スマートパチンコ・スマートパチスロはどんな性能? パチンコ業界の未来は変わるのかー前編

2022.08.04 / 組合・行政

2022年7月19日。東京ドームホテルに設置された会場は、参加者らの大きな期待感に包まれていた。コロナ第7波の足音が忍び寄る中、会場にはホール4団体の幹部を中心に約250名の関係者らが集い、またリアルタイム中継されたウェビナー画面の向こう側には約4000人のホール関係者らが着席した。

日本遊技機工業組合(日工組)、日本電動式遊技機工業協同組合(日電協)、一般社団法人プリペイドシステム協会(PSA)、一般社団法人電子認証システム協議会(認証協)の4団体が主催した「スマート遊技機フォーラム」。フォーラム冒頭、日工組・榎本善紀理事長が力を込めて語った「未来への懸け橋」。日電協・兼次民喜理事長が熱く訴えた「スマート遊技機の活用」。その後、多くの関係者らが登壇し、スマート遊技機の技術的仕様や今後の可能性について言及し議論した2時間半に及ぶ長時間のフォーラム。その全貌を解説し、パチンコ業界の未来を展望する。


スマート遊技機とは何か?その性能と特徴

「スマート遊技機フォーラム」で明らかにされたスマート遊技機の特徴について解説する。その特徴はスマートパチンコ、スマートパチスロで多少異なるので、まずはスマートパチンコの仕様について。大きな特徴は以下の4点である。

スマートパチンコの特徴
①大当り確率の最大分母が1/320から1/350に変更
②現行機には非搭載だったc時短が新たに搭載
③MY95,000発でコンプリート機能が発動
④遊技機情報センターでのデータ収集

今回発表されたスマートパチンコの特徴の内、最大のものは①の大当り確率の最大分母が引き上げられたことである。これは1990年代初頭にパチンコ業界がCR機を普及させるため、同機に限りスペック性能を緩和したことと似ている。もちろん今回は日工組の内部規制の緩和となるので、本来の規則に関わる総量規制の緩和と比べてインパクトには欠ける。 

大当りの下限は350分の1へ

しかしそれでも現行機よりも射幸性の引き上げを求めるユーザーのニーズを汲みとり、ホール側の購買意欲を刺激するのは間違いなく、スマートパチンコが市場に歓迎される下地になることは間違いない。大当りの確率が辛くなる分、現行機よりもST突入率やST継続率、TY値が高くなる。ユーザーの立場で遊技の選択の幅が上に広がることや、ホールの売上や集客に大きく影響することを考えると「スマートパチンコは買いだ」という答えになる。

c時短についてフォーラムでは、「今までにない出玉の波を創出することが可能となる」と説明された。「P花の慶次 漆黒2EXTRARUSH」や「P乃木坂46」ではRUSHの駆け抜け後に「時短が上乗せ(継続)」される機能がc時短の抽選をしていると言われているが、フォーラムでは「現行機には非搭載」と説明がなされており、また「パチスロでいう、ATのようなゲーム性」もあり得ると発表された。c時短の使い方についてはまだまだ多くの可能性が残されており、今後遊技性の幅を広げるにあたって少なからず期待感のある仕様であると思われる。

新たな仕様③の「コンプリート機能」については、ギャンブル等依存症問題の対応に追われた警察庁がパチンコ業界に対する厳しい指導を行った際、早期撤去の対象となった高射幸性遊技機の判断基準-パチンコ10万発、パチスロ2万枚を意識したものであると推察することができる。要は、パチンコ業界は二度と高射幸性遊技機を世に出さないという決意の表れを機能化したもの。その上限を絶対に超えられない機能を搭載する代わりに、そこに至る過程の仕様について開発の自由度を得たと考えるのが妥当だ。そのような理由から、このコンプリート機能については、スマート遊技機だけではなく、今後、現行遊技機にも搭載されていくという。

出玉の上限が近づくと液晶で表示される

 

スマートパチスロの特徴については、スマートパチンコと比べそのインパクトは小さめだ。それは6号機以降、ユーザーの支持が凋落していたパチスロ市場の活性化のため、スマートパチスロ用に準備していた機能の一部を、現行の6.5号機から一部導入し始めたことにある。

スマートパチスロの特徴
①有利区間2400枚上限をMYから差枚数に変更
②有利区間のゲーム数が無制限に
③MY19,000枚でコンプリート機能が発動
④遊技機情報センターでのデータ収集

①の有利区間2400枚上限をMYから差枚数に変更されたのもそうであるし、有利区間のゲーム数が無制限に変更されたのは新しい特徴であるが、6号機当初は1500ゲームだった有利区間が6.5号機では4000ゲームに緩和されていることからもうかがえる。最大の注目点であった「2400枚上限の撤廃」がなされなかったことは、ホール、ユーザーの両視点からも残念であったと言わざるを得ない。

しかし一方で、現行6.5号機から変更された「MY→差枚数」の効果は、スマートパチスロ導入前から絶大だ。2400枚を大きく上回る獲得枚数で「完走」するユーザーレポートがSNSを賑やかし、実際に導入されている6.5号機の稼働推移も順調だ。特にパチンコ業界が総力を挙げて臨んだ選挙期間に周知された「一連増加区間3600枚規制」の仕様変更は、かつてのパチスロ5号機全盛期を彷彿とさせるほどのインパクトを与えた。

これは、遊技者がパチスロのレバーを1回叩くことで得ることができる最大枚数のことで、その最大枚数を「3600枚に規制する」という発表であったが、裏を返せば、今後はMY上限であった2400枚を優に超える枚数を獲得できる可能性があるという宣言(※注釈/ちなみに5号機時代の一連増加区間の期待値は3000枚以下で規制されており、5号機を代表する出玉性能を持つ「アナザーゴッドハーデス-奪われたZEUS ver.-」のPGGの期待値は約2500枚、「ミリオンゴッド-神々の凱旋-」のPGGは2000枚程度の期待値であることから、いわゆるパチスロの一撃性においては、今後5号機以上の出玉性能が搭載される可能性がある)であり、その実「規制」ではなく「緩和」であるということを日電協が大々的に公表したことになる。

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