スマートパチンコ・スマートパチスロはどんな性能? パチンコ業界の未来は変わるのかー後編

2022.08.06 / 組合・行政

(関連記事:スマートパチンコ・スマートパチスロはどんな性能? パチンコ業界の未来は変わるのかー前編

 

スマート遊技機が 提案する未来とは?

フォーラムでは、新たなスマート遊技機を導入することによるホールのさまざまなメリットが語られた。玉やメダルを使わないことによる感染症対策の強化やゴト行為の排除、データ管理などによる依存対策のさらなる前進や、ホール業務の負担や騒音の軽減など、実際にスマート遊技機を導入することでホール側が享受することができるメリットには納得する内容が多く見受けられたが、その中でも特徴的だったのは「設置台数の増加と自由なレイアウト」であり、「低コストでのコンビニぱちんこ出店」であった。

設置台数の増加については、1つはユニット幅が40mmとなることから、一列当たりに設置できる台数が増えるし、循環機などの島内設備がいらなくことから、島そのものの幅も取らず、島自体の増設も可能になるというもの。  また遊技球は遊技機内で循環するためホール内さまざまなレイアウトでの設置が可能であり、今までは島工事や重量制限などで困難であった「空中出店」(ビルインテナントとして2階以上の物件に出店すること)も視野に入るという。

また全店をスマート遊技機で構成する場合は、新規出店のコストも大幅に抑えられることから、スクラップアンドビルドを前提とした小規模店舗のコンビニ型出店の可能性も広がる。

スマートパチスロは2022年秋(11月頃)、スマートパチンコは2023年春、全国のパチンコホールに登場する。またスマートパチスロの型式名には「L」の文字が入り、スマートパチンコの型式名には「e」の文字が追加されるという。

7月19日からスマートパチスロの特設ページが公開されている。

スマート遊技機導入に際する懸念点は?

日工組・日電協の悲願と言ってもいいスマート遊技機であるが、華々しい発表の場において、業界を代表する関係者たちが口をそろえて明るい未来を語る一方で、ホール現場では一抹の不安や懸念点もやはりある。

1)スマート遊技機の価格はどうなるのか?

まず何よりも気になるのは、スマート遊技機をホールに導入するための費用であろう。「スマート遊技機フォーラム」の場でも、その価格については明らかにならなかった。業界誌を対象とした記者会見の場でもその価格は「スマパチは現行機と同等くらい」、「スマスロは各メーカーに問い合わせてほしい」との返答であったし、スマート遊技機をホールに設置するため必要な専用ユニットの価格もあいまいなままだ。  本誌取材では、スマパチ・スマスロ(現行機よりも部材は大幅に減るが)とも現行機と同等もしくは、昨今の部材費高騰等の影響を受け若干の価格高と聞き及んでおり、専用ユニットに関しては新規で導入する際にもユニット1台当たり10万円~15万円程度であると想定している。

当面は店内一部の遊技機のスマート化するにしても、市場状況によっては、その促進を迫られる状況にだって十分になり得る。旧規則機の撤去やコロナ禍による売上の大幅減という状況で、これらの資金をホールがどのように調達するのかは、特に中小零細ホールには難題となり、今後より一層大手ホール企業による寡占化が進む憂いも拭えない。

2)スマート遊技機の生産台数は担保できるのか?

部材の調達困難と資材の高騰はメーカーの頭を悩ませる最大の問題だ。

日工組・日電協の各メーカーが調達できた部材をどれだけスマート遊技機開発に回すのかも不透明な中、1つの指標となるのは、専用ユニットの台数である。

設備メーカー担当者曰く、2023年春のスマートパチンコ導入時期までに、市場に投入できる専用ユニットの台数は10万台~15万台であるという。仮に15万台と仮定した場合は、市場全体の遊技機設置台数380万台に対して4%程度しかスマート遊技機を導入できないことになる。これは1000台規模の大型店で40台1BOX程度の台数である。大きな期待を含み市場投入される次世代遊技機の設置台数としてはあまりにも心許ない数字だ。

さらに部材調達状況や価格高騰が1年ほどで解消される可能性は低いことから、2年後、3年後のスマート遊技機のシェア状況も不透明である。需給のバランスが著しく崩れれば、それは遊技機導入の際の費用高騰にもつながりかねない。供給側のメーカー団体と需要側のホール団体が、どのような折衝を行い、どのように着地させていくのか。スマート遊技機そのものよりも、その導入環境に大きな波乱が含まれているかもしれない。

フォーラム後の記者会見でスマート遊技機のロゴを掲げる日工組と日電協の登壇者。

 

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