【店長カスタムの是非】ホールの本音とファンの狙い目

2023.10.19 / 機種

Sammyのヒット発明
店長カスタムとは

パチスロの直近10年史の中で革新的な発明とも言えるSammyの「店長カスタム」とは何なのか。釈迦に説法とは思うが、そこは重々承知しつつ、まだ詳細はよく知らないユーザーのために、まずは店長カスタムという機能の説明を。

店長カスタムとは、遊技機の設定を示唆するトロフィー(ボーナス終了時に出現)を、従来の低確率ランダム出現方式ではなく、ホール≒店長の意向によって出すことができる機能だ。トロフィー出現のタイミングも、1ゲーム(以下.G)から、1000G刻みで出すことができ、出し方も、設定2以上であれば、①銅トロフィー(設定2以上確定)、②その設定で出る複数のトロフィーが等確率のランダムで選択、③その設定を確定させるトロフィーの3パターンが選択できる。

例えば―

上の図のように、1G~1000Gの間の1回目のボーナス後に銅トロフィーを出し、1001G以降にランダムで出し、2001G以降に確定トロフィーを出すという複数の仕込みも可能な機能だ。

仮にホールが全台系で営業をした場合、1000G以内に全台設定6をお客さんに伝えることもできるのだ。(多分、そんなことはしないけれど) 

この機能の搭載はサミーの「物語シリーズセカンドシーズン」から搭載されていたが、当初は、多くのホールでこの機能を活用していなかった。それどころか、店長レベルの役職であってもこの機能の存在自体を知らなかったというのも少なくはなかったようだ。しかしSNSなどで本機能の存在や、効用が広く周知された結果、今では全国のほぼすべてのホールが店長カスタム機能について認知し、最近では7割とも8割とも言われる店長たちが大なり小なり利用しているといわれるまでになった。

トロフィー評価は
意外に厳しい?!

この店長カスタム機能については、ホールにとって、お客さんにお店の「頑張り」を上手く伝えることができるという良さがある反面、経営状況の芳しくないホールにとっては、「ウチは出せても銅トロフィーが限界!結局、資本力がある大手ホールだけが得する機能……」という恨み節も聞こえる機能でもある。

一方、ユーザーの側からすれば、その台を打ち続けるべきが、そもそもそのホールで打ち続けるべきかの重要な判断を下す1つの基準となる機能。万が一、朝イチで最高設定が約束される虹トロフィーが出れば全ツッパ待ったなしであるし、逆にイベント日でもないのに隣の台に虹トロフィーが出たら、一気に自分の台へのモチベーションが下がる要因にもなる。

ホールとお客さんが、知恵と予測を戦わせる「店長カスタム」機能。しかし調査を進めていくと、ホールとユーザーにトロフィーを巡るギャップがあることが分かってきた。

一概に「ユーザー」と言っても、そのホール、あるいはその日によって属性は大きく変わるもので、年配層の常連客や仕事帰りのサラリーマンを中心としたライト層、ネットを通じて機種の特性を熟知しているコア層や、期待値中心の稼働に執心するプロ・セミプロ層まで幅広い属性がある。

設定2以上が確定する銅トロフィーが1回出現しただけで打ち続けてくれるお客さんがいるかと思えば、設定4以上が確定する金トロフィーが出たとしても捨てていくお客さんもいる。

実際に本編集部でも、ガチプレーヤーであるK君やO嬢なんかは、5000G打って金トロしか出ないなら、時間やボーナス終了後100G内の展開にもよるが、多くの場合は打つのをやめるという。ちなみに、ライトユーザーに区分されるであろう筆者は、世の中の8割のパチスロ台は設定1であるという思い(込み)から、銅トロフィーでも十分にテンションが上がるし、ワクワク感がアップするのだが……。

店長たちはどう利用してる?

この店長カスタム機能について、実はネット上にはさまざまな意見や検証がなされている。ただそのほとんどは、ファン雑誌などの媒体側の見解や、ユーザーの意見である。弊誌では、匿名での記事化を条件に、店長カスタムを巡る、現役店長たちの本音を聞き出した。(※人物や店舗の特定等を避けるため、一部内容は編集部の独断で加工しています)

 

CASE1
地方都市400台クラスの駅前店の場合

「店長カスタムを全社で活用しようと決めたのはお盆営業を終えたあとの店長会議からでした。ドライブ3キロメートル圏に競合店は2店。1店は800台クラスの大手でもちろん地域1番店。もう1店は先代の時代から切磋琢磨してきた地域密着店。コロナ禍のあおりで受けたダメージを克服するため、一念奮起、スマスロを大量導入し、口コミの広告宣伝に力を入れたものの稼働状況はほぼ伸びず、常連さんも1人2人と減っていく状況で、店長たちが知恵を出し合い店長カスタムを利用した集客を画策し始めました。

当店のサミー系機種は28台。その内、北斗が14台でカバネリ10台。もちろんパチスロはサミー推しの一手。本来であれば、パチスロ全体で設定4が数台、残りは1と2の併用でやっていましたが、当面の間、北斗とカバネリに関しては毎日4と6を1台ずつは入れても良いと言われました。そこで当社が取り組んだのは、常連さんが来る平日では1G~2000Gの間で金と虹のトロフィーを出し、若干稼働の上がる日曜日には3000G以上で設定が確定するようカスタムしました。

銅トロフィーを上手く絡めながら、店長カスタムを使っていなかった頃に比べて、全体的な稼働は上がり傾向にありますね。今後は、土日3000Gでの金虹を、稼働を落とさず4000G、5000Gにまで引き上げること。日々、試行錯誤の毎日です。

CASE2
都心部のイベント系中心の中規模店の場合

「来月からは(取材時は9月下旬)ステマ規制や、この前出たホール4団体の通知の影響でイベントを打つのが困難になったというか、ウチの会社は結構コンプライアンスにもうるさいので、当面は静かにしようという空気感があります。が、いわゆる公約系イベント、特に3台~5台の並び系イベントをやる時は、店長カスタムが本当に役に立ちました。やり方としては5台並び系のイベントで、とりあえず1台だけ1000Gで金トロフィーを出してあげると、その近辺の機械の稼働がグンとあがります。本当の並びは別の所にあるんですけど、専業やプロまがいの若年層ユーザーに対してそんなトラップを2カ所くらいに仕込むだけで、全体の稼働が押し上がります。

まあウチは恵まれている店舗で、サミーの機種だけで2BOXありますから、店長カスタムを有効に利用させてもらいましたよ。トラップの金トロフィーの並びで銅を1~2台出してあげれば一気にユーザーの熱も上がりますしね。まあでもこれからは、そんなイベントも軽々に打てないですし、違う使い方を研究している最中です。店長カスタムを使わないことはないですね。要はお客さんとの駆け引きですし、元来それがパチンコ屋の楽しみ方でもあるわけですから。

CASE3
稼働も集客も地域一番店の逆張り戦略

「ここだけの話というか、できるできないかはさておき、多くの店長たちはカスタムを利用した『逆張り』を一度は考えたり実践したりしたはずですよ。要は、月イチイベントとかで、サミー系機種にはほぼ設定を入れず、設定狙いの『一見さん』からはしっかりと利益をいただき、その分サミー以外の機種に設定を振ることで、朝イチから並ぶお客さんには抽選で悪番でも勝てるかもと思ってもらったり、並びを避けた常連さんにも勝ちを拾ってもらったりできますからね。

例えばある月の弊店の月イチ日の場合、北斗20台、カバネリ12台にそれぞれ設定4を2~3台ずつだけ入れて、他は1が多めの2の併用。最高設定は、炎炎やカラクリとかバイオヴェンデッタではなくバイオRE:2に振ることで次回以降のお客さんたちの立ち回りを、偉そうに言えばコントロールするし、悪く言えば混乱させるという効果があり、月イチイベントの楽しさをお客さんに味わってもらえると思ってます。

一番重要なのは、ウチは2000Gくらいじゃ設定はバラさないよという意図がお客さんにちゃんと伝わっているかです。店長カスタムは確かに良い機能だと思いますが、やっぱり理想は『使わないこと』だと思っていますし、使っても7000G以上打ってくれたお客さんへの答え合わせでなければいけないと思っています」

客の楽しみを
奪ってしまう?

店長カスタムというサミーの偉大な発見は、ただただはた迷惑な機能だと言ってはばからない店長もいる。

「そもそもウチは高設定どころか中間設定すら簡単に入れられる状況ではない。本音はベタピン(オール設定1)で営業したいのに、この店長カスタム機能が世に知れて、お客さんがそれを求めるようになってしまった。設定2で銅トロフィー出しても誰も追いかけてはくれないしね。周りの競合店はここぞとばかりに機能を活用していて、やっぱりお客さん、中若年層はそっちになびいてしまっている。経営努力が足らないと言われればそれまでだけど、遊技機価格の高騰や新紙幣対応を考えると、正直付き合ってられない。ジリ貧だね、本当に」

ホール関係者のなかでも賛否両論のある店長カスタム機能ではある。がしかし、多くのホールにとっては、本来のパチンコ屋さんがそうだったように、ホールとお客さんの駆け引きや互いの読みを生み出すきっかけになっている。少なくとも、スマスロ・スマパチの登場で次の展開を迎えたパチンコ業界にとって、新しく、そして昔ながらの遊び方を提案してくれた機能でもあるという意見が取材過程でもやはり大勢であった。ただホール側の利益という側面でも、また設定を予想しながら遊技するという従来のパチスロの遊び方からも、「できることなら使いたくない」というのもまた本音でもあるのだ。

その上で、本稿の最後に、前述の店長とは異なる別の2人の店長の言葉を紹介したい。

まず、1000台規模の超高稼働店の店長の言葉。

「ウチは店長カスタムの活用ではなく、設定示唆が一切表示されないようにしている。その機能を使っているホールだということをお客さまが知っていると、示唆が出なければすぐに離席してしまう。(示唆が)出る楽しみは一過性のもの。慣れてしまえば、示唆の出現可否だけを待つようになり、パチスロ本来の予想する楽しみがなくなると思っている」

高稼働ホールの店長だから言える言葉とも捉えられるが、だからこそ高稼働なのかも知れないと考えもする言葉だ。

そして、もう1人の店長の言葉は、また違う意味で考え込んでしまう。

「本当のことを言えば、店長カスタムなんて機能を使わないに越したことはないんですよ。カスタム機能は結局、お客さんに答えを与えてしまう。本来、パチンコは遊びなんだから、ああでもない、こうでもないと考えたり、仲間内で話したりしながら、次の遊技への期待感を作っていくもの。答えを出しちゃうと次に続かない。でもね、お客さんも減ってきて、今日のお客さんの数、今日の売上に店長たちは汲々としてるわけです。だから小手先の技に走ってしまう。ちょっと寂しい気もするよね。本当は会社が店長たちに働きやすいような環境や目標設定をカスタムしてあげなくちゃいけないんですけどね」

こうした店長たちの声に耳を傾けるとともに、ホール個々の特性を十分に理把握しつつ、店選びや機種選びの参考にしてほしい。

店長カスタム, Sammy, サミー