「挑戦から、冒険へ—。」 サミー50周年その先を描く星野歩COOの決意

2026.03.15 / メーカー

Special interview(スペシャル・インタビュー)
サミー株式会社/代表取締役 社長執行役員 COO 星野歩(ほしの・あゆむ)

昨年11月、設立50周年を迎えたサミー。

本稿では「過去の総括」にとどまらず、この先、何にBetし、どこへ向かうのかを、星野社長の言葉で明確にする。里見家の歴史や記念式典の重厚さを踏まえつつも、現経営トップとしてのリアルな視点と覚悟にフォーカス。パチンコ・パチスロメーカーにとどまらない、エンタテインメント企業としてのサミーの未来像に迫る。

50周年は次の50年に舵を切る「通過点」

私自身はこの50周年という節目を、ゴールではなく、一つの通過点だと捉えています。過去を振り返るための日というよりも、「次の50年に向けて、どんな覚悟で舵を切るのかを示す日」

それが、この節目の本質だと考えています。半世紀続いたという事実そのものよりも、そこに至るまで支えてくださった皆さまの存在に改めて身が引き締まる思いです。

設立50周年記念式典(以下、式典)でお伝えした「次の50年に向かって新たな歩みを進める」という言葉には、これまでの延長線を歩むという意味はありません。

50年という時間の重みは、成功の積み重ねだけで語れるものではありません。数え切れない失敗、迷い、厳しい判断の連続があって、ようやく今のサミーがあります。

バトンを受け取ったCOOという〝船長〟の自覚

私は、その歴史の「当事者」ではなく、バトンを受け取った側の人間です。だからこそ、このバトンをどう握り、どこへ運ぶのか。その責任の重さを、50周年という節目で改めて実感しました。

バトンを受け取った瞬間に強く思ったのは、サミーが次の50年を生き抜くためには、サミーのビジネスの根幹である遊技機業界そのものの存続と発展が不可欠だということです。

下降トレンドにあると言われるこの業界を、再び上昇トレンドへと転じさせなければなりません。自社だけの成長ではなく、業界全体をどう変えていくのか。その視点なくして、サミーの未来はないと感じています。

COOという立場について、私は「サミーという大きな船を未来へ導く船長」だと考えています。進むべき方向を定めることが戦略であり、その方向に確実に船を動かしていくことが実務です。どれだけ大きな船であっても、進路を誤れば目的地にはたどり着けません。逆に、正しい方向を示し、全員で力を合わせれば、荒波の中でも前へ進むことができると考えています。

次の50年は、これまで以上に環境変化が激しい時代になります。だからこそ、これまで培ってきた挑戦の精神を土台にしながら、新しい価値を創り続けていくという決意を込めて「次の50年に向かって新たな歩みを進める」と申し上げました。

「挑戦し続けてきた会社」サミーの軌跡

サミーの50年は、順風満帆な歴史ではありませんでした。組織再編、規制の変化、市場の大きな揺れ。その都度、課題から目をそらさずに向き合い、「新しいものはサミーから」という姿勢で挑戦してきた歴史だと思います。

50年の歴史を一言で表すなら、「挑戦し続けてきた会社」ではないでしょうか。いわゆる「さとみ」時代から続くサミーのDNAは、特定のヒット機種やビジネスモデルではありません。それは、「変化の兆しを感じたときに、立ち止まらず踏み出す姿勢、時代ごとに何かを変えようとしてきた痕跡」そのものです。

正解が見えてから動いたのではなく、正解が分からない中で決断してきた積み重ねが、今のサミーを形づくっているのだと思います。

式典で展示された実機や年表を見たとき、私は技術の進化以上に、「挑戦の軌跡」を強く感じました。

初代『パチスロ北斗の拳』のように業界の常識を変えた機種もあれば、規制の中で工夫を重ねた5号機時代の取り組みもあります。成功も失敗も含めて、常に何かに挑み続けてきた歴史でした。

今でこそ評価されている取り組みも、当時はリスクでしかなかったものが少なくありません。

開発者としての原体験とサミーイズム

個人的に印象深かった展示は、やはり私自身が開発に携わった機種ですね。

「ウルトラセブン」「ウルトラマン倶楽部3」「ガメラ」「アラジンA」「パチスロ北斗の拳」―どれも思い入れがありますが、特に「ウルトラマン倶楽部3」は忘れられません。初のCT機ということもあり、開発には本当に苦労しました。

少し、エピソードをお話しますと、当時、実際にホールで自分の開発した機種を打っていたときのことです。隣の方に「兄ちゃん、それ入ってるよ」とリーチ目を教えてもらったことがありました。珍しい出目だったので、一瞬分からなかったのですが、実はそのリーチ目を設計したのは私だったんです(笑)。あの瞬間は少し恥ずかしくもありましたが、同時に「ホールで楽しんでいただいている」という実感がありました。

私も開発時代から、サミーのDNA、いわゆる〝サミーイズム〟であり、挑戦を恐れない精神の中で育てていただきましたが、サミーイズムとは、私は「できない理由を探すのではなく、どうすればできるかを考える文化」だと捉えています。創業期から掲げてきた「新しいものはサミーから」という言葉の本質も、そこにあるのではないでしょうか。

もう一つ大事なのは、「稼働」を軸に物事を考える姿勢です。どれだけ技術が進歩しても、どれだけ話題性があっても、ユーザー様に支持され、ホール様に貢献できなければ意味がありません。この現場目線こそ、サミーイズムの重要な要素だと思っています。

DNAは言葉で守るものではなく、行動で示すものです。次の世代が挑戦できる環境をつくること、そして挑戦を称える文化を維持すること。それが私の役割だと考えています。

これまでの「挑戦」とこれから踏み出す「冒険」の違い

挑戦は、既存の枠組みの中でより良い解を追求する営みだとすれば、冒険は、まだ答えのない領域に踏み出すことだと考えています。

これまでのサミーは、規制や市場環境の中で常に高いハードルに挑み続けてきました。限られた条件の中で最適解を探し、どうすればユーザー様に支持される機械をつくれるかを追求してきた。それがこれまでの「挑戦」だったと思います。

しかし、これから直面するのは、ハードルの高さではなく、道そのものが見えない世界です。遊技機という枠を越えた価値創造が求められます。

市場環境、技術進化、ユーザー価値、業界構造、デジタル領域、新たなエンターテインメントの形など、どれを取っても、「これをやれば正解」という答えは存在しません。だからこそ、これからの経営を「挑戦」ではなく「冒険」だと定義しました。

また、数年前から新規事業にも力を入れています。中でもポーカー事業は、マインドスポーツとしてアプリとリアル店舗の両面で展開し、新たなエンターテインメント体験を創出しています。将来的には、そこから遊技機事業へのユーザー流入も視野に入れています。

もちろん、新規事業も成功が保証されているわけではありません。投資規模とのバランスは慎重に見極めますが、リスクを取らなければ何も生まれません。

前段でもお伝えしたとおり、私たちは今、守りに入るのではなく、冒険に踏み出す企業でありたいと考えています。一定のリスクを引き受ける覚悟があってこそ、次の景色は見えてくるのです。

未来を信じ覚悟を持って投じる。それが「Bet」の本質

キャッチコピーに掲げた「Bet on」という言葉には、無謀な賭けという意味ではなく、〝未来を信じて覚悟を持って資源を投じる〟、またステークホルダーの皆さまや社員にも〝サミーの未来を信じて賭けて欲しい〟という意思を込めています。

経営における「Bet(賭ける)」とは、単なる数字遊びではなく、最後は、自分が引き受ける覚悟を持てるかどうかその一点に尽きると思っています。

正直に言えば、自分の得意分野ではない領域で判断を迫られる瞬間は迷いもあります。だからこそ、多くの意見を吸収し、学び続けることを意識しています。冒険とは、完璧な準備が整ってから踏み出すものではない。不確実さを受け入れながらも、前に進むことだと考えています。

変化を恐れず、その過程そのものを楽しめる精神。それこそが、次の50年を切り拓く原動力になると信じています。

 次の50年へ何を変え、何を守るのか

これからも、遊技機事業はサミーの中核であることは変わりません。引き続き、ユーザー様に支持され、ホール様の経営に貢献できる遊技機をつくり続けること。それが私たちの原点であり、これからも守るべき軸です。

一方で、価値の届け方は変化していく必要があります。サミーが持つ技術力、IP活用力、演出設計力、そして量産体制。これらは、遊技機という枠にとどまらず、エンタテインメント全体で通用する資産だと考えています。

その技術やIPを最大限活用し、さらにはデジタルとの融合なども実現することで、リアルとデジタルを横断するエンタテインメントとして進化していく必要があります。

セガサミーグループの中で、サミーに求められているのは、「面白いものを構想する力」だけではありません。それを、事業として成立させる現実解を出すことです。

例えば、セガの持つ豊富なゲームコンテンツを活用させていただくことで、IPの可能性を広げる取り組みを行っています。直近では『ペルソナ5』などがその一例です。

AIと電子決済の領域へ。最後にBetするのは「人」

技術面で言えば、今後「Bet」していきたい領域の一つはAIです。遊技機開発の効率化や、AIによる稼働予測を活用したブラッシュアップなど、活用の可能性は大きいと感じています。もちろん導入には慎重な検証が必要ですが、技術革新なくして業界の上昇トレンドは実現できないでしょう。

同様に、電子決済の導入も重要なテーマです。

遊技参加のハードルを下げる一つの手段として、大きな可能性を持っています。業界全体が活性化していくためには、技術を前向きに取り入れていく姿勢が不可欠だと考えています。変えるべきものは、領域の広さや意思決定のスピード、そして一定の失敗を許容する考え方です。

一方で、守るべきものは明確です。開発現場を信じる文化、ユーザー様への誠実さ、そして面白さへの執念。この本質は、どれだけ環境が変わっても変わりません。

最終的に未来を切り拓くのは、技術でもIPでもなく、人だと思っています。だからこそ、私は「人にBetする経営」を続けていきたい。挑戦できる環境を整え、その挑戦を支える。それが、次の50年に向けての私の責任だと考えています。

業界は、まだ終わっていない。変化の中にこそ可能性がある

遊技機業界は、しばしば〝シュリンクしている業界〟と言われます。参加人口の減少や規制環境の変化など、厳しい側面があるのは事実です。その現実から目を背けるつもりはありません。

それでも、若い社員や、これから業界に入る方々には、「この業界は、まだ終わっていない。むしろ、これからが本番だ。まだ変われるし、まだ伸びる可能性がある」と伝えたいです。

変化が激しいということは、裏を返せば未開の余地が大きいということでもあります。実際に、スマスロの登場以降、ユーザー様の反応やホール様の現場の活気を見ると、適切なタイミングで価値を届けることができれば、支持は必ず得られると感じています。

重要なのは、「射幸性」だけに頼らないことです。幅広いプレイヤーに支持される多様な選択肢を用意し、業界全体で知恵を出し合いながら価値を再定義していく。その積み重ねが、未来につながると考えています。

ホール関係者様、組合関係者の皆様には、これまでのご支援への感謝とともに、これからも業界全体で〝冒険〟する覚悟を共有したいと思っています。一社だけでは業界は変わりません。共創の姿勢があってこそ、変化は形になります。サミーが業界全体を持続的に発展させられる土台をつくることも目指しています。

サミーが目指すのは、安全な選択を積み重ねる会社ではありません。「人の心を動かす体験に、Betし続ける会社」です。

次世代に業界を残す鍵は変わろうとする意思と行動

私自身の経営者としての目標は、遊技機業界のイメージを向上させることです。ノンユーザーの方々からの印象を変えていくことが、次世代にこの業界を残すための大きな鍵になると考えています。

ゲームセンターも、40年前は暗く不良のたまり場というイメージを持たれていた時代がありました。しかし今では、明るいエンターテインメント施設として広く認知されています。パチンコホールも、同じように変わる可能性を持っていると私は思っています。

業界が復調するための〝唯一の鍵〟が何かと問われれば、簡単に答えが出るものではありません。ただ、確実に言えるのは、変わろうとする意思と行動の積み重ねがなければ何も変わらないということです。

50年後に振り返ったとき、「あの時は縮小期だったが、そこから再び価値を再定義できた」と言われる業界にしたい。その一翼をサミーが担い、次の世代が誇りを持てる業界を残せていれば、これ以上の喜びはありません。

50周年はゴールではありません。ここからが、本当の意味での新しいスタートだと考えています。

⚫️プロフィール

星野歩(ほしの・あゆむ)

1995年、サミー株式会社(当時サミー工業)に入社。

入社後は開発部門にて、『ウルトラマン倶楽部3』『ガメラ』『アラジンA』『パチスロ北斗の拳』など、数々のヒット機種の開発に携わる。

その後、2024年4月より代表取締役 社長執行役員 COOに就任。

現場出身の経営者として開発思想と、業界全体の活性化を掲げる。日本遊技機工業組合副理事長も務める。

 

 

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