「今のパチンコは毎日が2007年〜2008年頃の年末年始時期と同程度」4円パチンコへの粗利依存度は過去最高に/DK-SIS白書

2022.07.07 / その他情報

突如発生した新型コロナウイルス、揺れに揺れながらじわじわと進捗した新規則機への移行、パチスロ6号機の不振……。2021年はいくつもの試練が重なった。その結果、パチンコ業界の市場規模は大きく後退したのか。

7月7日に行われたダイコク電機「DK-SIS白書2022年版-2021年データ-」のオンライン発表会で公開されたデータを元に振り返っていく。


[資料1P目] 

DK-SISが保有する140万台の遊技機データを元に、DK-SIS白書は毎年発行されている。今回発行された「DK-SIS白書2022年版」では、2021年以前の業界データが1冊約250ページほどの冊子にまとめられており、発表会ではDK-SIS室室長の片瀬宏之氏がその中から18P分の資料を抜粋し、ダイジェスト的に2021年を振り返った。

DK-SISに掲載されているデータはパチンコ約87万台分、パチスロ約53万台分である。業界全体の総設置台数が減少する中、DK-SIS台数シェアについては、2016年から上昇している傾向にある。


[資料2P目]

DK-SIS白書内では10項目あるうちの4項目がダイジェストとしてまとめられた

2021年に起こった業界キーワードを4つ抜粋している。それぞれの項目についての説明はこの後にも続くためここでは割愛する。


[資料3P目]

記載上100%に到達していないのは認定の関係で少し時期がズレた部分もあったため

2022年1月末まで行われた新規則機への移行は、業界全体で見るとパチンコの方が進捗が早く、パチスロの方が遅い。比較的好調だったパチンコの新規則機と、大きく性能が変わったパチスロの6号機とでは業績が大きく異なったため進捗に差が出た結果に。

これについては多くの業界人が持つイメージ通りといったところだろう。しかし、いずれくる次の規則改正などの際に、こうした進捗データが参考になるだろう。


[資料4P目] 

DK-SISの140万台のデータを元に業界売上・粗利規模は予測された

2021年の総売上はパチンコが8.2兆円、パチスロが6.4兆円で合計14.6兆円となり、2020年と比べて業界全体の規模は維持することができたが、新規則パチンコが好調で業界を牽引した一方、パチスロが足を引っ張った形になっている。

総粗利についても2021年パチンコが1.41兆円(+0.16兆円)と伸びたが、パチスロが0.98兆円(-0.12兆円)と減少。

「2020年の売上規模を見ていただきたい。設置比率はパチスロの方が少ないにも関わらず、この時はパチスロの方が売上は高かったのです。それが2021年になって急激に落ちた。それくらいパチスロが厳しい状況に追い込まれていることが分かります」(片瀬氏)

業界規模は横ばいとはいえ、コロナ禍前と比べると7割強であり、業界規模は縮小している。


[資料5P目]

遊技機購入費と遊技機利益に焦点を当てたデータ。

一番上の項目は業界の粗利規模であり、資料4Pに掲載されているものと同じ。その下、赤枠部分がDK-SISから予測した遊技機購入費用で、2021年は0.70兆円(+0.15兆円)。さらにその下は、遊技機利益規模で1.69兆円(-0.11兆円)。業界の総粗利は増えた一方で、多くの遊技機を入れ替えなければならなかった。


[資料6P目] 

DK-SISデータによる1日あたりのアウトなど。

4円パチンコに関してはアウト・粗利ともに前年から上がっている。4円パチンコのアウトが前年を上回るのは13年ぶりのこと。ただ一方で、遊技時間粗利が100円上がっている。

過去に遊技時間粗利が100円上がったのは、4号機から5号機に移行した年しかない。4円パチンコはそれを境に、以降どんどん落ちていった歴史がある。遊技時間粗利1240円と聞いてもあまりイメージがつかない人に向けて片瀬氏は過去データをたとえにあげて説明した。

2007年から2008年にかけてパチスロは4号機から5号機へと移行しました。当時ホールは苦しい時期であり、パチスロで取れない粗利をパチンコで補填する、現在と似た業界構造でした。

その年の年末年始商戦の時の時間粗利が1180円です。GW、盆、年末年始、いずれもファンの肌感としてキツいというイメージがあると思いますが、その中でも年末年始がもっともファンがきつく感じるようなデータになっています。

その年末年始営業の遊技時間粗利を昨年は超えているんです。昔から打っている方だとすると、年末年始以上に辛い状況が毎日続いているということです」(片瀬氏)

それが今のパチンコの状況だ。このままではせっかく好調な4円パチンコが良くない方向に進んでいってしまうとして、片瀬氏は警鐘を鳴らした。


[資料7P目、8P目]

画像上は、1円パチンコについての推移データ。

ポイントは1円は対前年比を見ると、アウトは微減、粗利は微増という部分。遊技時間粗利の上昇があまり見られない中、粗利自身は+33円となっている。コロナ禍により、年配層が戻ってきていないと考えるべきで、1円の業績が下がる中、パチンコの台数シェアを見ると30.3%となっている。2021年の動きとしてはパチスロの業績が悪く、パチンコへとファンが移行する中で、設備投資が少なくて済むため1円から4円パチンコに戻したホールが多くあった。これが台数シェアが下がった要因である。

画像下のパチンコ動向は、おおむね4円パチンコのデータに近いため、参考程度に。


[資料9P目]

2021年に登場したタイプ別の新機種の機種貢献データ。ハイミドルタイプは43機種登場している。リリース自体元々多く、2020年では28機種出ている。

償却達成率を見ると、稼働貢献の枠で46.5%とハイミドルタイプは大きく上昇する結果になった。一方、総合貢献で見ても、ハイミドルタイプは業績を上げている。

ほぼすべてのタイプで良化しており、全体の総合貢献に対しての償却達成率ではライトタイプ以外は上回っている。

「うまい棒」「ワイルドロデオ」「カイジ鉄骨」といった固定TYといわれるような一発機はその他に分類。償却達成率は74%と破格に高く、お店の粗利を支える機種として活躍した。


[資料10P目] 

こちらはタイプごとに分類した2021年のデータ。

ハイミドル、ミドルタイプのアウトは上昇したが、ライトミドル、ライトは下落している。機種を個別に見ていくと、2021年に出た機種はいい機種が出たものの、市場全体で見るとアウトは落る結果に。これは、導入台数がタイプによって差があることに起因する。

ハイミドルタイプは店のメイン機種としてたくさん導入されるが、ライトタイプの導入は1台2台の場合が多い。また、稼働悪いのがそのまま残っているケースも多く、この点について片瀬氏は「考え方を変えた方がいい」と説明した。

「入れ替え戦略を練る時に、例えばライトタイプを外したらライトタイプを入れるといったように、同一タイプで入れ替えるホール様が多いので、その固定観念は変える必要があります。なかなかファンから求められていないところを入れ替えても業績は上がりにくいのです」(片瀬氏)

入れ替えの際には、タイプごとの業績データを見て検討していくべきということだ。


[資料11P目] 

表右側の対前年比の部分は軒並み真っ赤になっている

ここからはパチスロの動向となる。

20円パチスロの2021年アウトは6601枚(-659枚)となり、前年比で約9%下落した。4円パチンコと大きく状況が異なっている。

遊技時間粗利は790円と2020年に比べて50円も下がっている。同じ遊技時間粗利で見ると、4円パチンコは1240円。20円パチスロは4円パチンコと比較して相当甘い状況になっているにも関わらず、前年比でアウトは660枚も落ちている。

一方、この中でパチスロ内台数シェアが0.8%増加している。総遊技機内台数シェアだと、3.9%下がっている。パチスロの中で上がっている理由は、5スロをやめている店が多いこと。これにより、20円のパチスロ内台数シェアが増えていると思われる。

その5スロについてデータはないが、台粗利は916円となり初めて1000円を切った。設置をしても人件費や光熱費が発生するため、赤字になりがちなのが現状。


[資料12P目]

パチスロ全体の動向。こちらも20円と同様の傾向なので、参考までに。


[資料13P目] 

2021年に出たパチスロ新機種の貢献データ。

ATタイプにおいては48機種登場している。ATタイプは2020年に比べて業績自体は上がっているが、稼働貢献の粗利で約23万円、総合貢献で約28万8000円、償却達成率は20%しかない。新台の価格が50万円ほどするなかで買うたびに総合貢献中は半分しか利益が出ないというのはなかなか厳しい。


[資料14P目]

ここでも要チェックポイントは赤枠の20円パチスロのATタイプ。左から2番目の項目にある20円パチスロ内台数シェアが30.2%ともっとも大きい台数シェアを占めている。しかし、アウトは6072から4159と約1900枚も落ちている。粗利も2770円から1572円と約1200円も下がってしまった。

ただ、このままパチスロの未来はないかというと、片瀬氏は「今週から出た6.5号機が結構面白い動きをしている」とコメント。

「初動のアウト支持率というところでいうと、昨日のデータでは3機種とも基準を超えています。今後出てくる機種も可能性はありますし、スマートパチスロはさらに良くなるんじゃないかと考えています。今後も注目していきたいと思います」(片瀬氏)


[資料15P目]

DK-SIS白書の注目コンテンツとして紹介されたデータ。2021年に出たパチンコ91機種、パチスロ61機種すべて(SISで1000台以上の機種)を掲載した新機種導入から8日間のデータだ。

遊技時間やアウト支持率といった初動データによって、好業績機種を見極められるようになってきた。

(関連記事:「パチンコはハイミドル戦国時代に突入」ホール業績を躍進させるアイデアを提唱/DK-SISセミナー

第2、第3の「エヴァ」「Re:ゼロ」をいち早く見抜くためにも、それらの初動と今年出てくる機種を比べると、機種入替戦略の参考になる。


[資料16P目]

こちらもDK-SIS白書の付録。

2021年の月ごとの業績をまとめたもので、3カ月データやその期間に何が起こったかといった出来事カレンダー、日毎のアウトなども掲載している。今ホールは毎月営業する中で、基本的に前年同月と業績を比べることが多い。業績が下がった場合に「去年の6月はどんなことが起こって、その時に何が導入されたのか」といったことを思い出させてくれるページだ。


[資料17P目]

最終ページは、タイプの分け方。こちらは参考に。


[まとめ]

13年ぶりに4円パチンコの業績が前年を上回るという良いニュースもあったが、4円への粗利依存度が過去最高になってしまった。逆に考えれば、2007年から2008年、遊技時間粗利が100円ほど上昇した後、12年間パチンコの業績が下がり続けた歴史がある。これは業界全体が注視していかないといけない。

「このパチンコ業界において、いずれ規則改正は起きる。今回発行したDK-SIS白書は、そんな時に必ずホール様のお役に立てるもの。経営者の方の手元に置いておくべき一冊」(片瀬氏)

 

 

DK-SIS白書2022年版 販売情報
書名:DK-SIS白書2022年版 -2021年データ-
価格:税込49,500円(本体45,000円+税10%)
URL:https://www.daikoku.co.jp/
※DK-SIS会員は、特別価格での提供あり

ダイコク電機, DK-SIS白書2022年版-2021年データ-