【連載】All For Fan〜至高のエンターテイナーたち〜 Vol.4 「パチンコメディアFOUNDER シーサ。」

2023.12.16 / 連載
5年、10年先を見続ける経営者は 役者を目指したパチンコホールの元店長

PiDEA X編集部(以下略編):今回は、動画メディアの先駆者といっても過言ではないアロウズスクリーンのシーサ。さんにお越しいただきました。本日はよろしくお願いいたします!

パチンコ・パチスロ系チャンネルとして2011年より始動した「ARROWS-SCREEN」。看板番組である「シーサ。の回胴日記」は11月末時点で1100回以上続く。チャンネル登録者は46万人を超え、他メディアのゲストや生配信など新たな企画も発信中だ。

シーサ。さん(以下略シ):よろしくお願いします!

編:アロウズスクリーンの「シーサ。の回胴日記」という番組を立ち上げ、YouTubeで長く活躍されていますが、今日はシーサ。さんの過去からお聞きしていきたいと思います。動画内でお話されていたかと思うのですが、パチンコホールの「元店長」とのことでしたので、高校や大学など卒業されて、パチンコホールに就職されたということなんでしょうか。

シ:いえ、最初はパチンコホールではなく、地元でも有名な文房具の卸などを行っている大手企業に高校卒業後に入社しました。

編:なるほど。高校出られてすぐに就職されたのですね。

シ:そうですね。高校の時に大学に4年間通うのは意味がないと思ったんですね。4年間大学行くよりは社会に出て4年間働いた方が自分にプラスになるんじゃないかなと。

編:若いうちは「遊びたい」とか思うのが普通かと思うのですが、先のことを考えての決断なのですか。

シ:自分の場合、常に1カ月先、1年先、5年先を考えながら生きてました。だから、高校出て就職した会社も2年勤めたのですが、先が見通せてしまって、辞める決断をしたんです。会社勤めが向いていないとも感じましたし、ここで頑張っても「このポジションまでだな」とか「稼げるお金はこのくらいだな」と見えたので辞めました。元々やりたいことでもなかったので。

編:高校卒業後2年勤められたということで20歳ですが、当時「やりたい」と思っていたことはなんだったのでしょうか。

シ:その頃は「役者」になりたかったんですよね。

編:役者さんですか!? 現在、演者としてさまざまな役回りを動画内でこなされていますし、納得できる部分もありますけど、でもやっぱりちょっと意外です。

シ:最初に入った会社を辞める直前に東京に遊びに行ったんですけど、初めて渋谷や新宿を見たらテンションが上がって、東京に行かなきゃダメだ。上京して役者になろうと思って、急いで熊本に戻って実家で「会社辞めるけん! 東京行って、役者になる」と宣言してましたね(笑)。

編:良いですね。格好良いです(笑)。

シ:ということで、20歳の時に上京して、エキストラをやったり、劇団に入ってレッスンを受けたり。飲食店でアルバイトをしながら役者を目指す生活がはじまりました。テレビやCMの撮影現場にも行って、楽しくやらせてもらいました。

編:でも、実際に役者にはならなかったわけですが、なぜ辞める決断をされたのですか。

シ:本当に楽しくて、できれば続けたいと思っていたのですけど、なかなか結果が出なくて、21歳の時に「あと2年で見通しが立たなかったらあきらめよう」と思い、23歳の時に熊本に戻りました。


編:なるほど。それで、熊本に帰ってからパチンコ店に入社するのですかね。

シ:最初はパチンコ屋さんではなく、建設関係の仕事に就いたのですが、自分の中で「30歳までには定職を持ちたい」という願望もあったので、そろそろ本腰をいれなきゃいけないと思い、いろいろ考えた結果、若い頃から遊び、慣れ親しんだパチンコ店で働こうと決めたんです。

編:ようやくですね。18歳で就職し、役者を目指し、普通の人と比べても濃密なお時間を過ごされてきていますね。

シ:そんなことないですよ(笑)。さっきもお話したかと思うのですけど、元々「会社勤めが向いてない」と思っていたので、パチンコホールの仕事も長くは続かないのではないかと感じていました。ただ、やるからには結果を出したいと思っていたので面接の時「30歳までに店長になりたいです」と偉そうにアピールしたんです。そうしたら「早ければ5年でなれるよ」と面接で言われたので就職を決めました。

編:最初から店長になりたいというのはアピールになったかもしれませんね。

シ:なので、普通は最初に与えられた役割を覚え、徐々にいろいろな仕事をしていくと思うんですけど、自分の場合は「店長になる」というために就職したので、入社当時から店長の仕事もチェックしながら仕事をしました。すぐに役職が付いて副店長になり、新店のグランドオープンにも携わりました。すぐに店長になれるだろうと思っていたんですけどね……。

編:簡単にはなれなかった?

シ:そうですね。28歳か29歳くらいの時に当時のブロック長に「そろそろ店長をやらせてほしい」と直談判したんです。そうしたら「店長ポストは埋まっていて、今すぐにはなれない」と言われたんです。

編:やる気があるのに残念ですね。

シ:でも自分もいじっぱりなもので「なれないなら辞めます」と言って退職することにしました。

編:それから別のお店に入ったということでしょうか。

シ:その頃には、取引先の社長さんとか、メーカーさんとかコネとか伝手ができていました。その中で、当時よくしていただいたとある社長さんから電話をもらって、北九州のパチンコホールのオーナーの方を紹介してもらったのです。「畳もうとしているホールがあるけん、1回やってみらんかい」とその社長さんからも言われたので、北九州のお店の立て直しに挑戦することにしました。

編:そこはどんなお店だったのですか?

シ:3店舗あったのですけど、どれも過疎店でしたね。朝の並びも0人で、300〜400台の設置。1日にくるお客さんの数が10人、20人くらいと厳しいものでした。

編:大変そうな状況ですね。立て直すことはできたのでしょうか。

シ:もともと低貸し専門店だったのですけど、最終的に「20スロを復活させる」ことを目標にしました。最初は朝の並びも0人だったのですが、最終的には朝から100人並んでもらえるまでになりました。

編:それはすごいですね。どんなやり方をしていったのでしょうか?

シ:メリハリ営業ですかね。パチンコはとにかく「甘海」に注力して、専門店のような勢いで機種をそろえました。パチスロは「全6」など、アピールして信頼を勝ち取っていきましたね。だと思ったんです。

編:他にも仕掛けられたことはあるのでしょうか。

シ:「全6」は直接言うことはできないので、本日は「オール設定1。ベタピンです」というメルマガを送ったりしました(笑)

編:え?そんなことしたらお客さん離れちゃいませんか?

シ:そう思うかもしれませんけど、今日は利益を取る日なので、うちには来ない方が良いですよ。という情報を常連の方に伝えたらどう思います? 正直なお店だと思われませんか?

編:たしかにそうですね。

シ:そうやって信頼を勝ち取りました。もちろん出せる日はしっかりと高設定を使って還元するということで、アウトもあげました。

編:すごいですね。では目標の20スロも復活できたのですか。

シ:はい。順調に売上、利益が上がったので20スロも復活させられました。ただ、それが原因でオーナーとの中がこじれてしまったのです。「こんなに薄利でやる必要ある?」と言われるようになってしまって。自分も「まだこれからなので、薄利でやらせてほしい」と言ったのですけど、聞いてもらえなかったですね。

編:それは残念です。せっかく明るい兆しが見えてきたところなのに。それで、辞められることになったのですか。

シ:そうですね。31歳の頃に辞めたのですが、このお店を紹介してくれた社長さんが再び声をかけてくれたので「起業したい」と相談したんです。


編:いよいよ、アロウズスクリーン「シーサ。の回胴日記」が誕生するんですね。でも、なんで起業したいと思ったんですか。

 シ:これまでパチンコ業界で働いてきて、自分でメディアを持ちたい。作りたいと思うようになったのです。当時、iPhoneが出だした頃で、YouTubeがスマホで手軽に見られるという時期。これからは無料で動画を観るのが当り前になる。動画メディアの会社を作りたいと思って社長さんに相談したら宮崎(※)を紹介してもらい、話をすると、宮崎も動画メディアを作りたいということだったので、一緒にやることになりました。

※宮崎裕平氏。シーサ。氏とともに2011年に映像制作会社「株式会社ジースクイール」を立ち上げた共同経営者

編:なるほど。では「回胴日記」という番組名はどこからついたのでしょう。

シ:自分がずっと前から続けていたブログのタイトル「シーサ。の回胴日記」をそのまま使っています。パチンコ店時代から収支などをつける意味で続けていて、それが番組タイトルとなりました。

編:あ、前から「シーサ。」というお名前を使っていたのですね?

シ:よくある友人同士で付け合うニックネームみたいなものです。地元友人からもよく「シーサ。」って呼ばれていました。

編:なるほど。ではどんな動画を作ろうと思って始めたのでしょうか。

シ:それは、今も変わっていないのですが「パチンコ未経験者に楽しさを伝える。後ろめたさを無くしたい」ということですね。パチンコはやったことが無い人からすると「怖い」「うるさい」「あぶない」なんて思う人いますよね。でもしっかりとスーツを着て丁寧に話すクリーンな動画を見せられれば、「怖くないのかな。自分もやってみようかな」と思う人がいるかもしれないじゃないですか。当時、パチンコ系の動画は無料のものはほとんどなく、有料でDVDとか専門チャンネルはあったと思うんですけど、攻略性の高いものがほとんどでした。

編:たしかにあの当時、求められていたのは勝てるための「知識」だったかと思います。

シ:もちろん、それも大事なことでそういう情報を欲している人もたくさんいたと思います。でも「設定看破」とか「設定推測」なんて未経験者からすれば何のことか分かりませんよね。だから、自分はそういう攻略的なことは一切やりません。でも楽しむ姿を見せようとしている。それを感じ取ってもらえたら興味を持ってもらえるのではないかと思ったのです。それこそがうちのセールスポイントになると考えて、スーツにオールバック、敬語で話すスタイルになったのです

編:そこまで考えてあのスタイルなのですね。では当初、自社チャンネルの番組をメインに活動されていたシーサ。さんが、最近は他のメディアの番組にも積極的にご出演されています。このあたりは何か心境の変化もあったのですか。

シ:「回胴日記」をはじめてから10年以上は自社メディアにこだわってやってきたのですが、これから先を考える上で3つの要素が必要だと考えたのです。

編:それはどんなものなのでしょうか。

シ:まず1つ目が「新規ユーザーの開拓」です。他のメディアに出演させてもらえれば当然露出が増えて、「シーサ。」をはじめて知ってもらえるチャンスは増えますよね。中には初めて観た動画に出ていたのが「シーサ。」だったということもあるかもしれない。この1番最初ってすごい重要で、初めて遊技した機種を忘れないのと同様に初めて観た演者も強く印象に残ると思うのです。

編:たしかに。2つ目は何でしょうか。

シ:営業戦略です。いくつものメディアに出演すると、共演した演者の方ともつながれますし、営業担当の方や制作チームともつながりますよね。これは、リソースが増えるのと同じ。そうすると新しい商材を生み出すきっかけができるんです。売れるものを売るのではなく、売れるものを作ることが重要だと思うので、外部との交流を積極的に行うようにしました。

編:なるほど。最後はなんでしょうか。

シ:自己プロモーションです。多数のメディアに出演して、いろいろなイメージを出せれば武器になると思うんです。ある企画では多くの演者さんを回すMCだったり、一方で本性を見せない陰を持つキャラクターなんて言われたりしますけど、そういうイメージの多様性がいろいろな企画に「使えそう」と思ってもらえる。また、露出が多いことも「需要がある」と思ってもらえますし。

編:たしかに露出が多いと、オファーしたいと思うかもしれませんね。

シ:他の演者さんのようにビタ押しもできないですし、トークスキルも自分より上の人はいっぱいいます。でも自分は「どんな役割でもこなせますよ」と思ってもらえたらセールスポイントになるじゃないですか。これくらいしないと大手のメディアさんと渡り合えないと思ったんです。なので、2021年ごろだったと思うのですけど、X(旧Twitter)もはじめて、積極的に外部メディアの人たちとも交流していくことにしたのです。

編:演者としてだけでなく、会社としての利益や売上も考えての行動なのですね。やはり経営者という感じですね。

シ:社員数は10人にも満たない会社ですけど(笑)。

編:少数精鋭なのですね。もっと多くの社員さんがいるのかと思いました。

シ:外部の協力会社やスタッフの方と一緒にやっています。

編:なるほど。実務は外注されているということなんですね。でも、社長からすると毎年売上をアップさせていくなど、いろいろと大変ではないですか。

シ:ウチの場合、売上を上げようとは言いません。今ある売上を「落とさないようにしよう」という考え方です。社員には「一人でこなせる仕事量は限界がある。そんなに頑張らなくて良いから、外部の人を10人、20人動かせるようになってほしい」と伝えています。その方が会社としては強いですから。

編:演者としてのシーサ。さんが誕生した理由をお聞きするところが、とても深い経営者としての考え方まで聞けて大変勉強になりました。ありがとうございました。

シ:こちらこそありがとうございました!

 

シーサ。さん

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