。
 
キング観光の仕掛け①
あの騒動からの展開
キング観光といえば、YouTuberの現役設定師氏と業界を騒然とさせたことは記憶に新しいが、それも束の間。騒動が終わるや否や「因縁」という形でコラボレーションを実施したのだ。炎上したら、そのエネルギーを宣伝に使うという判断の早さと的確さこそ、キング観光の真骨頂といえる。パチンコの情報を追っている人なら、あの騒動のあらましくらいは分かる。それまで「バチバチに揉めていた両者がコラボしたら面白い」という、この想像力はインフルエンサーも顔負けである。
 
 「店長の時はお店の告知をしていけばいいだけなので特に難しいこともなかったですね。そこから上になると少し内容が変わってきます。店によっては告知しなくていい店もあります。例えば、若宮店と金山店は頻繁にポストしていますが、柳橋店はポストに反応するお客さまを集めなくてもいいと思っています。私がつぶやくとイベンターが集まってしまいますからね」(しまんくす氏)
 一方、多忙につきしまんくす氏より少し遅れて入ってきたのが、ジェームス柳橋ことキング観光副社長の権田淳氏である。権田氏はX、YouTube、TikTokとあらゆるSNSを自らの身元を明らかにした上で運用しているパチンコ業界で傑出した人物である。
 「うちの店長も最初はSNSが上手くなかったけど、しまんくす君が営業戦略部長も兼任して全体の営業戦略をつくって徐々にいい形になってきました。SNSは地頭がよくないと運用が難しく、またセンスがものをいう面白い世界です」(権田氏)
 しまんくす氏がTwitterを始めたのは店長の時だった。一方で、権田氏がTwitterを始めた時は、すでに経営者であった。権田氏に、なぜSNSを自らやっているのか、その目的について聞くと、「ただ承認欲求を満たしているだけ(笑)」と冗談を放った後にこう続ける。
 「そもそもTwitterを始めたきっかけは、2020年12月28日に金山店がグランドオープンするので、そのプロモーションをしようということでした。それから2021年12月29日に柳橋店のグランドオープンとなって改名。ある程度柳橋店も軌道に乗ってきたところで僕のアカウントの目的は達成されたので、あとは適当にしまんくすに命令されてリポストしているだけです(笑)。僕が参考にしているのはしまんくすのアカウントだけ。彼が社員旅行とかに行くと、彼は写真を撮ってこまめにポストしているんです。そういう姿勢は参考にしています。しまんくすと僕が同じ組織の人間として見られるなら、彼とは違う視点でのポストをしていこうかなと思っています」(権田氏)
 権田氏のいう、「彼(しまんくす氏)とは違う視点でのポスト」とは、個店、個社の利益追求というよりも、業界全体を俯瞰した視点のことである。例えば、次期選挙の話題を自ら持ちかけて問題提起をしてみたり。中にはその投稿を見た人が「あなたのような立場の人がそんなこと言っていいんですか」と自由闊達なポストに制限をかけようとする声もある。これに対しては意見を述べる。
 「イーロン・マスクやトランプもXをやっているじゃないですか。だから、その業界を良くするとかそういう正義があるなら立場がある人でも反論を恐れずにSNSをやった方がいいと思っています。経営者になると、叩かれるのが怖くてやっていない人は多いです。銀座とか六本木でもSNSやっている人の方がモテますからね。
 しまんくすも言っていましたが数字の魔力です。海外に行っても、インスタとかYouTubeの数字が正義。だから僕も勇気を持ってSNS上に出ていきました。僕はすぐ調子に乗るタイプなので、ブログやっていてもアンチが湧きましたし、写真から自宅を特定されたりしたこともありました。そういう経験もありながら、やっているということは自分の身分も晒される覚悟の元やっているんです」(権田氏)
 効果が出る出ないは別として、この世の人間はすべてSNSをやった方がいいというのが、権田氏の考えであり、キング観光の社風でもある。特にパチンコ業界は、主戦場がXに絞られているきらいもあり、やる内容によって大きな渦を生み出すこともできることは明白だ。
 

エグゼクティブクラスのSNS運用でキング観光の右に出る者はいない

 

今でこそしまんくす氏が「忙しい」とポストするだけで多くのユーザーが反応するようになってきているが、しまんくす氏、いやキング観光はいくつもの失敗を重ねてきた。
 「しまんくすも僕のYouTubeに無理やり参加させて、それでもバズらないYouTubeを試行錯誤しながら苦しみながらの上で成り立っています。あれがなかったら、動画でゼロから何をつくろうとしても分からないと思います」(権田氏)
 
キング観光の仕掛け②
Instagramのリールを使って求人もやっている
上記はすべてInstagramのリール画面のスクリーンショット。キング観光では、人材の募集をSNSの動画で行っている。幹部職の高い年俸でアプローチをかけることもあれば、アマギフをプレゼントするアプローチをしたりしている。右側写真の「ポルシェで通勤している」という写真は、店長以上の幹部になると、同社では福利厚生として社用車を支給されるため、会社から支給されたポルシェを店長が乗って通勤するという、キング観光にとっては普段の光景を動画化して社風を伝えている。
 
 キング観光ではすでに新しい試みを取り組み始めている。Instagramのリールで、TikTok用に撮影・編集した人材募集の動画を公開している。だが、実はこの目的は、応募者数の促進ではない。まずは社風を知ってもらうことだという。
 「応募は3名くらいは来ていましたが、Instagramについては正直数はどうでもいいと思っています。あれはイメージ戦略で、風通しが良い会社で、カッコいい幹部や明るい女性社員みんながTikTokやっているんだと思ってもらえればいいんです。パチンコ業界はいまだに怖いと思っている人が多いですから、『こんなにイケメンで爽やかで優しい人たちがパチンコ店の中にいるんだ』というのを見せたいのです」(権田氏)
 その考えも、行動も、非常に先進的である。昨今は、インフルエンサーによって作られる商品やサービス紹介のコンテンツに肩を並べるくらい、UGC(User Generated Content)のようなユーザー生成コンテンツがSNSではヒットしている。
 キング観光が行っているのは、あくまで企業としての動きではあるが、しまんくす氏も権田氏も、企業という看板と同じくらいの立ち位置に個人が存在する。だからこそ、UGCのような身近な雰囲気を感じやすく人から見られていくコンテンツになっていく。つまりUGC的な発信ができているということになる。
 案件を請け負うインフルエンサーとは違って、自発的に発信されるUGCには、実際のユーザーや消費者からのフィードバックや体験談を基にしているため、ブランドや企業から発信される広告やコンテンツよりも信頼性が高いとされる。ユーザーが自身のコンテンツを投稿することで、ブランドや製品に対する愛着が高まり、コミュニティー感が醸成される。バイラル効果の促進も見込めるだろう。
 こうした活動を経営者や部長が行っているということには、ブランドや企業のパーソナリティーをより明確に伝えることができるということだ。パチンコにおいては、単純に出玉が出る出ないだけではなく、ストーリーも重要で、そのお店が選ばれる理由を企業側が発信することに大きな意義が存在する。
 パチンコ業界において、エグゼクティブクラスのSNS運用では右に出る者はいないほど進んでいるキング観光。追随するには、上位職の人たちほど覚悟を持って臨まなければならないだろう。
キング観光, しまんくす, 権田 淳