パチンコ台以上に売り上げる、現代自販機ビジネス最前線

2022.09.15 / その他情報

あなたの知らない、自販機グルメの世界

「おとりよせ牛カルビ焼肉セット」「専門店のうな重などの人気ロケ弁」「有名店のラーメン」――、多種多様なグルメを一台で楽しむことができる「冷凍自販機グルメ」が、いまひそかなブームとなっている。

(関連記事:パチンコ台以上に売り上げる冷凍自販機「ど冷えもん」導入店レポート

自動販売機なので、もちろん24時間営業。どんな時間帯でも利用できる便利さや、店員と接触するわずらわしさ・感染リスクなしで、ボタン1つで買い物ができるという気軽さが人気である。それに加え、「自販機グルメ」という非日常な体験は「SNS映え」としてシェアすることが可能だ。これが現代の消費者の感覚にマッチした、というのもブームの理由の1つである。

地上波でも特集されるほどの急上昇ビジネスであり、中には1日あたり20万円以上を売り上げるモンスター自販機まで登場しているほどである。

 

冷凍自販機ビジネスが急速に広がった背景には、コロナ禍での飲食店の奮闘がある。感染が拡大する中でも、なんとか自店の商品を顧客に届けたいという思いが、「冷凍自販機」というあたらしい販売形態を生んだのだ。当初は苦肉の策であり、売り上げを少しでも補填できれば、というものだったのが、やってみると実際には多くのニーズがあると分かった。

冷凍自販機は大ヒットとなり、現在では飲食店に限らず多くの業種がこのビジネスに参入。大手自販機メーカーによると、2021年1月から22年の7月までに4000台以上の注文があり、現在は生産が追いついていない状況だという。

 

パチンコホールがビジネスに冷凍自販機を取り入れるメリットとは?

先ほど、多くの業種が冷凍自販機の設置に踏み出していると述べたが、パチンコホールもその展開先の1つとなっている。現在、全国のパチンコホールで敷地内に冷凍自販機を設置しているのは50店舗ほどであり、まだ見つかっていないビジネスとも言える。大手チェーン店では、試験的に10台以上を導入して業績貢献させようとする試みも始まっている。

パチンコホールと冷凍自販機のビジネスに親和性があると考え、普及活動をしている企業が実は転職サイトを運営するパック・エックスである。もう少し詳しく説明すると、グループ会社のパック・エックス イノベーションが、冷凍自販機メーカーであるサンデンリテールシステムが発売する「ど冷えもん」の販売一次代理店となったのである。担当者、吉松氏である。

冷凍自販機「ど冷えもん」の一次代理店となったパック・エックスイノベーションの吉松氏

 「特に郊外のパチンコ店では、来店したお客さまがなるべく外に出かけなくてすむように、店内飲食コーナーを設置するのがセオリーとなっていました。ただ、最近では、店内飲食をやめて『ど冷えもん』に置き換えようというホールさまが増えています」

たしかに、自販機と電子レンジを備えたイートインスペースを設ければ、飲食をセルフ化する分既存の飲食店と比べて大きなコストの削減になる。しかし、それだけではとどまらないメリットが冷凍自販機にはあるのだという。

「『ど冷えもん』の中に入れる商品は、冷凍なのでラーメンのような汁ものでも、うな丼みたいなご飯ものでも、スイーツでも基本的にはどんな商品でも大丈夫です。近隣の飲食店と連携して商品を冷凍化してもらっても良いですし、逆にそういう当てがないという店舗さまは、弊社で展開する『ご褒美Theぐるめ』というオリジナル冷凍食品セレクションもご利用いただけます」

「ど冷えもん」の中に仕込む商品は電子レンジで加熱してその場で食べられる

ちなみにこの「ご褒美Theぐるめ」というセレクションでは、肉・魚・お弁当・丸鶏・スイーツなど多種多様な商品ラインナップがすでに用意されており、商品選びに苦労することはない。客付きを見ながら商品を変更したり、また、季節のものやトレンドを押さえた新商品に入れ替えたりすることで、より求められるようになっていく。気になる味の方はどうなのだろうか。

「販売されている商品自体も非常に美味しいんです。冷凍自販機はブームですから、競争が働いていて、商品メーカーもそれぞれしのぎを削っています。『ご褒美Theぐるめ』では、専任のシェフを用意して商品開発をしています。お弁当シリーズは、コロナ前までは毎年幕張メッセで行われていた『ロケ弁グランプリ』優勝店舗の監修でメニュー開発をしており、召し上がったお店のお客さまやスタッフからも『これは美味いね!と太鼓判』リピートしたくなる味になっています」

商品選定はパック・エックスイノベーションにお任せも可能

ホールで手軽においしい食事ができるとなれば、客滞率の向上にもつながる。地域の特産品や飲食店とコラボするなどして、自社開発の商品を販売し、さらに利益を伸ばすことも可能である。玉やメダルの景品として提供することもできるかもしれない。

 さらに自販機には、手軽さの面でも大きなメリットがあると語る。

「飲食業と切っても切り離せないのが、食中毒であったり、生ゴミの処理、フードロスなどの問題ですね。しかし、『食中毒の問題は商品の製造側が責任を持つ』、また『機械の不備はメーカー側が責任を持つ』、店舗側で負担するのは補充や売上の管理くらいですが、それもITやクラウドを活用した定額のサービスを利用することができます」

このど冷えもんは、営業の許可はいらないが、1日受講かオンラインで6時間の講義を受け、食品衛生責任者の資格は取る必要がある。その後はオンラインで届出が可能だ。

冷凍自販機で補完する食品の賞味期限は6か月~1年の長期に及ぶため、フードロスも最小限となる。SDGsにも合致したビジネスとなっている。

 

新規事業によって、店舗・地域を活性化していく

とはいえ、「本業の助けになるような大きな売り上げ」を期待して、冷凍自販機を導入しているホールが多いわけではない。むしろメインの目的は、新事業を通じて店舗や地域を活性化していくことにあるのではないか。

 「5年先とか10年先の予想をされてチャレンジされているホール様が導入するケース、これが多いのではないかと感じています。コスト的には手軽な新事業ですが、実際に企画・運用に当たるスタッフにとっては人材開発にもなります。パチンコホール以外の自社店舗や、あるいは地域の事業者様にサブリース展開することもできます。そういった可能性に気づいたホール様が積極的に導入しています

現代社会では、消費者のマインドもどんどん変化しています。いま生まれているニーズが『心が動かされることを手っ取り早く買いたい』というもの。これまでは、現地に行って、商品を見て、サイズを合わせてといったプロセスを踏んで感動を買ってきました。しかし、今は、なんでも『すぐに』『早く』が大事なんです。そう考えると、冷凍自販機は今の時代に非常にマッチしているのではないでしょうか」

コロナ禍の現在でも、それを生かした新しいビジネスが社会では次々と生まれ、顧客を楽しませ続けている。転機を迎えるパチンコ業界の生き残りのヒントは、いたるところに転がっているのかもしれない。

問い合わせ:株式会社パック・エックス イノベーション

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