PiDEAWARD2023パチスロ部門大賞受賞メーカーサミーの「L北斗の拳」開発者インタビュー

2024.01.15 / 機種

2023年のパチスロ部門大賞は、誰の目にも明らかだったように思える、「スマスロ北斗の拳」。初代を完全再現しつつ、時代に合わせた新要素も盛り込む絶妙なさじ加減についてインタビューをした。


PiDEA X編集部(以下略編) 「スマスロ 北斗の拳」(以下略L北斗)が受賞とのことで、まずは率直なコメントをお願いします。

L北斗開発プロデューサーのS氏(以下略S) 「カバネリ」に続いて2年連続の受賞。そして、サミーとして初めてのスマスロで結果を出せたことも嬉しいですし、業界が盛り上がってくれたと思います。こういう賞をいただけるのは非常に光栄です。

編 導入が4月で、スマスロ登場の11月からは少し遅れていましたね。

S スマスロの解禁に向けて動いていたのですが、なかなか適合することができなかったんです。サミーとしても、ここまで型式試験を繰り返したことがないくらい最後までやりきりました。

河内秀和氏(以下略河) スマスロで2タイトル同時に合わせて、40回くらい持ち込んだものの全滅みたいな状況でした。「L北斗」でも20回くらいは持ち込んでいます。スマスロの適合を待つムードが非常に強かったので、当時は社内をコソコソ歩いてました(笑)。そんな中でも、スペックダウンをせずにやり切らせてもらえたことが好結果につながっていると思います。

編 往年のファンに限らず若年層もしっかり反応しましたね。

S 今回は「初代復刻」というのが大きなテーマでスタートしました。初代は、自分自身もちょうどパチスロを打ち始めた時くらいで、僕自身がサミーに入ったきっかけになった台でした。

編 初代北斗をリメイクするきっかけはなんだったのでしょうか。

S 「北斗の拳」はサミーのキラータイトルではあったのですが、ここしばらくはなかなか結果を出すことができていませんでした。今回の「L北斗」が開発スタートした2020年4月ごろは、有利区間は1500Gでしたし、スマスロなんて概念もありません。ところが、ちょうどそのタイミングで低ベース機も開発できるようになり、バトルボーナスの獲得枚数や確率を初代北斗に近づけられるようになりました。特にこの台については、時間が進むほどに規則や内規などが良くなる変更が多かったのも追い風となりました。極力変更を加えないで原点に立ち戻って開発する方針が固まっていきましたね。

編 ちなみに「初代北斗」を開発された沢田さんからは何かアドバイス的なものはありましたか。

S 沢田さんは最初から「俺は意見は言わない」と言っていました。ある意味信頼はされていたというか……。

 そうですね。S君は5号機から「北斗」シリーズのプロデューサーを任されてきましたからね。規則の絡みとか純増とか苦しんでいる姿も隣で見てきました。だからこそ、「L北斗」で改めて北斗シリーズを復活させようという強い使命感があるんだと感じており、私は彼が今まで培ってきたノウハウが「L北斗」をより良くするもので、必ずやりきってくれるだろうと確信していました。

S 開発チームの中には僕以外にも「北斗」好きな人が多かったこともありますし、沢田さんが当時つくった「北斗ルール」みたいなものがあったのですが、それは共有してもらっていたので、踏襲することができました。 

編 秘伝のレシピみたいなのがあったんですね(笑)。でも変えるところはきっちり変えて、またそれが受け入れられたのはすごいと思います。

S 無想転生バトルなんかは結構早いタイミングから構想として存在していたのですが、最初はあそこまで強くはありませんでした。スマスロ化に伴って、パワーのバランスを高めていくことができたんです。

編 実際にはリプレイ入賞するのですが、左リール赤7でリプレイをそろわせないようにしたのは、踏襲だったのか変化だったのか、いずれにせよ一気に懐かしさが込み上げました。

S リプレイをこぼすというのが規則上できなかったんですよね。普通にリプレイ図柄をそろえることもできたのですが、あの出目は多くのプレイヤーに思い出として残っていたと思いますので、今回はあえて用意しました。

編 初代北斗に寄せるということは、逆の言い方をすると縛りでもあったと思います。それゆえの苦労などはなかったでしょうか。

S どこまで今風の要素を入れるかというのはよく議論しましたね。初代の遊技性は完成されたシステムだと思いますが、今の時代からするとシンプルで演出の数も少ない。「だからこそ何か新しいものを入れなきゃいけない」という考え方もある一方で、これまでのシリーズ機で新しいものを入れた結果それが邪魔になってしまった経験もしてきました。だから今回はCZ入れようとか特化ゾーン入れようとか、本当に余計なことはせずにつくったんです。

 初代のバランスは崩すまいということは一貫していました。バトルボーナスの継続率とかバトル中に中段チェリーを引いた時の恩恵とか、「これがあったらいいね」という要素を付け加えました。開発チームは取捨選択をしっかりやりながら、変えない勇気はすごかったかなと思います。

どこまで今風の要素を入れるか よく議論しましたね(S氏)

 

編 「L北斗」を通して表現したかったようなことはありますか。

S 初代を打っていた世代の人たちがどんどん離脱してしまっていて、これをきっかけに戻って来てほしいと思いました。初代北斗の拳というのを再現というか、この時代に復活したら、やめていた人たちが帰ってきてくれる可能性があるんじゃないかって。しかし、ただ初代をリメイクするだけじゃなくて、新規要素も取り込んでいく必要がある。だからこそ「L北斗」の中で一番力を入れたのがバトルボーナスなんです。

編 いや本当に絶妙なさじ加減だったと思います。Sさんが今後作っていきたい機械とはどのようなものでしょうか。

S 今回はなんだかんだ初代北斗の力を借りた部分はあると思います。今後は、「北斗」なのか違う版権なのか分かりませんが、「カバネリ」みたいに今までなかったものを作るというのは目指しているところです。やはり若いユーザーを増やしたい思いは強いですし、若年層向け版権はたくさんありますので。 河 パチスロのいいところは射幸性一辺倒になっていない多様性です。そのパチスロならではの良さを失わずに今後も開発に取り組んでいきたいと思います。

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